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暇潰しの創造神

……ん?あれ?此処は……何処?

確か……模型の艦橋を船体に付けようとした瞬間に突然壁が壊れてそしたら……


「5inch砲弾で上半身がパンッ!そうして、君は即死したわけだよ」


「ッ!?誰だッ!?」


突然、俺の視界に現れた普通の服を着た青年。その人間らしからぬ笑みに俺は仰向けなのに飛び退いて、その青年と距離を取る。


「アンタ……誰なんだ?それに、この世界は……?」


「此処は……現実世界ではないね。いわば、天国ともいうべきか異空間とでもいうべきか……」


天国?異空間?とすると、こいつの言う通り俺は……死んだのか。いや、5inch砲弾が当たって死んだことにおかしさを感じる。


「……ちょっと、待て。俺は死んだのだよな?」


「ああ、そうだよ。不慮の事故でね」


「なら、ほぼ自動化されているイージス艦が何故俺に向けられた?テロリストによるジャックを余裕でブロックできるプログラムを持つ人工知能が全ての艦艇に搭載されている。人工知能の制御を持った艦は約100年前に完成、そしてもう1世紀過ぎてあらゆる改善をしてきたのに今となって不慮の事故はおかしすぎるぞ。

それに、何故射程が十数キロしかない主砲で俺“だけ”は死んだ?もしテロリストによるジャックならまず艦艇を遠隔操作をし、火力も主砲より高く射程数千キロのミサイルを発射するほうがより効率的だ。今のイージス艦の主砲装弾数は200発前後、遠隔操作といえど一人の人間を狙撃するなど苦難の業だ。それに重力や風による砲弾のズレも生じる。なのに、俺だけを狙えること自体おかしすぎる」


今までの知識が此処で培われるとは……とりあえず、青年に持てるだけの知識をフルを用いて彼の『不慮の事故』という事実に反駁を加える。

そうすると……笑みを浮かべていた青年の顔が徐々に青くなり、滝のような汗と笑みが綻んでいくではないか!!

まさか……コイツが……!!


「オイ……お前ェ……!!」


「ち、違う!暇だからイージス艦のプログラムいじって狙撃しようということは断じて無い!!……あ」


「どういうことじゃゴルアアアァァァ!!!」


直ぐ様青年に飛び膝蹴りを首にかまし、マウントすると腹や顔をブン殴る。とりあえず拳が痛くなるまで殴る。青年が口を開こうとしたが無言で殴り続ける。




少年制裁中…




「本当に申し訳ありませんでした」


「人様の人生潰しやがって……」


土下座する青年に俺は仁王立ちで睨みつける。まだ怒りが収まらない。だが、どうせやっても無限ループだし拳がやられそうなのでやめた。


「時にアンタ。誰なんだよ」


「僕?僕は神だよ。しかも、神の最高位である創造神の位に座る者さ」


「……ハッ?」


こ、こいつが創造神?えっ、コイツが?えっ、創造神ってのは暇なのか?神は暇人なのか?災害も神のせいなのか?殺人も神のせいなのか?


「とりあえずさ、聞きたいけど……」


「な、何だい?東郷戦海君……」


「現実世界の災害とか殺人とかテロとか……あれ、お前らがやってんの?」


「いや、違うさ。災害はその世界に定まった理に従っているままにあるし、殺人やテロは僕達は一切手を加えていない」


「……んで、暇潰しってわけか」


「その件に関しては誠に申し訳ありません」


創造神(笑)がまた土下座をかます。神としての威厳がコレかよ……服も何か現代っぽいし!!

もう怒りがなくなって呆れしか残らない。ため息をつくと俺は仁王立ちで組んだ腕をだらんと下ろし、ゆっくりと座る。


「それでさ、俺どうなんだよ創造神さん」


「そうだね……君は現代世界においては死亡したこととなっている。これが、証拠さ」


「……自分の葬式を見るとか、キツいなぁ」


創造神の見せる四角い板……いわゆるモニターには、無機質な花に囲まれ無機質な棺に入った俺とそれに手を合わせている喪服の人々がいた。その中には、俺の両親と波華がいる。

この三人、特に波華の赤く腫れた目と死んだような顔を見ることを辛く感じた俺は、創造神にもういいと告げた。


「それで……これからどうするんだ?」


「普通は閻魔によって裁判されて天国か地獄だね。でも、最近人手が足りないから裁判待ちの魂は『冥界』で裁判の時までまったり過ごすんだよ」


「んで、俺は冥界にはいなくて目の前に神様いるけど?」


「君は特別さ。創造神たる僕が君を殺めたのだからね」


そうかい、と創造神が出したスナック菓子に手を付けながらこれからのことを考えていく。というか、創造神ってこんな人間ぽいのかよ。ゲームやアニメでよく見るじいさんかと思ったわ。


「んで、俺どうなんのよ。何回も聞くけどよ」


「そうだね。君は閻魔からの裁判無しに現代への転生、もしくは現代とは異なる世界に転生することになるよ」


「……後者ともかく前者マズくないか?」


「大丈夫、その場合は罪を見抜いて直ぐ様閻魔の元へ送るさ。君さ、僕のこと何だと思ってるわけ!?」


「人生殺しの創造神(笑)」


創造神の断末魔と共に飲んでいたコーラを吐き出してくる。

汚ぇなオイ!!つうか、自業自得なのにそんなオーバーリアクションいらねえんだよ!


「……とりあえず、俺後者わ。もう西暦2200年とかクソつまらねえよ」


「ケホッケホッ……そ、そうかい?僕は君のいる地球はとても楽しそうだと思うんだけど……」


「それは昔からいる人の夢だからだろ。俺にとってはあんな無機質な世界で生きるのは真っ平ごめんだ。どちらかというと昔の世界が羨ましい」


そりゃあ……、と創造神も反論しようにも口を開かない。特に無機質の世界に引っ掛かったのだろう。創造神だからこそ、昔あった自然が人類にとって地球にとってどのようなものだったか分かるはずだ。


「それじゃ、異世界への転生ね。

あっ、そうだった!君には迷惑かけたからね。何か願いを叶えてやるよ!何でもいいからね?」


「さっきから思ったんだが……さっきから気持ち悪いんだけど」


「どうしてさ!まさかさっきのあれ、神様らしかったのかい?」


「いや、どっちかというとお前二重人格だったりするのか……?」


引き気味にそう発言すると、創造神ははっきりと否定する。んじゃ、最初からそうしろよ……さっきの面倒事が無くなるってんのに。


「と、とりあえず……願い事は何?不老不死だったり、チートだったりと何でもいいよ?」


「とりあえず、お前の存在が消えてほしい」


「それは無理だよ!こう見えて世界の秩序を守ってるんだからね!」


「冗談だ。何マジになってんだよ……」


「うぐ……とーりーあーえーず!!願い事を決めて頂戴!」


分かった、と手短に返事すると願い事を何にしようかと脳をフル回転させる。

不老不死になる?それはそれで辛いだろ、俺凡人だし。

身体能力をチート化する?それはそれでつまらん。ワンパンで済ませるようになれるとかどこのハゲマントかよ。

魔法とか全てを扱える。俺そこまで魔法に詳しくねえし。いや、魔法の唱え方すら知らねえよ!

ん~……どうしようか。こんな時に俺の知識で扱えるものだったらなぁ……ん?俺の知識?それだ!!


「……決めたわ。創造神さん」


「決まったかい?流石にさっきのようなことは無しだよ?」


「分かってるわ、ボケ。

……1900年代の艦艇全ての力が欲しい。その力を、俺に与えてほしい」


えっ……?創造神の反応がこれだった。

確かに、そうかもしれん。普通ならチートを望むだろう。しかし、チュートリアル有無に関わらずにそれを扱えなければ無用の長物。慣れるのにも時間がかかるはずだ。

だが、元々から持てる知識で発揮できる能力なら序盤で能力面で困ることは無いし、早い段階で応用させることもできる。

だから、俺の持つ知識……それは『1900年代の艦艇に関する知識』である。それを十分に発揮させれる能力はこれしかない。


「そ、そんなんでいいのかい?不老不死とかは?」


「創造神、素人がバカでけえ魔力を制御できるとでも?それで圧倒的な魔法が唱えれるとでも?元々から魔法使いじゃなくては無理だ。

だから、俺は自分の持つ知識で十分に発揮できる能力を望んだのだ。さっきの反駁で分かっただろ?」


「まあ……確かに、そうだね。でも、艦艇の力なんて格闘戦とかでは不利になるよ?」


「ああ、だが艦艇の力を俺の肉体に宿したり艤装を武器として展開できれば問題は無い。艦艇は召喚とかで出せればいいし、耐えきれなかったら転生した際に俺の持つ魔力と魔法でどうにかする。それで問題ないだろ?」


「まあ……でも弾薬や燃料、それに艦載機は有限だ。その願い事の次いでにそれらを無限にしておこうか」


そういえば、弾薬や燃料が無ければ艦艇は動けないし戦えない。空母も艦載機が無ければただの的だ。まさか、こんなフォローが得られるとはな。


「それと……君、現代に未練があるのだろ?何かあるのなら、僕に頼んでいいよ?」


「願い事は一つだけじゃねえのか」


「いや、これは現代世界と異世界に影響するものだよ。だって君の葬式の光景を見てた時、君の顔辛そうだったもん」


「……ハハハ、創造神はお見通しってわけか。

それじゃ、未練が一つある。頼んでいいか?」


勿論、と創造神は頷くと俺は現代世界の未練を告げた。それに、創造神は快く受け入れてくれた。


「わりいな、創造神。こんな下らん頼み事をしてな」


「ああ、いいさ。ちゃんと“彼女”の手に来るようにするからさ」


頼んだ、とそう告げると俺は創造神によって開けられた穴に目を入れる。そこからは、豊かな緑と壮大な山が見える居心地の良さそうな世界である。


「それじゃ、もう君に能力は渡した。頑張ってね」


「ああ、その時になったら頼むわ。俺の時のようになるなよ」


「分かってるさ。それじゃ」


創造神の長いか短いか分からない付き合い……神と人間という格差の癖して、まるで友人のように話せるなんてな……面白いのかおかしいのか。けど……楽しかったわ。

そう悟ると、創造神に向けて小さく手を振ると穴へと飛び下りるのだった。

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