パーティーへと進化
買い物を終えてミスフィード家の屋敷に戻ってくると、玄関にはシューゲルとアレイシアがいた。
「ただいま! パパ!」
「ラーナ! お帰り!」
どうやらラーちゃんが帰ってくるのを待っていたようだ。
相変わらずの親バカっぷりだ。
すぐ隣にはギデオンがいるが、こちらは完全にスルーである。長男も慣れたもので何も気にしていない。
「アルフリート殿、少し相談したいことがあるのだがいいかね?」
ギデオンに続き、俺も隣を通り過ぎようとすると、シューゲルから待ったがかかった。
シューゲルが俺に相談を持ち掛ける理由はわかっている。
新しく串揚げを食べたい貴族が増えたことだろう。
それなら抜かりはない。アレイシアが試食会にやってきても大丈夫なように食材は多めに買ってきてある。
「試食会にアレイシア様が参加されるのですよね? 問題ありませんよ」
「それなのだが試食会ではなく、いっそのこと立食パーティーにしないか?」
「パーティー? どうしてそうなるんです?」
深夜に披露した串揚げをシューゲルに食べさせるだけの催しが、どうして立食パーティーにまで進化するのだろう。意味がわからない。
「聞くところによると現段階でかなりの人数なのでしょう? だったらいっそのことパーティーにしちゃって皆さんを招いた方が面白――じゃなくて、串揚げのいいお披露目になると思わない?」
最後に飛び入りしておきながらいけしゃあしゃあと語ってみせるアレイシア。
「今、面白いって言わなかった?」
「言ってないわ」
途中の言葉がどうにも引っ掛かったので突っ込んだが、アレイシアは澄ました笑みを浮かべるだけで誤魔化す。
今の串揚げ試食会の参加者は俺、ノルド父さん、エルナ母さん、フローリア、シェルカ、シューゲル、ギデオン、ラーちゃん、アレイシアといった合計九名だ。
シューゲルに振る舞うだけのはずがあっという間に参加者は膨れ上がっており、ちょっとしたパーティーの参加人数になってしまっている。
確かにこれだけの参加人数になってしまっているのであれば、もう少し人を招いて立食パーティーにしたいと思う気持ちはわからなくもない。
「なんでわざわざパーティーに? 身内だけの試食会じゃダメなんです?」
「パーティーということにすれば、バルナーク伯爵をお招きすることができるのだ」
「バルナーク伯爵?」
「オルランド=バルナーク伯爵。王都の歌劇場の支配人だ。共同事業をより確固たる者にするには、グレゴール殿とバルナーク殿に上手く繋がってもらわなければならぬ」
シューゲルによると、グレゴールのバルナークとの社交はあまり上手くいっているわけではない様子。このままだと王都で人形劇ができるかどうかも怪しいようだ。
そんな二人への橋渡しをするためにシューゲルとしては串揚げの試食会を立食パーティーへと変更し、二人を屋敷に招待したいようだ。
「……わかりました。そのような理由があるのであれば、協力いたしましょう」
「おお、やってくれるか!」
共同事業については俺が原因みたいなものだ。
それにグレゴールの人形劇については俺もかなり期待している。
そのためにもグレゴールには是非ともバルナーク伯爵とやらと仲良くなって王都の歌劇場で行えるようになってほしいからね。
「食材については足りるかね?」
「念のために多めに買っておきましたので問題ないかと」
危ない。食材を多めに買っておいてよかった。アレイシアみたいなノリであと数人くらい増えるんじゃないかと思っていたが、本当にその通りだった。
あとラーちゃんとギデオンがバカみたいに水槽買いしていたのがいい方向に作用したよ。
「では、早速と私はグレゴール殿とバルナーク殿にパーティーの招待状を送るとしよう。アルフリート殿は串揚げを作ることに集中してくれたまえ」
「かしこまりました」
こくりと頷くと、シューゲルは招待状をしたためるために執務室へと移動した。
急遽、パーティーを開くことになったからかミスフィード家の屋敷にいる使用人たちが慌ただしく動き回っている。
「なんだか大変なことになったわね」
アレイシアがこちらを見ながらクスクスと笑った。
「大変なことにした張本人がよく言うよ」
「あら? 私はどうせならパーティーにしたらどうかしらと提案しただけよ?」
そんな甘い囁きをすれば、シューゲルは公爵家として最大限の利益を掴み取ろうとするに決まっている。実際に決断をしたのはシューゲルではあるが、アレイシアが試食会に参加するために良いように引っ掻き回された感じが否めない。
「今度、けん玉で仕返ししよう」
「どうして張り合ってくるところがけん玉なの?」
「そこが確実に勝てるから」
だって相手は公爵令嬢。変なところで張り合ったりしたら何をされるかわからないので怖いじゃないか。自分が確実に勝てる分野で負かしてやり返す。これに尽きる。
「とりあえず、時間がないから串揚げの準備にかかるよ。ミーナも手伝ってくれる?」
「え? 私、あんまり料理とかできないですよ?」
君はそれでもスロウレット家のメイドなのか?
「大丈夫。主な作業はカットした食材を串に刺すだけだから」
「あっ、それなら私でもできそうです!」
「わたしもやるー」
「微力ながら私もお手伝いさせていただきます」
食材を串に刺す作業が一番時間がかかるので人数は多ければ多いほどに助かる。
「暇ならアレイシアも――」
「串揚げ楽しみにしているわ」
暇そうにしているのであればと誘ってみたが、残念ながらアレイシアは調理には参加してくれないらしい。綺麗な笑みを浮かべながらやんわりと拒否されてしまった。
「アルフリート様、アレイシア様は公爵令嬢ですよ? 調理なんてされるわけないじゃないですか」
「だよね」
手伝いを申し出てくれるラーちゃんとロレッタが異常なだけで普通のやんごとなき貴族様は調理などされないのだ。
●
ミスフィード家の厨房にやってくると、日中に買い物をした食材がすべて届いていた。
これだけの食材が搬入されても四人が平気で動き回れるなんて、さすがは公爵家の厨房だ。
「まずは俺とロレッタで食材を一口大にカットするからミーナとラーちゃんは串に刺して欲しいんだ」
「わかりました!」
「わかったー」
俺がピーマンのヘタをくり抜き、種を取り、半分の大きさにカットしていき、ロレッタが素早くニンジンの皮を剥いて、一口大の大きさにカットする。
「私たちはこれを串に刺していけばいいんですね?」
「うん、そうだよ。三つか四つずつくらいで見栄えがよく見えるようにね」
カットしたものをバットの中に入れると、ミーナとラーちゃんがピーマンを手にして串に通してくれる。
「アル! これでいい?」
ラーちゃんが串に刺さったピーマンを見せてくれる。
「うん、すごく綺麗だ。そんな感じでドンドンお願いするよ」
「わかった!」
小さな子供でも食材を串に通すだけなら簡単だ。包丁を扱う心配もないのでロレッタも安心した様子で食材のカットに励んでいる。
俺はミニトマトを一気に水洗いしてヘタを取る。
ヘタを取る作業が手作業なので少し時間がかかったが、ミニトマトはそのまま串打ちするだけなので後はミーナとラーちゃんに任せる。
次はナスだ。ヘタを包丁で落としていくと、二センチ幅の輪切りにする。
輪切りにしたものを水にさらすと、回収してこちらも二人に串打ちしてもらう。
「アルフリート様、タマネギに関してはどうしましょう?」
レンコンの皮を剥いていると、ロレッタからカットに関する質問が飛んでくる。
「タマネギはバラけやすいから先に一センチ幅で串を差してから切り分けてくれる?」
「かしこまりました」
薄いタイプのものを重ねて揚げる家庭もあるかもしれないが、俺はゴロッとしたタマネギがいいのでバラけさせないようにカットを指定。
ロレッタはタマネギに串を刺すと、それに沿うようにして包丁を入れていってくれた。
皮を剥き終わったレンコンは一センチ幅で輪切りにすると、こちらもナスと同じように水にさらしておく。
レンコンの下処理を終えると、俺は木箱に大量に詰まっているジャガイモをシンクでひたすらに洗う。新鮮な証拠でジャガイモにはかなりの泥がついている。これを丁寧に洗い落としていくのは大変だ。
さらにこれらのジャガイモの皮を剥き、芽をくり抜いて、カットして水にさらすことを考えると億劫になってくる。
野菜が終わっても肉類と魚介類の仕込みが控えていることを考えると、思っていた以上に時間がないのかもしれない。
「お手伝いさせてください」
思っていた以上にマズいのではないかと考えていると、壮年の料理人が腕まくりをしてジャガイモ洗いを手伝ってくれた。
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