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転生して田舎でスローライフをおくりたい  作者: 錬金王


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ミスフィード家の晩餐

『異世界ゆるりキャンプ』の書籍1巻が明日発売です。

よろしくお願いします。


 一階に降り、外に出ようとするとミスフィード家の執事が上着を持ってきてくれた。


 とても助かるが、俺の背丈にもピッタリというのは用意周到過ぎてちょっと怖かった。


 玄関を出ると中央には大きな噴水があり、水路を通って緑地へと流れているようだった。


 ラーちゃんは噴水に近づくことなく、少し離れた芝へと移動。


 べりっと芝をひっくり返すと、そこには四角い制御装置みたいなものが埋まっていた。


「このボタンを押すと、水が動物さんになるの!」


 そう言いながらラーちゃんがボタンを押すと、ただ噴き出すだけの噴水が変わった。


 魔道具による水魔法の制御が加わり、馬、ウサギ、犬、クマといった可愛らしい動物の輪郭へと変わる。


「これはこれでとても面白いけど、ちょっと地味だね」


 侵入者の迎撃の魔道具はあんなにユーモアで派手なのに、どうしてこっちにはそれがないのか。


「もっと派手に噴き出させたら面白くなるんだけどな」


「派手って、どんな風に?」


 俺がイメージしているのは遊園地などで催される、ウォーターショーだ。


 音楽と光と水のエンターテイメント。魔法を組み合わせたら面白くできそうだな。


「夕食の後で見せてあげるよ。面白く見せるには暗い時間がいいから」


「わかった! 楽しみにしてる!」


 ラーちゃんが頷いたところで、こちらへ向かってくる馬車が見えた。


「あっ! お姉ちゃんだ!」


 どうやらシェルカが魔法学園から帰ってきたらしい。


 ラーちゃんが嬉しそうな声を上げると、傍までやってきた馬車の扉が開いた。


「お姉ちゃん!」


「ラーナ、ただいま」


 下車するなり抱き着いてきたラーちゃんをシェルカが優しく抱き留める。


 シェルカの服装は以前王都で出会った時と同じく魔法学園の制服だ。


 ただ約一年が経過しているから、背丈はちょっと伸びている。


 ラーちゃんと同じ綺麗な白金色の髪に、スラリと伸びた手足。既に美人な女性の片鱗を見せ始めていた。


 この時期の子供の成長は著しいな。


 シェルカの変わりようを見て、そんなことを考える俺は年寄りくさいのかもしれない。


 ラーちゃんをひとしきり撫でると、シェルカはツンとした表情を向けてきた。


 ラーちゃんと同じくらい愛でろなどとは言わないが、もうちょっと優しい視線をほしい。


「久し振りね。アルフリート」


「お久し振りです、シェルカ様。お元気そうで何よりです」


「前回はよくも私をハメてくれたわね?」


 にっこりと笑っているが額には青筋が浮かんでいる。


 王都でブラムを魔法に誘導し、処理させたことを根に持っているらしい。


「ハメたなどとは人聞きが悪いですよ。そもそも街中で魔法の行使などしなければ、起きなかった事故です」


 遠回しにシェルカの落ち度を指摘すると、彼女はうめき声をあげた。


 その部分に関しては彼女に大きな落ち度があるので、強くは言えないだろう。


「まあ、その件に関しては改めてこっちで処理をしたので」


「そ、そう。なら、水に流してあげる」


 ブラムの件が終わったことを告げると、シェルカはそれ以上突っ込んでくることはなかった。


「にしても、やっぱりこっちにきたのね?」


「ミスフィード家から手紙が届けば、男爵家として訪ねる他ないですよ」


「……もっと普通に喋りなさいよ。アルフリートに敬語を使われると違和感しかないわ」


「じゃあ、公的な場所以外はこんな感じで」


 シェルカがあまりに苦い顔をするので、ラーちゃんと話す時のような口調に切り替えた。


 王都であんな風に追いかけっこをしたんだ。


 取り繕うにもしっくりこないのは俺も同じだった。こっちの方が話しやすい。


「ね、ねえ、呑気に庭で遊んでるってことは、父上との話し合いは済んだってことよね?」


 シェルカが歯切れ悪そうに尋ねてくる。


 妙に顔が赤いことから勘違い事件について知っているのだろう。


「うん、誤解は解けたよ。まあ、冷静になれば、誰でもすぐに気付くことだしね。そもそもがあり得ないことだし」


「……そ、そうね。まったくパパってば早とちりし過ぎなんだから」


 なんだかシェルカが妙に動揺している。言葉遣いが父上からパパになっているし。


「な、なによ?」


 ジットリとした視線を向けると、シェルカが居心地悪そうな顔になる。


「……もしかして、シェルカも勘違いしてた?」


「そ、そんなわけないでしょ! というか、乙女になにを聞いてきてるのよ変態!」


 思わず尋ねると、シェルカの顔が真っ赤になった。


 年ごろの女の子に振るには良くない話題だな。


 このことについてこれ以上触れるのはやめておこう。


「くちゅん!」


 話題がひと段落したところでラーちゃんが可愛らしいくしゃみを漏らした。


「ずっと外にいると身体が冷えるわね」


「そうだね。そろそろ屋敷に戻ろうか」


「二人とも馬車に乗りなさい」


 ラーちゃんの体調を心配する気持ちは、俺とシェルカで一致している。


 さっきまでのツンケンしていた会話が嘘のようにスムーズだった。




 ●




 ラーちゃんとの魔道具探索を終えて屋敷に戻り、のんびりとしていると夕食の時間となった。


 ロレッタに先導されて、ノルド父さん、エルナ母さん、俺は小ダイニングルームへと移動する。


 小ダイニングに入ると、既にミスフィード家の面々は着席している。


 入り口の手前側にフローリア、シェルカ、ラーちゃんが座り、当主であるシューゲルは見渡しのいい誕生日席だ。


 ミスフィード家の使用人が奥側のイスを引いてくれたので迷わずにスロウレット家はそこに座る。


 こういう時、どこに座るか迷ったりするので、こういった配慮は嬉しい。


 まあ、俺は立場が一番下だから脳死で下座に腰かければいいだけなんだけどね。下っ端万歳。


「本来であれば、長男であるギデオンも紹介したいのですが、学園の用事がまだ終わらないようで紹介は後日とさせてください」


「いえいえ、お気になさらず」


 ラーちゃんの言っていたお兄さんって人は、まだ学園から帰ってきていないようだ。


 フローリアが申し訳なさそうにし、ノルド父さんが恐縮していた。


 真っ白なテーブルクロスが敷かれたテーブルの上には、食器が並んでいる。


 ただの食器なのに装飾が凝ったものが多く、一目でお高いんだろうなとわかった。


 ミスフィード家の執事がグラスにワインを注いでくれる。俺は未成年で呑めないのでブドウジュースにしてもらった。


 きっちりとキッカ産のものを仕入れている辺り、ここの使用人はできるな。


 執事が飲み物を注いでいる間、大人たちは最近の貴族事情や、領地なんかの話しをして場を繋いでいた。


 こういった時に下っ端は前に出る必要はない。やはり下っ端は最高だ。


 小難しい話は大人に任せておけばいい。


「食事を運んでくれたまえ」


 それぞれのグラスに飲み物が注がれると、シューゲルがそう言った。


 すると、ダイニングの扉が開き、次々とメイドがワゴンを押してくる。


「キングロブスターのサラダ、トリュフ風味のオレンジビネグレットソースです」


 メイドが料理名を教えてくれるが、名前がとても長くて一度では覚えられなさそうだ。


 どうやらコース料理のような感じで出てくるらしい。


 シルフォード家のような好きなものを好きなだけ取れ、という方が気楽なのだが、公爵家ともなるとそうはいかないのだろうな。


 まあ、全員が揃って食事をするのは初日くらいのものだ。


 堅苦しいのは今日だけだろうし、今夜が我慢しよう。


 シューゲルの音頭でグラスを掲げて乾杯。


 ブドウジュースで喉を潤して、サラダを食べることにする。


 お皿には葉野菜などの野菜が盛り付けられており、赤々としたキングロブスターの身が散らばっていた。ソースのかかり具合もとても綺麗で見た目が美しい。


 こういうオシャレな料理を屋敷で食べることはないので、ちょっと新鮮だ。


 キングロブスターの身が大きいので、ナイフで切り分けてから口へ。


 プリプリとしており、とても歯応えがあって気持ちいい。


 噛みしめると濃厚なエビの味が染み出し、海の風味が感じられた。


「王都でキングロブスターが食べられるとは思いませんでした」


「港町エスポートで獲れたものを、魔法で冷凍させて運んでいるのだ」


 感嘆のこもったノルド父さんの声に、シューゲルが泰然と答えた。


 なんてことがないように言っているが、氷魔法使いはとても貴重だ。それを雇用し続けるだけで、莫大な給金が必要とされるので大変だ。


 それをなんてことがないように言うのだから、公爵家の財力はすごいや。


 でも、やっぱりエスポートで食べたものよりも風味が弱くて、若干水っぽいかも? 冷凍して運べるとはいえ、この問題はどうしようもないな。


 そう思うと、鮮度まで維持できる空間魔法は最強だ。


 サラダが食べ終わると、次はフォアグラのソテー、甘鯛のポワレ、赤牛のグリルなどと順番に料理が出てくる。


 それらの料理はどれも美味しく、俺は黙々と食べることに集中した。


 公爵家の料理を食べる経験なんて、この先滅多にないからね。会話は大人に任せればいい。


「アルフリート殿は魔法が得意だと娘から聞いた。なんでもいくつかの魔法を無詠唱で使える程だとか」


 なんて思って呑気に食べていると、急にシューゲルから会話を振られた。


「母上の指導がとてもいいからですよ」


「無詠唱は指導がいいからといって使えるものではなく、本人の資質が大きい。習得できたのはアルフリート殿の才能だ。謙遜しなくてもいい」


 そうなのだろうか? 俺にはよくわからないが、魔法学園の学園長であるシューゲルが言っているのだからそうなのかもしれない。


「ありがとうございます。恐縮です」


「魔法学園に興味はないか? 興味があれば、私の力で入学させられる」


 ノルド父さんとエルナ母さんに視線をやると、こちらも驚いている様子だ。


 エルナ母さんの目が「私たちは頼んでない」と語っている。


 どうやら馬車での話し合いが功を奏したようで余計な気遣いをされたわけではないようだ。


 でも、それはそれで驚きだ。まさか頼まれたわけでもないのに、シューゲルがこんなことを言い出すとは。


「いえ、結構です。私は学園に通うことに興味はないので」


 シューゲルの誘いを俺はきっぱりと断った。


 相手が公爵家だろうと関係ない。いくら偉い人の誘いでも学園に通うつもりはなかった。


「興味がない? その年で無詠唱ができるほどの技量であれば、宮廷魔法使いを目指すことも可能だぞ?」


「そういったものに興味はありません。私は父上や母上のように自由に生き、見聞を広めたいので」


「ふむ、本人にその気がないならば仕方がないか」


 元冒険者である両親の影響を受けたという言い訳は、シューゲルにも納得できたようだ。


「入学してくれれば、シェルカのいい友達になってくれると思ったのだが……」


「ちょっとやめてよパパ!」


 シューゲルの漏らした言葉に、シェルカが顔を赤くしながら言う。


 ああ、そういえばシェルカは飛び級なせいで学園に友達がいないんだったな。


「アルフリート、その顔やめて。すっごくムカつく」


 エリノラ姉さんにもよく言われる台詞だ。


 どうやら俺の哀れむ顔は、大層相手を苛立たせてしまうらしい。


「ラーナが話してくれたのですけど、アルフリート様はこの後庭でとても面白いものを見せてくださるのだとか。どのようなことをなさるのですか?」


 魔法学園の話題が終わってホッとしたところでフローリアから話しかけられた。


 なんで俺に話しかけるの?


「面白いものかはわかりませんが、魔法を使ったウォーターショーのようなものをやってみようかと思いまして」


「まあ、とても興味がありますわ。よろしければ、私も一緒に見ても構いませんか?」


「構いませんよ」


 ミスフィード家の庭の水を借りてやるんだし、ダメなんて言えるはずがない。


「ふむ、どのように魔法を扱うのか気になるな」


「ラーナにもしものことがあったら危ないから私も見に行くわ」


 どうやらミスフィード家が勢揃いで見に来るらしい。


 ラーちゃんに見せるちょっとしたお遊びが大事になってしまったな。


 ノルド父さんとエルナ母さんからの「今度は何をするんだ」というような視線が痛いくらいに突き刺さっていた。





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こちら新作になります。よろしければ下記タイトルからどうぞ↓

『異世界ではじめるキャンピングカー生活~固有スキル【車両召喚】は有用でした~』

― 新着の感想 ―
[気になる点] 脳死で下座 今夜が我慢しよう・・・意味不明
[良い点] さては作者 冨樫義博だな?長い休載の果てにええもん仕上げてきやがるぜぐへへ
[良い点] 早く続きが読みたくなる [気になる点] フローリアさんがアルの魔法見たら、囲うためにラーちゃんと婚約させるとかだったら面白くなりそう パパさんは怒りそうだけど
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