三億pv突破記念 読者アンケートss ご神体
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「着いたのだ!」
神社に一番乗りを果たしたあたしは元気な声を上げた。
「春様! そんなに急いで登っては危ないですよ!」
少し遅れてあたしの護衛である楓もやってくる。
「危ないってただの階段ではないか……」
「いえ、ここの階段は本当に急なんですから。もしものことを考えて自重してください」
確かにこの神社の階段は長く急であるが、そんなところで転ぶほどあたしは鈍くさくない。
楓は強くて優しい護衛であるが、こういった過剰な心配が玉に瑕だった。
楓の小言を適当に流しつつ、神社の端にあるいつもの練習場所へ。
そこには大きな岩が鎮座しており、しめ縄が巻かれていた。
「よし、今日もサイキックの練習だ!」
この岩はアルと一緒に遊んだ時に使っていた岩だ。
「いつの間にか台座のようなものができて、お供えものがされていますね。ご神体と勘違いされたのでしょうか?」
「供え物をしたところで管理人のオヤツになるだけなのにな……」
しめ縄を巻いているのは、こうすれば神社に祀られているご神体っぽく見えて、近所の悪ガキどもに悪戯されないためだ。神聖的な意味はこれっぽっちもない。
しかし、効果がアリ過ぎたのか本格的にお供えものまでされている。
ただの大岩にしめ縄を巻いただけでそんなに神々しく見えるものなのだろうか。
水神様が信仰されているようだけど、あたしはそれほど深い信者ではないのでよくわからない。
「まあ、誰かが悪戯しなければそれでいい。お供え物よりも魔法の練習だ」
アルはこの岩にサイキックをかけて、その上に乗ることで空を浮遊していた。
あたしも後ろに乗せてもらい、一緒に空の旅をした。それがすごく楽しかった。
空から見下ろす森や田畑、カグラの街並みが非常に綺麗だったのを鮮明に覚えている。
アルはあたしと違って歩くのが面倒くさいからなどと変な理由で使っていたが、あたしは純粋にあの景色に憧れている。
「またサイキックの練習ですか……春様、危ないのでやめておきませんか?」
「やめない。あたしもアルのように自在に空を移動したいのだ!」
今はまだアルのように一人で自在にとはいかないが、いずれはあたし一人でも飛べるようになるのが目標だ。そのためにはサイキックをもっと練習して上手くなる必要がある。
今日もそのために神社で練習だ。
「春様、お待ちください!」
「もう! 今度はなんだ?」
サイキックをかけようとしたところで邪魔されたあたしは、思わず苛立ちの声を上げてしまう。
しかし、楓はあたしのそんな態度を気にすることなく、目を丸くして指さしていた。
「大岩の傍に小さな水神様がおります!」
「小さな水神様だと?」
楓の突拍子のない言葉に驚いて指し示す先を追ってみると、そこには水神様の姿を見事に表した龍が鎮座していた。
「なんだこれはっ!? よくわからんがすごいな!」
「小さいながらも伝わってくる水神様の迫力、たてがみはまるで荒れ狂う波のよう。それでありながら一種の神々しさも兼ね備えていて――きっと名のある職人が作ったに違いありませんね」
「うむ、城の中にもこれほど見事な彫り物はないぞ」
一体、いつからあったのか誰が作ったのかは不明であるが、楓の言う通りさぞかし名のある職人の仕業に違いあるまい。道理でただの大岩の前に気合いの入ったお供え物があるわけだ。
「気に入った! これはあたしのものだ!」
「ちょっ、ええっ!? ダメですよ、春様。これは通りすがりの優しい職人が、ただの岩でしかないご神体を憂いて置いてくれたもので――」
「つまり、この岩を設置したあたしのものという認識で間違いないな! なにせ、あたしが置いた岩への貢ぎ物だ」
「あれ? そう言われればそうとも言えるような……いやいや、この神社に置かせてもらっているのですし管理人の許可を貰わないと!」
「じゃあ、許可を貰ってくる!」
「あっ、待ってください、春様!」
楓の言葉を聞いて、あたしは職人の作った小さな水神様を持って走り出す。
楓も慌てながらも追いかけてついてきた。
この神社のすぐ後ろには小さな家があり、そこに管理人のおじさんが住んでいる。許可をもらうのもすぐだ。
「おーい、管理人!」
「おや、城のお転婆姫じゃないか」
小さな民家の扉を叩くと、程なくして管理人が出てきた。
「貴様! なんという口の利き方をしているのだ! こちらにおわすお方をどなたと心得る! 恐れ多くも将軍家の長女である神楽春華様であるぞ!」
「おおっ、この間やっていた水戸黄金ごっこか?」
「楓、今は水戸黄金ごっこをやっている場合ではないのだ。今度一緒にやってあげるから静かにしてくれ」
「違う! 違うのに! ……うう、ここ最近不敬を窘める度にこんなことを言われる……」
楓の堂々とした物言いには少しうずうずとさせられたが、今は水戸黄金ごっこよりも水神様のお供え物が優先だ。
よよよと崩れ落ちる楓をひとまず放置して、あたしは管理人へと向き直った。
「管理人、これを見てくれ! あたしの設置した岩の前にこんな見事なものが置いてあったのだ!」
「ああ、それか。どこの誰が置いたのかはわからないが、そいつのお陰で俺のオヤツが増えて万々歳だ。年に数回ある祭りは面倒だが、それ以外は神社の掃除をしてるだけで賽銭箱にお金が入ってくるんだから神職ってのはちょろいぜ」
この管理人、働き盛りの年齢をしている癖にいつも家にいる。たまに面倒くさそうに神社を掃除している姿は見かけるが、それだけで生活ができているのか不思議だ。
なんでも不労所得があるので働かなくていいなどと言っているが、あたしにはよくわからない。
「それで管理人。少し相談したいことがある」
「なんだ?」
「あたしはこれが欲しい!」
「ダメだ。そいつは賽銭箱の収入を増やすことができる道具――じゃなくて、ご神体だ。使い所を考えれば、信者からたくさんの金を巻き上げられる」
むむ、てっきり二つ返事で許してくれるかと思ったのに。
この管理人は基本的に適当であるが、お金のことになると強情になる。
かくなる上はいつもの交渉術だ。
あたしは管理人の手をそっと包み込み、上目遣いでお願いする。
「……どうしてもダメか?」
「残念ながら俺は剛毅や龍次郎のように甘くはない。そんな風に手を握ってお願いされた程度じゃ揺るがん」
残念ながら管理人にはいつもの手は通用しないようだ。
楓や父上や龍次郎おじさんなら、これでいちころなのにな。
ならば、手管を変えようと思う。
「ならば、これでどうだ?」
「うん? だから、俺にはそんな手は通用しないと――おおおおおっ!?」
あたしはもう一度管理人の手を取り、袖の中にしまっておいた小判を数枚握らせた。
「春様!? それは悪代官のよくやっている袖の下というやつですよ!? 姫様がそんなことをしてもいいのですか!?」
小判の輝きが見えたのか楓がぎょっとした顔で言う。
「はて、なんのことかのう?」
「くっ、お転婆姫もいつの間にか大人になったもんだぜ。いいぜ、嬢ちゃんの成長ぶりを祝って、そのご神体はくれてやるよ」
「おお、さすがは管理人! 話がわかるな! これからもよろしく頼むぞ!」
あたしと管理人はにひひと笑い合って握手をする。
なんかこれアルの言っていた水戸黄金の悪代官っぽいぞ。
一番好きなのは勿論、主役である水戸黄金なのだが、一度はこういう悪代官っぽいこともやってみたかったのだ。
「あわわわわ、またしても春様が変なことを覚えてしまわれた。兄上といい、アイツに関わったものがドンドンと悪影響を……っ!」
楓がぶつぶつと呟いているがよく聞こえない。
「よし、今日の練習は中止だ。このご神体を持ち帰って、父上たちに自慢するぞ!」
これほど見事なご神体だ。さぞかし父上たちも羨ましがるだろう。
あたしは今日の練習を中止して、大急ぎで城に戻ることにした。
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アンケートストーリーは後二つあります。
明日、明後日の同じ時間に更新します。




