そろそろいける?
明日は『転生して田舎でスローライフをおくりたい』のコミック6巻の発売日です。
早いところではもう店頭に並んでます。よろしくお願いします。
「そろそろ行ってもいい気がする」
以前、俺はカレーに必要な香辛料を集めるためにラズールに赴いた。しかし、その時にサルバという第二王子に出会ってしまい、俺の香辛料探しは頓挫。
ラジェリカにたどり着くなり、転移でコリアット村に逃げ帰ることになった。
あれから三週間経過した今ならいいんじゃないだろうか。
さすがにサルバやシャナリアも俺のことは忘れているだろう。
一人で向かえば転移でこっそりと入ることができるし、思う存分に探し回ることができる。
「よし、もう一回ラジェリカに行こう!」
そうと決まれば実行だ。
俺は速やかに屋敷を出ると、平原に向かってそこで空間魔法を発動。
「転移」
サルバとシャナリアと共に降り立った、ラジェリカの城門前を脳裏にイメージして転移を発動。
「うわっとと!」
雪地から砂漠に転移したために急に足が沈んでビックリした。
とりあえず、防寒服を着ていては暑くて堪らないので、速やかにラズール風の衣服を身に纏う。肌を覆うような衣服を着ると、太陽の光がかなり和らいで涼しくなった。
脱いだ衣服を空間魔法で収納して落ち着く。
目の前には以前と変わらず城壁が立っている。城門のところには大勢の旅人や商人なんかが列をなして入場待ちをしていた。
しかし、馬鹿正直にそこに向かう必要はない。
俺は転移を使うと、城壁の頂上へと移動。そこからはラジェリカ全体が一望できた。
「宮殿が立派だなぁ」
やはり、一番に目につくのは前世でもあったタージマハルを彷彿とさせる白い宮殿だ。
タマネギのような丸い屋根がついており、高い尖塔が囲うかのように設置されている。
宮殿の前には庭園が広がっており、いくつもの柱が並んでいるだけでなく、水が流れている。城壁から見下ろしてみることで初めて見えた部分だ。
砂漠地帯とは思えないほどの自然の豊かさだ。
「あんなものを設置できるだけの豊かさが王族である証なんだろうな」
水や緑が貴重とされる砂漠の国で、誇示するように豊かな庭園が広がっていれば王族の力具合が民にもわかるというものだ。
「宮殿も見に行ってみたいけど、そこにはサルバがいるだろうし近寄らないでおこう」
庭園にはハルバードを手にした兵士がうろついている。
特に観光地や憩いの場として開放しているわけでもないので未練はない。
ラジェリカの全体的な建物はジャイサールと同じ土魔法を利用したものが多い。が、すべてがそうではなく漆喰や大谷石のようなものを使った白い素材を使った建物もあった。
そして、それらは北側にある宮殿の傍に密集している。
あの辺りだけやたらと街並みが整備されているので、貴族街のような富裕層が住んでいる区画なのだろうな。
「とりあえず、街に降りようっと」
ひとしきりラジェリカの全体像を確認した俺は、転移を使って適当な家に降り立ち、そこから通りに移動した。
「まずは香辛料が売っているところを探そうかな」
目的はカレーに必要な香辛料を見つけること。なければ、片っ端から香辛料を買い上げて自分で試してみるしかない。
ジャイサールに比べると通りは基本的にこちらの方が広いけど、それに伴って人口や密度も増えているので建物や人はゴチャゴチャとした印象。
富裕区画でもないので建物も土魔法を使ったものがほとんど。
街の規模が大きくなったくらいで結局はあまり変わらないみたいだ。
行ったことのある街と似ているのでちょっと安心。
「へい、少年。チャイはどうだい?」
通りを歩いていると露店を営んでいる青年から声をかけられた。
相変わらずのフレンドリーさだ。ジャイサールだけかと思ったが、首都でもこんな感じということは最早国民性なのだろう。
興味のないものであれば、適当に会話してスルーなのだが聞き覚えがある飲み物だったので興味が惹かれた。
「それってミルクティーに似た飲み物?」
「ああ、その認識で間違ってないよ」
近寄って鍋を見てみると、そこにはミルクティーの色をした液体が入っていた。
しかし、普段飲んでいたミルクティーとは香りや甘みが違った。
「そういえば、ミルクティーとチャイの違いってなんだっけ?」
俺が思わず首を傾げると、青年が得意げな表情で語る。
「ミルクティーは沸騰したお湯で茶葉を蒸らした後、カップに注いでミルクと砂糖を混ぜる。だけど、チャイは直接お茶の葉を沸騰させて作るのさ。茶葉を水から似て、沸騰したところで砂糖とミルクを加えて再沸騰させる。この方法によって普通のミルクティーよりも強い甘みが出るのさ」
「へー、同じように見えて作り方が微妙に違うんだね」
さすがはチャイを作っているだけあって詳しいようだ。
「後は作り主が混ぜたオリジナルの香辛料で味が変わるってところかな」
「なるほど、丁寧に説明してくれたし一杯貰うよ」
「毎度あり!」
青年はにっこりと笑うと小さなコップの中にチャイを入れてくれる。
チャイの値段は一杯で賤貨三枚。非常に良心的な値段だ。
そのお陰か露店の周りでは、たくさんのラズール人がチャイを飲んで一休みしていた。
国民的な飲み物なのかもしれない。
程よい温かさを保っているチャイを飲んでみる。
口の中に広がるミルクティーの味。ただ普段飲んでいるものよりも甘みは強い。
そして、味の奥から感じる香辛料の味。
「お、ミント系の香辛料を使っているのかな?」
「ああ、お陰で飲みやすいだろう?」
ミント系の香辛料を使っているのか後味がスーッとしていた。
ミルクティーを飲み慣れている俺からすれば、やはりチャイは甘みが強すぎるように感じるが、このミントのお陰であっさりと飲むことができた。
癖も少ないし、あまり飲み慣れていない人は、こういったものの方が飲みやすいと思う。
ちょっとした作り方の違いで、ここまで味が変わるって不思議だな。
「お代わりちょうだい」
「あいよ!」
喉も乾いていたこともあり、俺は飲み干したコップにお代わりを注いでもらう。
「ねえ、香辛料がたくさん売っているところに行きたいんだけど、オススメの場所とかある?」
「それならこの通りを真っすぐに向かって、突き当りを左に行けば香辛料通りって場所に行ける。そこなら腐るほどあるよ」
なんと。そのような名前がついてしまうほどに香辛料が売っている場所があるのか。
それを聞いた俺は青年に礼を言い、チャイを飲んでから向かうことにした。
本作品のPVが3億に到達しそうです。
3億アクセス突破記念に読者アンケートストーリーをやろうと思います。
皆さんご希望のショートストーリーのアンケートをとりたいのでこの話の感想に書き込んでください〜
前と同じく本編に差し障らない書けそうなものを選出いたします。




