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転生して田舎でスローライフをおくりたい  作者: 錬金王


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メイドのお礼


 大掃除をすることが決定すると、バルトロ達は掃除用具をそれぞれ準備した。


 それから埃が舞っても大丈夫なように窓を開けていく。


 外から入り込む風が冷たいので、俺はリビングに火球を浮かべることで温度を保つことにした。


「坊主、まずはリビングの家具を頼む」


「ほーい」


 バルトロに頼まれて俺はサイキックを発動。


 リビングに設置されているソファーやテーブル、イスなんかを宙に浮かべる。


 家具の置かれてあった場所には僅かながら塵や埃が溜まっていた。


 メイド達が定期的に掃除しているとはいえ、じっくりとできる場所とできない範囲では限りがあるので仕方がないだろう。


 汚れを見つけたメイド達は素早い動きでそれぞれの場所の汚れを取り除きにかかる。


 大きな埃は小さな箒で掃いてしまい、小さな汚れは雑巾で。それでも取れない頑固な汚れは、何かしらの液体をかけて放置していた。


 俺はといえば、家具を浮かしているのが主な仕事だ。


 皆の邪魔にならないようにコタツに引きこもって魔法を維持する。たまに家具を掃除したいが故に下ろしたり角度を調整するが、その程度の操作はまったく苦にならないな。


 ぼんやりと皆の掃除風景を眺めると、年末の大掃除を思い出すな。


 この世界には新年や大晦日といった出来事はないのだが、寒い季節になると大掃除をすることが多い。


 冬の寒さで家にこもっているので、いつもは気にしない部屋の汚れなんかが気になってしまうからだろう。


 後は仕事が減って暇という理由もある。忙しさがあると些細な汚れも気にならないしな。


 皆がテキパキと働いている中、自分だけがコタツでぬくぬくとしていることに罪悪感を抱いたりはしない。


 何故ならば俺は貴族なので余分に働く必要がないし、こうして魔法で作業に貢献しているからである。


 やることさえきちんとこなせば、仕事中でも多少はだらけていようがいいと思う。


「坊主、もう家具を下ろしてくれていいぞ」


 バルトロにそう言われたので、家具を元に場所に配置する。


「次は談話室の方を頼む」


「わかった」


 リビングという部屋の広さを考えると異例の速さであるが、今回のポイントは普段掃除ができない場所をやることだ。


 それ以外は基本的に綺麗だし、いつでもできるので優先度が低いのだろう。


 とはいえ、コタツから出てしまうとは寒くなる。談話室にも暖炉はあるが、誰もいないので当然稼働しているわけもない。


 ……よし、コタツのまま移動する。


 俺はコタツの下に敷いているカーペットにサイキックをかけて自分の身体をそのまま持ち上げた。そして、身体が転がっていかないように布団をしっかりと身体に巻きつける。


 布団のまま移動するやり方を応用し、俺はコタツと一体化したのだ。


「ぼ、坊主……」


 コタツと一体化し、浮遊して付いていくとバルトロが呆れた顔をする。


 バルトロが何を言いたいかをわかっているが、俺はこれをやめるつもりはない。


 多少変であろうが、快適な環境を手放すつもりはない。


「なに?」


「いや、なんでもねえ」


 毅然とした表情で問いかけると、バルトロは肩をすくめて首を振った。


 ちなみにサーラとミーナとメルはこのような俺の姿を見慣れているのか、驚きもしなかった。


 バルトロもこれくらいの落ち着きと寛容さを身に着けて欲しいものだ。




 ◆




 それから俺達は談話室や空き部屋、寝室、ダイニングなんかを順番に回って同じように掃除していった。


 一番の難関である大きな家具の移動が俺のサイキックによってスムーズに行われたために、昼前にはすべての部屋の掃除が完了した。


「これで終わりだな!」


「じゃあ、俺はもう手伝わなくていい?」


「ああ、後の細かいところは私達がやっておく」


「前に私達でやった時は三日くらいかかりましたけど、アルフリート様のお陰で半日もかかりませんでしたね!」


 ミーナが感激したように言う。


 確かにこの作業を四人で、しかも手作業でやるとかなり時間がかかるだろうな。


 控えめな広さといえど、屋敷だけあって部屋数も多いから。


「魔法っていうのはすごいもんだね」


「魔法というより、アルフリート様が凄いような気がしますけど」


 俺からすればただサイキックで家具を浮かせただけなので、それほど褒められるようなものではない。


 ただ、純粋にメルやサーラも喜んでいるようだったので、手伝った甲斐もあるというものだ。


「坊主が手伝ってくれて本当に助かったぜ。ありがとな」


「「ありがとうございます!」」


「気にしないで。その代わり、あの件は頼むよ?」


 バルトロ達に礼を言われるのが、何だか気恥ずかしくて俺はふざけるように言う。


「ああ、いつでもできるってわけじゃねえから、サボりたい時は事前に言ってくれよ?」


「わかった」


 よし、これで一回は稽古を休めそうだ。とはいえ、別の雑事になると思うが、それは過酷な稽古に比べればそよ風のようなものだろう。


 面倒ごとを回避できる切符を手に入れた俺はかつてない満足感を抱いていた。


 まるで、上司お墨付きのいつでも休める有給を貰ったかのような嬉しさだな。


「さて、俺はお風呂にでも入ろうかな」


 できるだけ換気していたとはいえ、僅かな埃は付着しているはずだ。


 直接掃除はしていないが、気分的にお風呂に入ってさっぱりとしたい。


「そうおっしゃると思いまして、既に湯船にお湯を入れていますよ」


「本当?」


 さすがはできる方のメイドであるサーラだ。


 これを見越してお湯を入れてくれているなんて。いつの間にやっていたんだ。


「はい、しかも今日は特別性です」


「特別ってどんなの?」


「それは入ってからのお楽しみです。着替えをお持ちしますので、そのまま入ってください」


「わかった」


 微笑みながらのサーラの言葉に首を傾げるが、期待の方が上回ったので言われた通りに浴場に向かう。


 すると、脱衣所では仄かに柑橘系の匂いがした。


「……これはもしかして?」


 なにがあるかわかった俺は、いそいそと服を脱いで浴場へ。


 すると、湯船の上にはみかんの皮が入った袋が浮いていた。


「おお! みかん風呂だ!」


「ドライフルーツを作る際に、一緒に皮だけのものも干しておいたんです」


 驚きの声を上げると、脱衣所に着替えを持ってきてくれたらしいサーラの声がした。


「なるほど、わざわざありがとう」


「いえ、私達のお仕事を手伝ってくれたお礼です。では、ごゆっくりと」


 サーラはそう言うと、静かに脱衣所を去っていった。


 みかん風呂で労ってくれるとはお洒落じゃないか。


 浴場にはみかんの柔らかい香りが漂っている。


 みかんの皮にはリモネンという精油成分が含まれており、リラックス効果がある。さらに美肌を作るビタミンやクエン酸なんかも含まれているために、乾燥した冬の肌を潤すこともできる。


 体臭を消す効果や保湿作用もあるので、冬のお風呂にはぴったりなのだ。


 湯船に入ると前にまずはお湯で身体についた埃を洗い流す。


 身体にお湯をかけると、より強くみかんの香りが感じられた。


 いつもと違うお湯が少し新鮮だ。


 そのまま髪の毛と身体をいつもより早めに洗ってしまうと、そのまま湯船へと身体を沈める。


 コタツとは違ったじんわりと包み込まれるような温かさが心地いい。そして、お湯から立ち昇るみかんの香りが、鼻孔をくすぐって落ち着かせてくれる。


 これはきっとみかん風呂の効果だろう。


 人によってはみかんの成分でピリついてしまう人もいるだが、俺は特に問題を感じない。


 みかんの香りに包まれて、新鮮な気分で楽しんでいる。


 交換条件とはいえ、ちょっとしてお手伝いをやらされるはめになったが、このようなもてなしがあるなら悪くはないな。


 みかん風呂を堪能して身体の中までホクホクになった俺は、コタツに直行して真っ昼間から二度寝をした。





『今後に期待!』

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次のお話も頑張って書きます。

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こちら新作になります。よろしければ下記タイトルからどうぞ↓

『異世界ではじめるキャンピングカー生活~固有スキル【車両召喚】は有用でした~』

― 新着の感想 ―
本物の怠惰な人間は風呂に入ること自体も面倒くさがるものです。 ヒキニートなどは多少の汚れも他人の目がないので気にしないので、風呂なども不快感を感じるぎりぎりまで入らないのですよ。 そのレベルに達してい…
[一言] > みかん風呂を堪能して身体の中までホクホクになった俺は、コタツに直行して真っ昼間から二度寝をした。 せっかくお風呂に入ったのに埃っぽいコタツの中に戻ったのでは意味がない気も……。
[一言] かたつむりならぬ<こたつむり>(笑) ・・・ふよふよとアルが籠るこたつがカーペットごと浮遊、建屋内を漂い移動する様は笑える。 ⇒はやく漫画化され絵面でみたいものだ(笑)
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