予想通り
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「シルヴィオ、隣のテーブルとそっちの空いてるところ座ってもいいわよね?」
「あっ、エリノラ姉さん。うん、いいよ。村人も気を遣ってくれて誰も座らないみたいだし」
シルヴィオ兄さんのいるテーブルに近付くなり、エリノラ姉さんはそう言って座る。
シルヴィオ兄さんの返事を待つ前に、既に席に着いていることは最早突っ込まない。
一つのテーブルの利用だけでは窮屈なので、シルヴィオ兄さんとブラムのいる方にエリノラ姉さん、ルーナさんが座り、隣のテーブルでは俺、エリック、アレイシア、ラーちゃんが座った。
しかし、リムさんとロレッタはそれぞれの主の後ろで立ったままだ。
どうやらメイドとして傍で控えるつもりらしい。うちのミーナであれば、こういう時は率先して席に座ろうとするので、えらい違いだ。
こういうところで立っていられると目立つし、落ち着かないが、メイドがいることで貴族の客人がいるということも一目でわかる。
酔っぱらって絡んでくる村人もいないとは限らないし、ここは申し訳ないけど立っておいてもらうことにするか。
決して、二人が座ると席が手狭になるからとか、みみっちいことは考えていない。
「ロレッタ、ジュースちょうだい」
「はい、ラーナ様」
「リム、私にもお願い」
「どうぞ」
イスに座ると、ホッとしたのかメイドに持たせていたジュースを受け取るラーちゃんとアレイシア。
「……んっ、このジュース美味しい」
「濃厚な果汁だがしつこくない。適度な酸味とコクがあって飲みやすいな」
「……エリノラ、これはなんて果物からできてる?」
「リブラの実よ。この辺でしか採れないし、腐りやすいから街では飲めない代物よ?」
ルーナさんやエリックもリブラのジュースを飲むことに夢中。
いや、喉が渇いているのはわかるけど、一応苦しそうに寝転んでいるブラムも気にかけてあげようよ。
「一応聞いておくけど、ブラムはどうして苦しそうに寝転んでるの?」
寝転んでいるブラムについて全く触れないというのは可哀想なので、一応俺がシルヴィオ兄さんに尋ねる。
「村人から勧められるままに全部のスパゲティを食べちゃってね」
「ああ、やっぱりそうなんだ」
聞く前から予想はできていたが、そのまんまのようだった。
「なんだ……アルフリートか。悪いが、今の俺はお前に構っている暇はない……うぷっ」
誰もブラムに構ってあげないのが可哀想すぎるので、気にかけてやったというのに。
「こんな時でもこいつは偉そうだな。アルフリート、ちょっと身体を揺すってやるか?」
隣に座っているエリックが、ブラムに視線をやりながらそんな提案をしてくる。
最初はもっと硬い奴だったのに、本当に悪ガキになってきたな。
「面白い提案だな。やろう」
「私も揺する!」
俺とエリックの会話を聞いていたのか、ラーちゃんも乗ってくる。
「よし、じゃあラーちゃんも一緒にやろうか!」
「うん!」
「ら、ラーナ様、あまりそのようなことは……」
ロレッタがおろおろとしながら止めようとするが、ラーちゃんはそれを振り切ってこちらに。
そして、俺とエリックとラーちゃんは苦しそうにしているブラムに近付いて、ゆさゆさと身体を揺すってやる。
「ううっ! なにをするお前たちっ! や、やめろ、胃袋が揺れる……うぷっ!」
ははは、満腹の時に揺すぶられる気持ち悪さといったら、とてつもないだろう。
「あははは! ゆーらゆーら!」
ブラムの反応を見て大喜びのラーちゃん。
さすがは子供だけあって容赦がない。
俺やエリックはちょっと揺するくらいだが、ラーちゃんはブラムの身体を大きく揺さぶっていた。
「あんまりやると私達まで酷いことになるわよ?」
そんな様子を見かねたのか、アレイシアがラーちゃんに優しく諭す。
とはいえ、とても愉快そうに笑っていて本気で注意しているようには見えなかった。
ここで言う酷いこととは、勿論リバースのこと。そうなると被害に遭うのは俺達なのでやり過ぎはよくない。
「そういうことだから、ここまでにしてあげようか」
「うん、今日はこのくらいにしておいてあげる!」
俺が声をかけると、ラーちゃんは悪役の台詞のようなものを吐いて自分の席に戻った。
シェルカが言いそうな言葉だから、多分そこから覚えたんだろうな。
しばらく決壊しないかブラムを見ていたが大丈夫そうだ。
「薬は飲ませてあるから、しばらく安静にしておけば回復するよ」
さすがはシルヴィオ兄さん、しっかり介抱してあげているようだ。
今の揺さぶりで回復は少し遠のいたと思うが。
状況が確認できたので、最早ブラムに構う必要はない。
俺はリブラのジュースを口にする。
いくつもの果物が合わさったような深みのある味。酸味と甘みが見事に調和しており、後味は爽やか。まるで、ミックスジュースのよう。
屋敷でもたまに飲んでいるが、やはりリブラのジュースは何度飲んでも美味しいな。
「はあ、渇いた身体に染み渡る」
「甘くて美味しい」
「輸送が困難じゃなければ私の屋敷でも飲みたいくらいだわ」
どうやらラーちゃんもアレイシアも気に入ってくれたようだ。
収穫祭のせいか村の中はいつもと比べるとかなり賑やか。しかし、それは王都のように人がごった返しているわけでもなく、村人達の声も聞いていて心地のいいもの。
暑くもなく、寒くもない適度な温度、適度な賑やかさ。そんな中でまったりとするのも悪くない。
「ねえ、アル。さっきから村人が綺麗な小魚の入った瓶を持ち歩いているのを見るのだけど、あれは何かしら?」
周りを見ながらボンヤリしていると、アレイシアが尋ねてきた。
さすがはアレイシア。周りのことまでよく見ている。
「あー、本当だ! 赤色と青色の小魚がいるー!」
「……私もさっきから目にして気になっていた」
ラーちゃんとルーナさんも興味を示している。
「あれはこの後に案内しようと思っていた催しで、小魚すくいですよ」
「小魚すくい? お魚を釣るの?」
首を傾げながら言うラーちゃん。
金魚すくいをやったことや聞いたこともなく、小魚を手にしている村人を見ると普通はそう思うだろう。
「いや、釣るんじゃなくて乾燥させたスライムの皮を貼り付けた小さな網みたいなもので小魚をすくうんだ」
「そんなやり方は聞いたことがないわね」
型破りな遊びだけあって、柔軟な思考をしているアレイシアも戸惑いを隠せないよう。
まあ、これに関しては実際にやっているところを見る方が早い。
「しかし、そんな事が可能なのか?」
俺のことを詐欺師でも見るような目で見てくるエリック。
「不可能だったら催しとして成り立たないから」
コツは必要だが、村人でもすくえるようになった人は結構いる。
もし仮にできなくても、小魚すくいの屋台の人はコツを知っている人ばかりなので、その人のアドバイス通りにやればすくえるはずだ。現に何人もの村人が小魚の入った瓶を持ち帰っているわけだし。
「へー、なんかよくわかんないけどやってみたい! 綺麗な小魚欲しい!」
俺の説明を聞いてラーちゃんは興味を示した模様。あの綺麗な小魚をご所望のようだ。
「じゃあ、もう少し休憩したら行こうか」
「えー、今すぐ行こうよ?」
「まだ席に座って十分しか経ってないよ。もう少し休んだ方がいいって」
「そうですよ、ラーナ様。もう少しお休みにならないと途中で疲れてしまいますよ?」
小魚すくいを楽しみにして逸るラーちゃんを、俺とロレッタはゆっくり休むようにと宥めるのであった。




