人生そんなもの
更新遅れてごめんなさい!
『転生して田舎でスローライフをおくりたい』コミック3巻が昨日発売しました!
書店でお見かけした際は是非お願いします!
巻末に書き下ろし小説もありますので。
「アルフリート、ブラムだ! 少し話がある!」
さあ、これから人生ゲームをやろうというタイミングで、お邪魔虫が扉をノックしてきた。
その瞬間、俺とラーちゃんは顔を合わせて息を潜める。
「「…………」」
「おい、さっきまで会話をしていただろうが! 息を潜めてやり過ごそうとするんじゃない!」
チッ、律儀に扉をノックしてきたので、不在を装おうとしていたが、どうやら漏れ出た声で感知されていたようだ。
俺は仕方がなく立ち上がって扉を開く。
「……一体、なんの話で?」
「ふっ、そんなものは決まっているだろう。貴様に決闘を――」
「あら? 私は屋敷でも静かにしてと言ったのだけど、意味を理解できていなかったのかしら?」
ブラムが偉そうに告げようとしたところで、アレイシアの氷のような冷たい声が響く。
にっこりとした笑みを浮かべているが、まったく瞳は笑っておらず凄みのようなものを感じられる。
「あ、アレイシア嬢が、このような時間にどうしてアルフリートの部屋に!」
「皆で遊んでいるからに決まっているでしょう? 昼間から割って入るのを繰り返して、少しは空気というものを読んだらどうかしら?」
散歩を邪魔されて昼間に警告をしたのに、懲りずに夜にやってきて人生ゲームまで邪魔をされて相当お怒
りのようだ。
「この人、邪魔ー!」
「うぐっ! も、申し訳ありません」
さらに、ここぞとばかりにラーちゃんの追撃。
遊ぶことを一番楽しみにしていただけあって、度々邪魔をしてくるブラムに対して辛辣だ。
アレイシアに睨まれて、幼いラーちゃんにまで敵視されるブラム。
決闘を吹っ掛けてくる迷惑な奴だが、可哀想に思えてきた。
さらにこのまま部屋に戻れなんて言われたら、目も当てられないし、明日から気まずくなりそうだ。
「ま、まあ、ここはブラム様も一緒に遊んでいかれてはどうです? ちょうど、これから大人数でもできる遊びをやっているところですので」
「あ、ああ、そうだな。俺も混ぜさせてもらおう」
俺が提案すると、ブラムはちょっと安心と嬉しさの混ざったような笑みを浮かべた。
悪い奴なのではないと思う。ただ、ちょっと色々と面倒なだけだろう。
追加でブラムの駒を土魔法で作ると、準備は整った。
「まずは順番を決めるから、魔導具に触れて魔力を流してみて」
「うん!」
俺がそう言うと、ラーちゃんは頷いて魔導具に手をかざして魔力を流した。
すると、その上に置いてあるルーレットが勢いよく回転した。
どうやら少し多めに魔力を流してしまったようだ。
「あはは、回る回る!」
それでもラーちゃんはくるくると回るルーレットを見て無邪気に笑っている。
ちょっと魔力を流すだけで十分に回るのだけど、楽しんでいるので水を差すようなことは言わないでおこ
う。
針が当たり、回転力が落ちるとルーレットが止まった。
「六!」
「この数字の高い人が駒を動かす順番になります。また、駒を進ませる時も同様に回してもらいます」
「わかったわ。次は私が回すわね」
そんな感じでアレイシア、ブラム、エリック、俺が順番を決めるためにルーレットを回す。
アレイシアが八、俺が四、ブラムが二、エリックが一。
つまり、順番はアレイシア、ラーちゃん、俺、ブラム、エリックとなった。
ちなみにルーレットの数字は八までだ。あまり大きな代物ではないので、あまり大きな数字がっ出てしまうとあっという間にゴールしてしまうからな。
「ということは、私から始めていいのね?」
「はい、後は止まったマスの出来事に従うだけですので。最初は皆さん、平民からのスタートで所持金は銀貨三枚になります」
「私が平民……この遊びでは、どんな人生になるか楽しみだわ」
アレイシアはにっこりと笑うと、ルーレットを回す。
出た数字は二だ。
スタート地点に置いてある駒をとって、二マス進めるアレイシア。
すると、アレイシアが出来事を読み上げて、首を傾げた。
『薬草を手に入れた。行商人に売って銀貨二枚の利益』
「これはお金が増えるってことかしら?」
「そうですね。銀貨二枚をお渡しします」
「額は少ないけど手持ちのお金が増えるのはいいことね」
アレイシアに土魔法で作った銀貨二枚を渡すと、こころなしか少し嬉しそうであった。
最初のマスの中では順当な結果なところであろう。
「次は私だね!」
アレイシアが終わると、ラーちゃんがウキウキしながらルーレットを回す。
出た数字は三。
『魔物を倒す。素材を売って、銅貨八枚もらう』
「魔物を倒した!」
「ラーちゃんは、魔物を倒したので銅貨八枚もらえまーす」
俺が進行役を兼ねて、土魔法で作った銅貨をラーちゃんに渡す。
「私、はじめて自分でお金を稼いだ!」
「おお、やるではないか」
「うん、すごいね」
作り物の銅貨を見つめるラーちゃんの姿が眩しい。
なんて純粋な子供なのだろう。思わず亜空間に収納している本物の銅貨を渡してあげたくなるな。
孫にお小遣いをあげるお爺さんの気持ちが少しだけわかった気がする。
でも、銀貨二枚で額が少ないと言っていたアレイシアは気まずそう。笑みを浮かべてはいるが眩しさに声をかけられないようだった。
これが成長する故に失われてしまったものなのだろうか。
「じゃあ、次は俺だね」
自分の順番がきたので、俺はルーレットを回す。
すると、ルーレットが出した数字は五。
『草原でお昼寝。一回休み』
「一回休み?」
「次に俺の番がきても、お昼寝中だから動けないってことだよ」
「へー、お昼寝ならしょうがないね」
うん、しょうがないよね。うちの家族もラーちゃんくらい理解力と包容力があれば助かるんだけどな。
「フン、スタート地点でいきなり昼寝とはのんびりとしているな」
などと思っていると、ブラムが偉そうに言ってきた。
対抗心のようなものを燃やしているのだろう。
しかし、この人生ゲームは先に進めれば必ずしも勝てるというわけでもない。
「次はブラム様ですけど、ルールはわかります?」
「横から見ていて大体わかった。俺が一番に成り上がって強さを手に入れてやるからな」
何故かこちらを睨みつけながら、ルーレットを回すブラム。
ルーレットが差した数字は七。
比較的大きな数字に優越感を浸っていたブラムであるが、
『魔物との戦闘で怪我を負った。治療費として銀貨一枚払い、一回休み』
「なっ、魔物を相手に怪我だと!? バカな!」
お金を払う上に休みまで付いてくるマスに止まってしまうとは、俺よりもダメじゃないか。
これも生き急ぐなということなのだろうな。
「大きな数字が出たからといって、いいことが起きるということでもないのだな」
驚愕するブラムを横目にして、エリックが頷く。
実は序盤はあまり差がつかないように大きな数字が出るほど、出来事も微妙なものにしている。とはいっても、それは序盤だけでそれ以降は、適当になっちゃっているけどね。
とりあえず、ブラムからは銀貨一枚を徴収だ。
「次は俺か……」
最後の出番であるエリックが、身を乗り出してルーレットを回す。
「ぬお! また一か! 仕方がない進めるのであればたとえ一でも――」
『財布を落とした。一マス戻る』
歯がゆそうにしていたエリックがマスの出来事を読んでピタリと止まり、叫んだ。
「貴様! もっとちゃんとしたマスを作らんか!」
「いやいや、ちゃんとしたマスじゃないか!」
ちゃんと出来事も書いてあるし、理由だって納得のいくものだろう。
「俺が進んでないではないか!」
「そういうのもこの遊びの醍醐味だって」
「……納得いかん」
俺がそう説明すると、エリックは腕を組んで座り直した。
人生の出来事全てに納得できるかどうかは別の問題だ。そういう時もある。
「さあ、次は私の番ね」
皆の番が回って、大体の流れは理解できたはず。
さあ、ここからが人生の分かれ道になるだろう。
400話、達成!




