人生ゲームをやろう
令和初の更新。
そして『転生して田舎でスローライフをおくりたい』のコミック3巻が5月25日に発売です。
Amazonでも予約できますので、ぜひよろしくお願いいたします。
巻末には書き下ろし短編もあります。
「アル、皆で遊べる物ないー?」
「うーん、そうだね。何がいいかなー?」
ラーちゃんの皆で遊びたいというリクエストに応えるために、俺は棚を開いて玩具を探す。
ちなみにアレイシアは離れたところでけん玉と格闘中だ。
リバーシや将棋は二人用。一応、四人で遊べるがラーちゃんの要望である全員で遊ぶとはちょっと違う気がする。
ジェンガは四人でやるのに持ってこいだが、大きな音を立てて崩れてしまったり、叫んだりと夜に迷惑になるのでオススメできない気がする。
アーバインとモルトとやった時も随分騒がしかったし。
改めて考えると、俺って四人で遊べるようなゲームをあまり作っていないな。
棚の中には木製の竹とんぼ、土魔法で作ったフィギア、卓球のラケット、フリスビー、お絵かきセット、コマ、輪投げ、こけし……本当に子供の玩具箱状態だな。
「わあ、宝箱みたい!」
横から覗き込んだラーちゃんが感嘆の声を上げる。
確かにこれは宝箱かもな。少なくても俺の好きなものがたくさん入っている。
「ねえ、アル。この丸いのがついた箱は何?」
「ああ、それは魔導具だよ」
ラーちゃんが目をつけたのは王都で買った魔導具だ。
「ほう、どんな効果があるのだ?」
「魔力を込めるとクルクルって円盤が回る」
少し魔力を流してみると、魔導具についている円盤がクルクルと回った。
「あはは、本当だ! クルクル回ってる!」
「……これに何の意味があるのだ」
無邪気に笑うラーちゃんと、つまらなさそうに見るエリック。
「意味ならあるよ。回転にはたくさんの可能性があって――」
エリックに回転の可能性について語ろうとしたところで閃いた。四人で簡単に遊べるゲームのことを。
「おい、どうした?」
「ちょっと待って。面白い遊びを思いついたから」
怪訝そうにするエリックを放置して、俺は回転する魔導具と画材セットを取り出す。
大きな紙を広げると、そこにペンでマスを書いて、そこにドンドンと出来事を書いていく。
その上に回転する魔導具を設置すると、土魔法でルーレットを作って、外側には旗のような紙で作った針を設置。
「さっきから紙にチマチマと書いて、何を作っているのだ?」
この時点で俺が何をやりたいかは日本人ならわかるだろう。
「人生ゲームだよ」
そう、俺が作っているのは人生ゲームだ。
これなら最大八人まで遊べるし、今後大人数で遊ぶときも困らないのでいい案ではないだろうか。
「それってどういう遊び?」
「今、説明するために準備するから待っててね」
目を輝かせながら尋ねてくるラーちゃんを落ち着かせながら、俺はプレイヤーとなる駒の準備をする。
普通は車にピンとなった駒を差し込むが、この世界に車などないので、こちらの世界に合わせて馬車とする。
小さな馬車を作ったら、上から穴の空いたところにピン状になったプレイヤーをはめる。
最初は一人旅という設定なので、御者席に座らせるのがいいだろう。
ここでパートナーなどができれば隣に女性を座らせたり、後ろに子供を座らせたりすることができる感じだ。
「なんかこれ可愛い!」
「本当に器用だな貴様は……」
ラーちゃんはミニサイズの馬車セットが気に入ったのか、楽しそうに眺めている。
女の子はこういうミニチュアな物や、ドールハウスみたいなのが好きだものな。
お土産としてそういう物を作って、渡してあげたら喜んでくれそうだな。暇を見つけて作ってみよう。
人形版を作ったらドール子爵とか死ぬほど喜びそうだな。
まあ、あっちは人形劇で忙しいだろうから、タイミングを見て送ることにしよう。
プレイヤーができたら、後はお金と職業カードだな。
お金はこの世界だと硬貨なので、賤貨、銅貨、銀貨、金貨とそれに合わせた大きさのものを土魔法で精製。
「お前! 今、銅貨を魔法で作り出したのか!?」
「え! アル、お金作れるの!?」
俺が土魔法で銅貨を作ったからか、エリックとラーちゃんが勘違いした反応を見える。
同じ意味の質問でも、前者は金のなる木を見つけた欲望に塗れたもので、後者は純真無垢な称賛だけのもの。
対称的であるが故に、エリックの汚れ具合がクッキリと浮かび上がったな。
「そんなわけないだろう。土魔法で硬貨を真似て作っただけだよ」
「何だ、ややこしい真似をするな。一瞬、貴様を神様だと勘違いしそうになったではないか」
人は金を作れると神様に昇格できるらしい。
というか、勝手にそっちが勘違いしただけなのに、どうして俺が怒られなければならないのか。
「すごーい、実際のお金と絵が同じだよね?」
「はい、特に銅貨だと色合いも似ているのでぱっと見、本物だと思ってしまいそうですね」
ロレッタが取り出した本物の銅貨と見比べているラーちゃん。
こうして見ると、自画自賛になってしまうが似ていると自分でも思うな。
「一枚くらい混ぜて使ったらバレないかもね……」
「混ぜるって?」
「銅貨十枚払う時に、二枚くらい魔法で作った偽の銅貨を混ぜても露店ならバレないかもね」
前世の催し物などでもあった手口だ。
忙しく会計を済ます中、百円玉かと思ったら全部外国の十円玉だったとか。
「すごい! アル、頭いい!」
「絶対に止めてください。そんなことをすれば、貴族として――いえ、人間としての品格が落ちます」
無邪気なラーちゃんを真顔で窘めるロレッタ。
うん、ちょっとこれは良くないね。冗談でも話題は選ぶことにしておこう。
残念ながら色は全部土色であるが、大きさやデザインはしっかり真似できているので問題ない。
「よし、これで一通り準備が揃ったから説明をするよ」
「アレイシア、それやめて早くきて!」
「……もうちょっとでコツが掴めそうなのだけど仕方がないわね。何やら面白そうなものを広げているし、私もそっちに混ざるわ」
ラーちゃんに呼ばれて、けん玉の練習に夢中だったアレイシアがこっちにやってきて座った。
チラ見した限り、まだコツを掴むには遠そうな感じだったけど、そこは突っ込まないでおこう。
「で、この人生ゲームとやらはどう遊ぶのだ?」
「簡単に言うと、ここにあるルーレットを回して、そこにある数字の分だけ駒を進めていく。そして、ゴールした時点でどれだけお金を持っているかを競うんだ」
「へえ、要はお金を増やす遊びなのね?」
さすがはアレイシア。すぐに理解してくれるので助かる。
「はい、でも色々な道筋があって、どのような道に進むかはその人次第なんですよ。こっちの道は冒険者だったり、反対側は貴族だったりします」
勿論、人生ゲームの道筋は前世のものとは違う。
ちゃんとこちらの世界の文化に合うようなイベントや、職業に就いたりする。冒険者になって一攫千金を目指したり、貴族になって様々な事業で税収入を増やしたり、商売人になったり。現代とは違ったオリジナルものだ。
「なるほど、まさに人生の道筋……だから人生ゲームなのね。今の自分とは違う人生を選べるし、それに合った出来事もあって面白そうだわ」
「短時間で随分と凝った遊びを考えたものだな……お、騎士の道もあるではないか」
「アル、魔法使い! 魔法使いは!?」
「魔法使いの道もちゃんとここにあるよ」
「本当だ!」
俺が魔法使いの道を示してやると、ラーちゃんは喜んだ。
とはいっても、必ずしも願う道に進めるとは限らないのが人生ゲームと人生であるが、そんな白けさせるようなことは言わない。
「アル、早くやろう!」
「うん、じゃあやってみようか」




