アルフリート、目撃情報?
PVが増えて嬉しくなったので更新!
ダイニングルームでアレイシアとラーちゃんが、エーガルさん、ナターシャさん、ルーナさんと挨拶をする。
「後からお邪魔するような形になって、ごめんなさい」
「リーングランデ家のご令嬢であるアレイシア様と交流が持てて光栄です」
こうなると既に知り合いである俺達に役目はないので、ダイニングルームにあるソファーに腰かけていた。
「エリックのお姉ちゃん?」
「……はい、ルーナといいます」
アレイシアが大人と気難しい会話をする中、ラーちゃんはエリックの姉であるルーナさんと会話をしていた。
「何歳?」
「……十三歳です」
「私と九歳差だね!」
「……そうですね」
こちらは難しい挨拶などはしておらず、ラーちゃんが気ままに質問して、ルーナさんが答えるという形。
普段から無口なルーナさんだが、今回はいつにもまして口数が少ない。
公爵令嬢であり年下であるラーちゃんを相手にどう対応していいか計りかねているのだろう。
「ルーナさん、ちょっと困ってるね」
「小さい子供の相手とかは苦手だからね」
微笑みながら呟くと、同じくソファーに座るエリノラ姉さんが答えた。
さすがに仲がいいだけあって、ルーナさんのことを理解しているようだ。
「へえ、でも俺ぐらいの子供なら大丈夫なんだね」
「アルは子供って感じがしないから例外でしょ」
俺がそう言うと、エリノラ姉さんが鼻で笑った。
なんだ、それ。それでは俺が子供じゃないみたいじゃないか。
十五歳で成人扱いされるこの世界の価値観でも、七歳はまだ子供。
俺がその枠組みから弾かれるのは納得がいかない。
「いやいや、俺も子供でしょ。ラーちゃんと三つしか変わらないし」
「そうかもしれないけど、アルを子供って表現するのはちょっと違和感が出ちゃうよね」
シルヴィオ兄さんまでそのような酷いことを言う。
「もうちょっと子供扱いして欲しかったら、生意気な口とその貫禄ある姿をどうにかしなさいよ」
「座り方が堂に入っていてふてぶてしいよね」
えー、なにそれ? 俺はただソファーに座ってるだけなのに意味のわからないことを言う二人だ。
座り姿が子供らしくないなどと聞いたことも言われたこともない。もっと子供扱いしてもらって甘やかしてほしい。
そんな風に談笑していると、挨拶の輪にいたラーちゃんがやってきた。
近くにいるメイドさんが咎めないことから、ある程度会話に区切りをつけてきたのだろう。
ルーナさんも距離感を掴めていないようだし、四歳児が大人に混ざって長話をするのも無理なものだろうしな。
「ねえ、アルにもお姉ちゃんいるの?」
「いるよ。それとついでに兄さんも」
傍ではシルヴィオ兄さんが「ついでって酷い」と苦笑していたが、俺をふてぶてしいとか言ったので仕返しだ。
「はじめまして、アルフリートの姉のエリノラと申します」
「兄のシルヴィオです」
傍にいたエリノラ姉さんが猫を被り、シルヴィオ兄さんと共に挨拶をすると、ラーちゃんは目を丸くして眺める。
そして、先程と同じように俺の顔をまじまじと見つめた。
しかし、先程アレイシアに注意を受けたからだろう。ラーちゃんは何かを呑み込むように一拍置いてから笑顔を浮かべた。
「私、ラーちゃん。よろしくね!」
「ええ、こちらこそよろしくお願いします」
ハッキリものを言ってしまう四歳児に、言葉を呑み込ませてしまう俺って何なのだろうな。
でも、ちゃんと似ている部分はあるからね?
半ば自分に言い聞かせていると、ラーちゃんがこちらを見上げてくる。
「ねえ、アル」
「んん? どうしたの?」
「この間、王都にいたよね?」
にこやかな笑みを浮かべていた俺だが、ラーちゃんの口から飛び出た言葉に一瞬真顔になる。
「あれ? アルってばここ最近王都に行っていたっけ?」
「カグラに行った後はシルフォード領に向かったし行ってないね」
ラーちゃんの言葉を近くで聞いていたエリノラ姉さんやシルヴィオ兄さんが不思議そうに言う。
多分、ラーちゃんが言っているのは、エリックの領地の前に王都に転移した時のことであろう。
あの時、俺はハッキリとではないが、ラーちゃんに目視されてしまっているからな。
マズいな。でも、ここで慌ててボロを出してはいけない。
あくまでラーちゃんが一方的に俺を一瞬目視しただけで、会話もしていないし、第三者の目撃証言や王都への入場記録もない。
シラを切ってしまえば、ラーちゃんの見間違えということで乗り越えられる。
「うーん、王都には貴族交流会以来行っていないけどなー」
「えー、嘘!」
「俺らしい人を見かけたって、いつのこと?」
「うーん、夏前だったよね?」
「そうですね。私は見ていませんが、ラーナ様がそうおっしゃった日は二か月前です」
ラーちゃんが振り返ると、お付きのメイドさんが思い出すように言う。
うん、バッチリ俺が王都に転移した時だね。
「エリノラ姉さんと見間違えたんじゃないの?」
「こんな綺麗な人と見間違えないよ?」
ラーちゃん、その言い方は俺を激しく傷つけるんだけど。
だけど、ラーちゃんに悪意はないのは間違いないので、気にしないことにする。
「というか、あたしその頃にはここに帰ってきていたし、見間違いとかあり得ないでしょ」
意外と記憶力のいいエリノラ姉さん。
ここは話をうやむやにするところなので首を突っ込まないでほしい。
「じゃあ、多分見間違えだよ。茶色い髪をした子供なんてたくさんいるからね」
サーラのように綺麗な黒髪やアレイシアのような紅髪とかであれば目立つかもしれないが、茶髪の人はかなり多いしな。
「むー、でもあの路地裏に入ったのは絶対アルだったもん! 見間違いじゃないもん!」
俺が諭すように優しく言うも、ラーちゃんが不満そうに頬を膨らます。
うん、確かに見間違いじゃないし、俺だけどそれでは今後の生活が不自由になるので見間違いということにしてほしい。
小さな子供を嘘つき呼ばわりするようで心苦しいが、俺にも譲れない平穏な生活があるのだ。
俺が心を痛めていると、エリノラ姉さんが意味深く呟く。
「……路地裏?」
「どうしたの姉さん?」
「いや、あたしもその少し前にキッカの路地裏でアルを見かけた気がしたのよねー」
ラーちゃんの言葉から思い出したのか、エリノラ姉さんがまたもや過去を振り返り始めた。
「その話は前にもしたし、違うって言ったじゃん」
「そうなんだけど、あたしの感覚では確かにあそこにアルがいたのよ」
論理的に何の説得力のない言葉。だけど、それが的確だから恐ろしい。
「アルが路地裏にいっぱいいる?」
子供というのは本当に恐ろしい。
俺が転移で各地に移動することによって起きる、生活の矛盾点をラーちゃんは的確に突いている。
内心ではかなり動揺していたが、この程度の揺さぶりは日頃から慣れている。
緊張で強張る顔の筋肉を遮断して、努めていつも通りの表情を作ってみせる。
「そんなネズミみたいにポコポコ湧いてこないよ」
「それでもそうだね」
俺の言い方がちょっとツボに入ったのかシルヴィオ兄さんがクスリと笑う。
なんだか失礼なことを想像された気がする。
「あはは、アルが湧いてきたらおもしろーい!」
ラーちゃんもそんなことを言うが、こちらは可愛いので許してあげよう。




