人形の大行進
このマンガがすごい! Webでコミカライズ16話が公開されました。ハンバーグとミーナの話ですね。
ミーナがエロ可愛いですよ。
「うむ、カエル財布に、カエル人形も大満足の出来だな! アルフリート殿がデザインしたのだ、せっかくだから名前を考えてくれぬか?」
「では、ゲコ太財布とゲコ太人形でお願いします。うちで作ったカエルは全てゲコ太で統一してますので」
「ほう、ゲコ太か。悪くない名前だ! 今日からお前はゲコ太だ!」
まるで我が子の誕生を祝うかのようにゲコ太の人形を持ち上げるドール子爵。
「ところでアルフリート殿。知り合いの貴族にこれらを贈ってもいいだろうか? 懇意にしている貴族の中には人形好きの娘がいてな」
「勿論、構いませんよ」
ここで売りたい、商品化して儲けたいなどと言ってこないのがドール子爵らしいな。
彼は純粋に人形を好きな人のために、あるいは広めるためにゲコ太を贈ってくれるだろう。
「ありがとう。そういえば、まだアルフリート殿に人形を渡していなかったな。私の作ったお気に入りの人形がいくつかあるのだ。是非受け取ってくれないか?」
「本当ですか! ありがとうございます! 受け取らせて頂きます」
期待していた通り、ドール子爵は領地から人形をいくつか持ってきてくれたようだ。ナイトとエリザベスのクオリティを見れば、他の人形の素晴らしさも期待できる。
貰えるものは是非とも貰っておこう。
「それは良かった! バスチアン! 馬車から人形を全て持ってきてくれ!」
「ぜ、全部でよろしいでしょうか?」
ドール子爵が叫ぶと、廊下に控えていたのかバスチアンがおずおずと顔を出してくる。
「構わん! 早く持ってこい!」
「かしこまりました」
ドール子爵に言われて急いで部屋から離れていくバスチアン。
何だかバスチアンの引き攣った表情と言葉が引っ掛かるけど、まあいいか。
一体どのような人形を持ってきたのか楽しみだ。
バスチアンが人形を持ってくるのを待っている間、ティクルの方を見てみると、そこではミーナが倒れる寸前にまで前傾姿勢になっていた。
「ミーナさん、もうちょっと倒れてください」
「も、もうちょっとって、これ以上は無理です! 倒れます!」
「倒れてもいいですからお願いします! むしろ、倒れる寸前が見たいのです!」
「ええ!? ティクルさんは私が嫌いなんですか!? 何か嫌われるような事をしましたっけ!?」
「人形のためなんです。人形の……」
何だか少し噛み合っていないようだが、楽しそうにやっているので問題はないな。
「人形をお持ちしました」
ティクルとミーナを眺めていると、バスチアンが入ってきて大きな袋を置いていく。
「おお、ここに人形が――」
「人形をお持ちしました」
俺が大きな袋に驚いていると、ティクルとは違うドール子爵のメイドが新たな袋を持ってきた。
さっきの袋でも結構な大きさがあったというのにこれが二つか。これはかなり人形が貰えたな。ベッドを人形で埋め尽くすこともできそう――
「人形をお持ちしました」
「人形をお持ちしました」
「人形をお持ちしました」
「ちょっと多くないっ!? サーラ!」
しれっと人形を運んでくるメイドの中に、サーラが混ざっていたので思わず突っ込む。
「はい、馬車一台分の量の人形ですからまだまだありますよ」
「うむ、アルフリート殿のために領地から持ってきたのだ!」
サーラの言葉に付け加えるように笑いながら言うドール子爵。
その間にもドンドンとメイドが袋を運んできて、部屋の中が袋で狭くなっていく。
一つ袋を開けてみると、そこには可愛らしいクマ、馬、牛、ウサギ、ナイトの色違い、エリザベスの衣装違いと大量の人形が入っている。
これはもうベッドを埋め尽くすなんてものじゃない。部屋一面を埋め尽くす勢いだ。
まさかこれほどまでに人形を貰えるとは予想外だ。しかも、人形の入った袋はまだまだやってくる。
とりあえず、いつまでも袋のままにしていると部屋が袋で溢れ返ってしまうので、中身を取り出して人形全てをサイキックで移動させる。
「おおおっ! 人形の大行進だ!」
人形が勝手に歩いて移動するのを見て、ドール子爵がキラキラとした瞳を浮かべる。
確かに俺が何十体もの人形を操る姿は、さながら大行進と言えるだろう。
「ははは、これだけあれば人形だけの劇とかできそうですね」
「……アルフリート殿、今なんと?」
「人形をたくさん動かし、遠くから風魔法で声でも与えてあげれば立派な人形劇になりそうですよね」
前世でも人形劇というのは存在した。それは誰かが上や、舞台の下から糸で操るなりなんなりと。それでも十分に通用したのだ。サイキックのみで自由自在に動かし、ドラゴンスレイヤーの劇のように風魔法で遠くから声を飛ばしてやれば、まるでその人形自身が動いて喋っているように見える。
十分に人形劇として機能しそうだな。
何となくそんな事を呟くと、ドール子爵が勢いよく立ち上がって叫んだ。
「それだ! それこそが私の見たかった人形だけの幸せな世界! アルフリート殿、紙とペンはあるか!」
「ありますよ」
ドール子爵の酷く興奮した表情に驚きながらも、俺はテーブルの引き出しから紙とペンを渡す。
そして、ドール子爵が椅子に座ろうと、
「むう、私に合わん」
そりゃ、そうだ。七歳児用のテーブルとイスだからね。
「すまぬ、アルフリート殿。ちょっと私は談話室で劇の脚本を書いておく。私のことは気にせずに放っておいてくれ」
「わかりました」
俺が返事すると、ドール子爵はあっという間に部屋を出ていく。
過去にリナリアさんやユリーナさん、メルナ伯爵と何人かの貴族が泊りにくることはあったが、この人が一番自由な気がするな。
◆
ドール子爵がいなくなると、俺は運び込まれた人形の整理を行う。
さすがに馬車一台分の人形を俺の部屋だけに入れるのは無理だ。不可能ではないが、俺の部屋の居住空間がなくなってしまう。
そんな訳でいくつかの袋以外は、片っ端から空き部屋へと移動させることになった。
「ねえ、さっきから騒がしかったけどドール子爵――うわっ、何これ」
俺が二階にある空き部屋で人形の整理をしていると、エリノラ姉さんが入ってきて驚きの表情を浮かべた。
エリノラ姉さんが驚くのも無理はない。空き部屋になっていた部屋は、今となっては一面人形に覆いつくされるメルヘン空間になっていたのだから。ここにピンクのカーペットやベッドなどの家具があれば、さらに完璧だっただろう。
「ドール子爵からのお土産だよ」
「この人形全部?」
「……うん」
人形を貰えるかもと思っていたが、まさか部屋を埋め尽くすほどとは俺も思わなかったよ。
「俺だけが持つには多すぎるし、エリノラ姉さんもいくつか持ってく?」
「……そう、じゃあ適当に貰うわ」
冗談半分に言ってみたのだが、意外なことにエリノラ姉さんがそんな事を言う。
「ええ?」
「何よ、その反応は? 人形を持って行っていいんでしょ?」
「はい、問題ないです」
あの女子らしさの欠片もないエリノラ姉さんが、人形を持つだなんて一体どうしたというのか?
驚愕な眼差しで見つめていると、エリノラ姉さんが人形の山からナイトとエリザベスの色違いを手に取る。
ほほう、これは俺が人形を動かしてみせたことで改めて人形の良さに気付いたな?
「言っとくけど魔法を使わないと人形は動かないからね?」
「っ! わかってるわよ、それくらい。この二つ、貰っていくから」
考えを当てられたことが恥ずかしかったのか、エリノラ姉さんが顔を赤くしながら人形を持って部屋を出ていった。
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