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転生して田舎でスローライフをおくりたい  作者: 錬金王


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村の広場へ

 

「くっ、まさか子供達だけでなくメイドにも負けるとは……」


「ふふん、こちとら田舎の村娘。水切りぐらいちゃんと嗜んでいますよ」


 子供達と別れて橋の上を歩いていると、エリックが悔しそうに呻き、ミーナが得意そうに言う。


 あの後、子供達に混じって皆で水切りをしたが、やはり一番下手だったのはエリックで、ミーナや子供にも完敗していた。


 とはいえ、ミーナはコリアット村で育った村娘だ。当然川なんかで水切りをして遊んだこともあるだろうし、やったことがないエリックと腕前が違うのは当たり前だろう。


「ちなみにここからどうするの? トルネルの店には少し時間を空けてから来てほしいって言われたけど」


 そう、クイナとトルネルの店に行くと言ったら、クイナが大慌てでトルネルを引っ張って帰ったのだ。


 貴族である俺達に失礼のないように店を掃除したり、整理したいと言っていた。まあ、突然押しかけたら驚かれるだろうし、小一時間くらいは空けてあげたいところだ。


「この橋を渡った先に小さな広場があって、村人が食料などを交換したりしている。そこを覗いてみるか? 場合によっては海鮮料理が食べられるかもしれんぞ」


「へー、やっぱりここでも村人同士でそういう取引をしてるんだ」


 コリアット村にも同じように村の広場で食材などを交換したりと賑わっている。


 まあ、さすがに漁が盛んであっても野菜は必要だし、麦だって、服だって、靴だって欲しい。一人だけで全てを揃えるには限界があるので、皆がそれぞれの役割を果たして、生活を豊かにしているということだろ

う。


「アルフリート様! ぜひ、その広場に行きましょう!」


 改めてそう考えていると、ミーナが口の端から涎を垂らしながら言ってくる。


 もはや、料理目当てなのは明らかだろう。


 とはいえ、俺も村人ならではの料理や、特産物に興味はある。


「じゃあ、そこに行こうか」


「わかった」


 俺達は大きな橋から見える景色を堪能しながら、広場のある向こう岸まで歩いた。




 ◆



 橋を渡り切ってしばらく陸地を進むと、程なくして密集した家々が見えてきて徐々に村人が増えてきた。


 どうやらこちらの方に村人が集中して住んでいるようだ。


 白い家の前では村人が魚の鱗を落としていたり、保存食として日光に当てていたり、海藻を吊るしたりと海の村らしい生活をしていた。


 海藻を持った子供が走り回ってはぶつけ合って、母親に怒られているところもある。


 うちに劣らず何とも平和な風景だな。


「ここだな」


 村人達の生活を眺めながらエリックに付いて歩いていると、程なくして広場にたどり着いた。


 そこでは様々な者が自慢の物を並べて、物々交換または貨幣で取引をしていた。


 麻の布の上に、麦などの穀物や野菜を並べていたり、キノコや山菜を置いているもの。魔石の欠片を紐で繋げた装飾品や、衣類、靴などと様々。


「あれ? 思ったよりも魚が売られていませんね」


「魚は鮮度が命だからな。野菜のように外に出して売ることは難しい」


 冷蔵施設が充実していないこの世界では、そうなってしまうだろうな。氷魔法が使える人がいれば別だろうけど稀少らしいし。


「え! じゃあ、ここでは海鮮料理は食べられないってことですか!?」


「いや、漁が終わってすぐに運び込まれたものはここで取引される。それは朝早くが主で、それ以降となるとタイミング次第だな」


「そ、そんなぁ……」


「だからといって海鮮料理がないわけではない。あそこの屋台のような海鮮スープや十分に長持ちするように処理された炒め物などは食える」


 エリックが指をさす方を見ると、そちらでは大きな鍋に火がかけられており、スープらしきものを混ぜ込んでいる模様。


 その隣で大きなフライパンを使って、何かを炒めているようだった。


 人混みが多いせいか、近くまで行ってみないと具体的なものは見えないが海鮮風味の香りが漂ってきて胃袋を刺激してくる。


「はわわわ、何だか美味しそうな匂いです!」


「村人が作った海鮮スープか。いいね」


 数時間前にがっつりと軽食を食べた俺だが、美味しそうな海鮮スープの香りのせいで小腹が空いた。


「それにしても今日はやけに混んでいるな?」


 俺達が漂う香りに喜んでいると、エリックが首を傾げる。


「うん? お昼をちょっと過ぎたし、ちょうどお腹が空く頃なんじゃないの?」


「頻繁に来ているわけではないが、ここの屋台があれほど混んでいた記憶はなかった気がするが……まあいいか。行ってみるか」


 エリックの意見に賛成だったので、俺とミーナは文句なしでついて行く。


 海鮮スープの屋台に向かうと、最後尾に加わる。


「あっ、エリック様。よければ先にどうぞ」


 すると、前に並んでいる村人がエリックに気付いたのか、俺達に譲ろうとしてくる。


「いや、気にしなくていい。俺達もここで待つ」


「いえいえ、今日は外から貴族様も来ているみたいですし、どうぞお先に」


 俺とミーナもエリックと同意見なのだが、村人はどうも気になってしまうらしく無理矢理のように場所を空けた。


「あ、どうぞ」


「俺達は後でいいんで」


 一人の村人が譲ると連鎖するように他の村人も順番を譲り、人混みが割れるように場所が開く。気が付けば屋台の店主と俺達の目が合ってしまうくらい、視界が良好になった。


 貴族が並べば、村人がすんなりと列を譲る。そんな如何にも貴族らしい出来事に、俺は少し感激していた。


 いや、実際に毎回これをやられるとこちらとしても疲れてしまうのだが、こういう貴族らしい状況に憧れがないとは言えなかったし。


「ミーナ、俺はちょっと感動してる。この如何にも貴族らしい状況に」


「ま、まあ、アルフリート様はコリアット村に良くも悪くも馴染んでいますからね」


 俺が感嘆の声を上げると、ミーナが苦笑いしながら答える。


 コリアット村ではこんなことは起こらない。むしろ、さり気なく俺が列を抜かそうものならすぐに村人は怒るだろうな。


「エリック様、どうぞ。来客された貴族様を待たせる訳にもいきませんので」


「……すまんな」


 店主がそう声をかけてきたので、エリックと俺達は空気を読んで先頭にいかせてもらう。


 ここまでされては遠慮する方が失礼だ。ここは村人からの俺達へのもてなしとでも思っておこう。


 屋台にある海鮮スープを覗き込むとエビ、魚の白身、ニンジン、白菜、貝、海藻といった具が入っていた。味付けは魚の出汁をベースにしているのだろう。大きな魚の骨らしきものが沈んでいるのが見えたし。


 これはとても美味しそうだな。屋敷に魚介類を持って帰って味噌で煮込んだら、あおさ汁や、あら汁なんかも作れそうだなー。


「海鮮スープを三つくれ」


「はいよ」


 エリックがそう注文すると、隣に屋台の店主が声をかけてくる。


「エリック様、こっちもどうですかい? スモールガニの甘辛炒めですよ」


 店主が差し出してきた丸い木皿には、指でつまめるサイズの小さな赤いカニが入っていた。ゴマや甘辛い

ソースで炒めたものらしい。


 色鮮やかな赤と、甘辛いソースが食欲をそそる。


「ありがとう。こっちも貰おう」


 エリックは三つの木皿を受け取ると、俺とミーナに手渡す。


 それから店主に銅貨を三枚渡した。


「あっ、お金ならいいですよ」


「いや、金はちゃんと払う」


 エリックのその言葉から固い意思を感じたのか、店主はにっこりと「お買い上げありがとうございます」と言った。


「ちゃんとお金を払うなんて偉いですね」


「貴族と村人は互いに支え合っているからな。こういうところはしっかりしないといけない」


 ミーナに褒められて嬉しいのか、ちょっとドヤ顔で語るエリック。


 まあ、貴族だからといって毎回無料でたかられても村人は困るしな。俺も村で買う時はちゃんとお金払っているし。


「はい、海鮮スープです!」


 俺達がスモールガニの清算を終わらせている間に、海鮮スープの準備も終わったようだ。


「お熱いですけど大丈夫ですかい?」


「そうだな。一旦スープを置いて――」


 さすがに熱い汁物を持ちながらの清算は難しそうなので、俺は無魔法のサイキックで皿を持ち上げてあげ

る。


「うわっ! 皿が浮いた!?」


「本当だ。どうしてだ?」


 突然皿が浮いたことに驚いたのか店主が大声を上げ、周りにいる村人もざわつく。


「魔法で浮かしているだけだから気にしないで」


「お、おお、貴族様が魔法で浮かしているのか。すげえな」


 俺が魔法だと説明すると店主や村人が安心し、感嘆の声を漏らす。


「……そろそろ金を渡してもいいか?」


「あっ、へい! ありがとうございます!」


 エリックの声で我に返った店主は、慌てて銅貨を受け取って頭を下げた。


「ところで、店主。今日はやけに混雑していないか?」


「ルーナ様がお連れになっている貴族の令嬢を見るがために、皆集まっているようですね。ほら、あそこで座っている方ですね」


 ルーナさんが連れている貴族の令嬢? うちにはそんな呼び名をされる人は誰もいないのだが……。


 訝しみながら指をさす方を見ると、ベンチの上でルーナさんとエリノラ姉さんが座っていた。


 いつものエリノラ姉さんは胡坐をかいたり、足を大きく広げていたり、寝転がったりしているのだが、公共の場所なせいかお淑やかに微笑をたたえながら足を綺麗にそろえて座っていた。


「エリック、どこか空いているところを探そう」


「お、おお」


 あんな目立つような場所でご飯なんて食べられるか。


 俺はミーナとエリックを連れて他の場所へと移動しようとしたが、トンと誰かの手が肩に乗せられた。


 俺は無視して移動しようとするが、肩に置いてある手から力がかけられて全く動くことができない。


 この優しくも強力な力は……。


 恐る恐る振り返ると、エリノラ姉さんが綺麗な笑みを浮かべ、


「アル、こっちで食べましょう」


 サイキックで皿を浮かしているのが仇になったのか、俺はエリノラ姉さんにズルズルと連行された。




新作始めました。

『転生したら宿屋の息子だった。田舎の街でのんびりスローライフをおくろう』

https://ncode.syosetu.com/n3942ew/


スローライフ物語です。よろしければ、こちらもチェックしてみてくださいね。

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こちら新作になります。よろしければ下記タイトルからどうぞ↓

『異世界ではじめるキャンピングカー生活~固有スキル【車両召喚】は有用でした~』

― 新着の感想 ―
姉からは逃げられない、、、
[一言] お話自体は結構面白くて好きなんだけど 誤字脱字とか言い回しとか単語の誤用とか てにをはが間違ってたりとか、ちっちゃいポイントが気になってしまう…w
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