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転生して田舎でスローライフをおくりたい  作者: 錬金王


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おっさんが言われるような言葉を言われる

コミック二巻は25日。小説五巻は26日発売です!

 

「次はルーナとアルフリート君だ!」


 エリックとの戦いを終え、砂地に腰を下ろし休憩しているとエーガルさんが声を張り上げた。


 やれやれもう出番なのか。


 強者との打ち合いに億劫に思っていると、エリックがにやつきながらやってくる。


「おい、敗者。次は姉上とだぞ」


「うるさい。わかってるよ」


 さっき俺との勝負に勝ってから、呼び方はずっとこんな感じだ。


 稽古の勝ち負けにはこだわらない性分だが、やはりエリックにこうして罵られるとムカつく。


 これだったらトングで勝った後、もっと弄っておけばよかったな。


「さて、貴様は何合持つかな?」


 俺が木剣を支えにしながら立ち上がると、エリックが挑発するように言ってくる。


「少なくともエリックみたいに一合で負けたりはしないと思う」


「あ、あれはだな……っ!」


「あれは何? もしかして油断したとか?」


「うっ!」


 返答に詰まるってことは、心のどこかでエリノラ姉さんに対する見くびりがあったのだろう。


「事前に強いって言われてる相手なのに見くびるなんてエリックはバカだなぁ」


「う、うるさい! さっさと行け! 貴様ななんて姉上に一合で負けてしまえばいいのだ!」


 俺があからさまにバカにしたように言うと、エリックが顔を赤くする。


 ははは、エリックの憤慨する姿を見ると少し溜飲が下がったな。


「アル、勝つのは無理だと思うけど頑張りなさいよ」


 どこか晴々とした気持ちで歩くと、エリノラ姉さんが応援なのかわからない言葉をかけてくる。


 エリックよりも強いルーナさんに勝てないことはわかっているよ? だけど、応援するならわかっていてもそこは省いて欲しいな。


 ルーナさんは、エリノラ姉さんよりも強くないことは確かだが、俺よりも遥かに強いことに間違いはない。


 所定の位置に向かう足取りが重く感じてしまうのは、ここが砂地という要因以外にあるだろうな。


 所定の位置へとたどり着くと、ルーナさんが真剣な表情で既に木剣を構えていた。


 先程の戦いを見て、このメンバーの中で俺が一番弱いことはわかっているはずなのに、少しも舐めた様子を見せないな。


「どうかお手柔らかにお願いします」


「……ん、いつでもいい。けど手を抜いたり――っ!?」


 そうルーナさんが頷いた瞬間、俺は一気に距離を詰めて振り下ろしをかました。


 できる限り最小限の動きで放ったが、ルーナさんは遅れながらも反応して防いだ。


 ちっ……できればこの一撃で決めたかったのに!


「……ズルい」


「えっ? でもルーナさんがいつでもいいって言ったから」


「…………なるほど。確かに言った」


 俺がそう言うとルーナさんは納得した表情を浮かべる。


 口うるさいエリックと違って、ルーナさんはこういうところについて寛容なようだ。


「いや、確かにそうだが……」


 でも、審判役のエーガルさんは少し微妙そうだ。


「……アルの場合、剣よりも性根を叩き直した方がいいんじゃないかしら?」


「いくら実力の差を埋めるためとはいえ、ちょっと酷いかもね」


 外野から聞こえる言葉が怖い。


 仕方がないんだ。剣が不得意な俺からすれば、こうやって実力差を埋めて勝つしかないのだから。まあ、剣の努力を大して本気でやったこともないから当然っちゃ当然だけど。


 木剣で防御するルーナさんをそのまま力で押し込もうとするが叶わず、単純な力で振り払われる。


 この小さな身体が今は憎らしいな。


「……アル君の好きにさせると手痛い攻撃を受ける。だから、こっちから仕掛ける」


 俺が砂地でたたらを踏みながら後退していると、ルーナさんが地を蹴って距離を詰めてきた。


 凸凹で足が取られやすい砂地であるが、そんなことを感じさせない速度。


 振り回しやすいように調整された短めの木剣が俺へと襲いかかる。


 恐らく、ルーナさんの初手の攻撃を受けることは間違いだ。一度受けて立ち止まると、シルヴィオ兄さんの時のように縦横無尽に動き回られて連撃を受ける可能性がある。


 ここは打ち合ってはすぐに離れ、相手が自由に動くコースを遮ってじっくりやるのがいいだろう。


 ルーナさんの斜めからの振り下ろしを、身体を逸らすことで躱す。


 すると、空を切った木剣がくるりと周り、鎌のような鋭い突きが放たれる。


 初手が本気の一撃でないと読んでいた俺は、それをバックステップで躱す。


 ルーナさんがまた詰めてくるので威嚇程度の薙ぎ払いをすると、ルーナさんは間合いを測り損ねて立ち止まった。


 そこでこちらから斬りかかっては離れ。とにかく隙を作らないように意識し、ルーナさんからの攻撃は先程と同じように躱していく。


「……むっ、やりにくい」


 単発同士の攻撃を打ち合いをしていると、ルーナさんの口からぼそりとそんな声が聞こえる。


 相手の嫌なことをするのはすべての勝負事において有効だ。


 今の俺は上手く戦えているといっていいだろう。だけども、これは時間稼ぎというか、生き残るためだけの戦術であって勝つことはできない。


 相手には有効的な攻撃があるが、こちらにはそれが一切ない。光明があるとすれば騙し討ち程度のものか。


 今はこの戦術が通用しているが、ルーナさんも適応してくるのも時間の問題。


 このままじゃ絶対に負ける。


「……押し切る」


 ルーナさんに連撃されないように、くるりくるりと場所を入れ替わりながら打ち合っていると不意にそんな呟きが聞こえた。


 するとルーナさんの動きが急速に加速し、俺にぶつからんばかりの勢いで迫ってくる。


 最初の振り下ろしをできるだけ躱し、間合いを詰めさせないために切り払いを放つ。


 しかし、ルーナさんはそれを限界まで見極め、柔軟な身体をくねらせてくぐってきた。


 ひいっ! この人は蛇かよ!


 心の中で悲鳴を上げながら勘を頼りに頭を下げる。すると、俺の頭上をブオンと何かが通り過ぎる音がした。


 多分、今ルーナさんは俺の頭上にいる。


 そんな予想を頼りに持っている木剣を突き上げると、トンと背中に手が置かれた。


 そしてルーナさんは、俺の突き上げのために立ち上がるエネルギーを利用して華麗に前転。


 渾身の突き上げが見事に躱される。


 ヤバいと思った瞬間には、ルーナさんは既に着地しており、こちらへと斬りかかってきていた。


「参った!」


「そこまでだ!」


 降参の声と審判の声が同時に上がる。


 すると、こちらに迫っていた振り下ろしはピタリと肩の近くで止まっていた。


 あぶねえ。あんな勢いで打ち付けられたら革鎧をしているとはいえ、かなりの痛さだっただろうな。


 数えきれない程に稽古で寸止めを受けているが、いまいち俺はこれを信用できない。


 長年エリノラ姉さんに寸止めといいながら、密かに当てられてきたせいだろうか。


 勿論コツンとからかう程度であるが、そのせいで寸止めに対する信用を失墜しているのだ。


 とにかく、今回は怪我をすることもなく終えることができて良かった。


 安堵の息を吐きながら、身体についた砂を払っているとルーナさんがポツリと言う。


「……エリノラがアル君を勿体ないってボヤく気持ちが少しわかった」


「勿体ないとは?」


 たまにエリノラ姉さんにそう言われるが、具体的に何が勿体ないとは言われた記憶がないな。


「……アル君の頭脳による戦略と間合いを測る能力がズバ抜けている。だけど、肝心の剣技の基本がお粗末。体力も少ないから瞬間的に発揮できる力も限られている」


「つまり?」


「……動きに対して身体がついていっていない」


 きっぱりと言うルーナさん。


 肉体年齢七歳にしてそのような言葉を言われるとは思いもしなかった。


「…………そうですか」


 俺の精神年齢を考えれば、その台詞は的確なのだけれど肉体年齢七歳と元気真っ盛りに言われると複雑だな。





コミカライズ14話は、『このマンガがすごい』Webにて28日に更新されるようです。

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こちら新作になります。よろしければ下記タイトルからどうぞ↓

『異世界ではじめるキャンピングカー生活~固有スキル【車両召喚】は有用でした~』

― 新着の感想 ―
性根は叩き直したほうがいいと思うけど、もはや精神年齢が幼稚なおっさんというどうしようもない性格なので修正不可と思われる
エリノラが本当になんの意味もなく当てるとは思えないのよな。 痛くなければ覚えませぬじゃないけど、ある程度負けを体に意識をさせないといけないくらいやる気がなかったとか。 あとは勝負に勝つ気がないから、テ…
[一言] 寸止めの約束で当ててる姉はクソ
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