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転生して田舎でスローライフをおくりたい  作者: 錬金王


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転移魔法の欠点?

 

「……王都はやっぱり賑やかだな」


 以前エリック共に降り立った建物の上に転移した俺は、そこから王都の街並みを見渡す。


 見渡す視界の中には大きな建物が立ち並び、通りには多種多様な人々が行き交う。


 コリアット村とは違って、草原や畑などというものは一切見当たらない。まごうことなき異世界の都会である。


「やっぱりミスフィリト城はデカいな」


 他の建物より頭何十個分も突き抜けている荘厳なお城。


 それは見る者を圧倒し、いつ見ても綺麗で大きいと息を唸らせるほどであった。


 あれだけ大きな建物があるだけで国の威容は誇れるというものだな。


 でも、あれだけ大きいと掃除も大変そうだな。最上階の壁とかどうやって掃除しているのだろう。


 なんて呑気なことを思いつつ、俺はボーっとミスフィリト城を眺め続ける。


「このまま建物の上でボーっと風景を眺めるのもいいけど、せっかく久し振りに王都に来たしな。ちょっとは散策してみようかな」


 せっかく王都に来たのだ。ここでしか買えない物などを買っておくのがいいだろう。


 前にやってきたのが春頃。季節が変わって屋台にある料理や市場に売ってある食材が変わっているかもしれない。


 久し振りの王都に胸を躍らせながら、俺は無魔法のシールドを階段代わりにして裏路地へと降りた。


 目立たないように裏路地へと降りた俺は、店や屋台が立ち並ぶメインストリートを目指す。


 路地から普通の通りへと出るだけで一気に人の数が増えだした。


 最近はコリアット村でまったりとしていたせいか、これだけ人が多い場所に出ると驚いてしまうな。


 前世ではもっと比べ物にならない人混みの中を歩いていたのだが、慣れというのは面白いものである。


 人々の会話や雑踏に耳を傾けながら俺は通りを歩いていく。


 ここら辺は劇場や高級店が多い北西部なので、行き交う人々は裕福そうな家族や街人などが多い。立ち並ぶ店員もそれを理解しているのか、実に平和的な客引きが多い。


 メインストリートや市場の方に行けば声の嵐だからな。大根にソックスを穿かせるような変な店主もいないし。


 まあ、俺が今から向かう場所はそういう場所なんだけどね。


 立ち並ぶ店を確認しながら通りを歩いていると、劇場前へとたどり着いた。


 綺麗な石畳が敷き詰められた円形の広場。その傍には一際立派な劇場がある。


 ここに来るのはエリックとドラゴンスレイヤーの劇を観て以来である。実に懐かしい。


 俺の隣にシルヴィオ兄さんやエリノラ姉さんがいるようならば、もう一度ドラゴンスレイヤーの劇を観に行っていただろう。


 しかし、今は一人だ。違う劇を一人で観てみるのも面白いかもしれないが、何となくそれは寂しい。


 また今度誰かと来た時に観にこよう。


 そう思って、俺は広場から伸びるメインストリートへと移動して中央広場へと向かう。


 東方面に向かって進んでいると、銀の鎧に身を包んだ騎士達が歩いてきた。鎧が太陽の光に反射して鈍い光を放つ。


 腰には綺麗な剣を佩いており、手には槍や盾などを握っている人もいる。


 王都で騎士が二人くらい並んで巡回しているのは何度も見たことがあるが、五人以上並んで歩いているのは初めて見たな。


 道を歩く王都の市民は、騎士達の物々しい空気を感じたのか自然と道を空ける。俺もそれにならうように通りの端へと寄った。


 すると、騎士達はガッチャガッチャと鎧の音を鳴らしながら傍を通る。


「茶髪の少年を探せってどういうことだ? どういう理由でそのような少年を探すのだ? 大体、少年といっても何歳くらいなんだ?」


「確か十歳とかそれぐらいじゃなかったか?」


「十歳くらいの茶髪の少年なら王都に腐るほどいるぞ。もう少しわかりやすい特徴はないのか?」


「強いて言うならば目が死んでいてパッとしない顔立ちだとか……」


「目が死んでいる? そんな子供がいるのか?」


「俺にもよくわからん。ただ、これはレイラ様のご命令らしいぞ?」


「クーデリア様ならともかく、レイラ様が無茶な命令を我々にするとは思えないが……」


「まあ、とにかくこの辺りを探してみるしかないだろう。王女様からのご命令だし、見つからなくても探したという事実は必要だ」


「……そうだな」


 騎士達はそんな会話をすると、劇場の方へと去っていく。


 目が死んでいる茶髪の少年? 


 認めたくはないが俺は目が死んでいるとよく言われる。それに髪の色だって茶色だ。歳は少し離れているが十歳間近だと言ってもいいだろう。


 ……もしかして、俺じゃないよな?


 でも俺ってば騎士の人に捜索されるような事は何もしていないと思うし。いや、転移で不法入国とかしちゃっているけど、俺だと特定するのは不可能だろう。


 俺は何も悪いことはしていないはずだ。たまたま俺と似た特徴を持つ少年が何か悪さでもしたのであろうな。


 騎士がうろつく劇場方面は不穏な空気を感じるので近付かないでおこう。何事も面倒事には関わらないのが一番だしな。




 ◆




 劇場から中央メインストリートの方へと移動した俺は、片っ端から立ち並ぶ屋台や店を覗いていく。


 やはり俺が思っていた通り、季節が移り変わるにつれて食材の方も変わっていた。


 俺は暇そうな店主に声をかけては見知らぬ食材の知識を得て、買い上げては空間魔法で収納だ。他にもリバーシや玩具で使い果たした木材や鉄屑、糸や布なども同様だ。


 それらの補充が終わると、俺は休憩がてらにジュースの屋台へと赴く。以前のラーちゃんやミーナと飲んだジュースの屋台だ。


 ジュースのメニューは、季節が変わって旬が過ぎたからかほとんどが知らないものに変わっていた。


 暑い夏だからだろう。爽やかな後味のいい柑橘類が多いようだ。


 俺はブレスジュースという爽やかさが売りのジュースを一つ頼んでみる。


 鮮やかな緑色のジュースを飲んでみると、微かな甘さとミントのようなツンと突き抜けるような味がした。


 思わず息を吐いてみると、まさにミントを食べたかのようなスーッとした息が出た。


「なるほど、だからブレスジュースか」


 爽やかなフルーツジュースを期待していおたのだが、これはこれで悪くない。


 感心しながらクピクピと飲んでいると、フルーツジュースを売っていたお姉さんが声をかけてきた。


「おお、顔色一つ変えずにそれを飲めるとは大した少年だね。大人でも飲んだら顔を歪める奴も多いのに」


 俺が普通に飲んでいるのが面白いのか、お姉さんはどこか面白そうにこちらを見ていた。


「甘みもあるし美味しいですよ。息がスーッとするお陰か涼しく感じられます」


「おお、これの良さがわかる奴に会えて嬉しいね。最近ではこのジュースを罰ゲーム扱いする無礼な奴もいるからね」


 前世でミント系のものを嗜んでいた俺からすれば、これくらいの癖は優しいものだ。


 ただ、あまり馴染みのない人からすれば厳しいだろうな。


 罰ゲームにしたくなる理由もわからなくない。


「その人達はこれの美味しさがわかってないんですね」


「ああ、まったくだよ。もっと飲みやすいように工夫してやらないとね」


 お姉さんはそう言うと、次のお客の対応へと移っていく。


 ここで屋台をやって生活しているお陰か商魂逞しいな。あのお姉さんの向上心が続く限り、あのジュース屋台はずっと残り続けるだろう。


 今は不人気なブレスジュースだが、いつかは客がこぞって求めてくる人気商品になるかもしれないな。


 何て思いながら俺は道の端にある段差へと腰かける。


 すると、反対側の方で子供達が興味深い遊びをしていた。


「いっけー! 俺のコマ! 弾き飛ばせ!」


「負けるな僕のコマ!」


「あ、あれ? 私のコマが回らない? どうして?」


 子供達がやっているのは俺が考案し、ラザレスお爺ちゃんが商品化したコマだ。


 俺の領地についこの間試作品が届いたばかりなのだが、もうこちらでは販売が始まっているらしい。


 まあ、試作品に問題はなかったし特に文句もない。


 俺は別に玩具を熱心に広めて売るつもりもないからな。


 自分が好きに使えて、将来ダラダラしていても文句を言われない程度の額が入れば十分だ。それ以上など望みはしない。


 面倒臭い取引や販売、生産などはトリーとお爺ちゃんの領域だしな。極力、首は突っ込まないつもりだ。


 王都に来たのだからラザレス爺ちゃんの家に行きたいけど、どうやって来たって言われそうだな。というか絶対に言われる。残念だが、顔を出すのはまた今度にしよう。


「ねえ、どうやったらコマを回せるの?」


「もうちょっと綺麗に紐を巻けよな。そんなぐちゃぐちゃな状態じゃ回らねえよ」


「じゃあ、どう巻くの?」


「ちょっと貸せよ。俺が巻いてやる」


 自分が考えた玩具で見知らぬ子供達が遊んでいるのを見ると、何だか不思議な気分になるな。


 それ、俺が考えたんだよ? とか言ったらどうなるか。多分嘘つくなとか罵られるだろうな。


 まあ、コマもリバーシも前世の玩具を再現したに過ぎないから、そこまで胸を張って誇れるものでもないけどね。


 ブレスジュースを飲みながら、俺は楽しそうにコマで遊ぶ子供達を眺める。


「んで、これをこう水平に構えて投げるんだ。やってみろ」


 少年がコマに紐を巻いてやり、投げ方を説明すると少女がこくりと頷いて受け取る。


 少女は、少年から教わった事を反芻するように腕を動かす。


 動きを確かめると、少女は意を決するような表情でコマを勢いよく投げた。


 紐の回転エネルギーが伝わり、紐から駒が開放されて地面へと落ちる。


「あっ! 回った! 私のコマが回ったよ! ありがとう!」


「お、おう、よかったじゃねえか」


 無邪気な笑顔を浮かべて礼を言う少女と、照れて思わず頭を掻く少年。


 何だか目の前で青春のような展開が起きている気がする。


 おかしいな。俺もあの少年達と同じ歳くらいのはずなのに、全然あんな風にはならないや。


 俺がやったコマの面子と言えば、悪友のトールとアスモ。それにおっさん冒険者のルンバとゲイツだ。


 何なのだろうな、この差は……。


 目の前の光景を見ているのが辛くなって、俺は段差から立ち上がって離れる。


「ジュース! ジュース!」


 そして当てもなく、ただただ歩いていると前方からどこか聞き覚えのある幼ない声が聞こえてきた。


 金色と茶色の中間のような髪をツインテールにしており、赤いリボンで括っている。


 純白の半袖ワンピースに身を包んだ少女は、上機嫌にスキップをしてやってきた。


 間違いない。ラーちゃんだ。


 俺が確信した瞬間、ラーちゃんもこちらの存在に気付いたのか目を丸くする。


「……あれ? アルだ!?」


 こちらを指さして驚きの声を上げるラーちゃん。


 マズい。ラーちゃんがいるということはシェルカも一緒にいる可能性が非常に高い。


 あいつにここにいることがバレると、色々な意味で厄介なことになりそうだ。


 今の視界にはシェルカもメイドもいない。逃げるなら今だ。


 ラーちゃんには可哀想だが、俺はかけられた声を無視して横道に逃げ込む。


「あっ! 何で逃げるの!」


 ラーちゃんの怒ったような声を背中に聞きながら、俺は向かい側の建物の屋根に転移する。


 ふわりと身体の浮くような感覚がし、視界が即座に切り替わる。


 俺が屋根の上で身を隠すように体勢を低くするのと同時に、ラーちゃんは俺が逃げ込んだ横道を覗き込んだ。


「アル―! ……あれ? いない?」


「どうしましたラーナ様!? 急に走り出しては危ないですよ!?」


 ラーちゃんが不思議そうに横道を眺めること数秒。後ろから若いメイドさんが慌てて駆け寄ってきた。


 どうやらブラムをお米様抱っこしたメイドさんではないようだ。


 その事に少しホッとする。


「ラーナ様、横道なんて覗いてどうしたんです?」


「ここにアルがいたの」


「アル? もしかしてラーナ様が普段から仰っているアルフリート様ですか?」


「う? うん、多分」


 いやいや、ラーちゃん。そこはしっかりと頷いておこうよ。俺の名前はアルフリートだから。


 あだ名でしか呼んでないせいか本名がうろ覚えなのだろうな。


「スロウレット家の方が王都にいるという情報は聞いていませんよ? 長女であるエリノラ様は、少し前に領地に戻ったようですし。あの一家が王都に来るのは相当珍しいので王都にきたらすぐに情報が回りますから」


 俺の家族はレアモンスターか。


 まあ、ドラゴンスレイヤーという英雄がいるんだしな。情報が回るのも無理はないかもしれない。


「でも、アルを見たんだもん!」


「は、はぁ。でも、ここにはいないようですよ?」


「だから、おかしい!」


 俺がいないことが大いに不満なのか、ラーちゃんが頬を膨らませて言う。それに対してメイドさんは心底困った様子。


 だけど、俺が顔を出すわけにもいかないな。


 しばらくはラーちゃんが俺を探し、メイドさんも渋々ながらそれに付き合う。


 しかし、反対側の屋根の上に隠れている俺を見つけることはできない。


「ラーナ様、どうやらいないみたいですよ? この後は屋敷で魔法の稽古もありますし、ジュースを買って戻りましょう」


「……うん」


 俺がいないとわかったのか、ラーちゃんは釈然としないがらも頷く。


「……またアルとエリックと遊びたいなぁ」


 転移魔法というのはあちこちに行けてかなり便利であるが、迂闊に知人と会えないというのがネックだな……。




 転移の欠点を認識した俺は、何ともいえない気持ちでコリアット村へと転移で帰還した。



申し訳ないです。どうやらマンガの更新は3月2日のようです。もう少々お待ちください。

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こちら新作になります。よろしければ下記タイトルからどうぞ↓

『異世界ではじめるキャンピングカー生活~固有スキル【車両召喚】は有用でした~』

― 新着の感想 ―
滅多にいないレアモンスター(笑)
[一言] さっさとレイラ王女に捕まって友達になってこい
[一言] レイラかラーちゃんに捕まってほしかった(笑)
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