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転生して田舎でスローライフをおくりたい  作者: 錬金王


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人形を魔法で歩かせる

 

 ノルド父さんから騎士人形と少女人形を貰った俺は、それを胸に抱えながら屋敷の廊下を歩く。


「おー、やっぱり少女の方もクオリティが高いなー」


 騎士人形より少し高い三頭身。綺麗な長い金髪にクリっとした青い瞳。全身を纏う青いドレスは深窓の令嬢を表しているかのよう。


 前世の西洋人形のようで、とても可愛らしく整った造形をしている。


 ドール子爵ってば、布とかを使ったぬいぐるみだけでなく、ガチの人形も作ることができるのか……。


 手や腕や足、関節部分もしっかりしているし、ある程度動かすこともできる。歪な形をしている場所や不自然なところは一切ない。


 自分でここまでのレベルを作れるって相当な熱意だよな。もうこれは職人レベルだよ。


 その熱い思いを無下にしないように、大切に扱うことにしよう。


 そう思いながら二階へと上がろうとしていると厨房近くにある部屋からミーナの声が聞こえてきた。


「――伯爵のところでは、夜中に廊下を歩いていると足音が聞こえるそうですよ?」


「なによ、怪談話? まあ、聞いてあげるけど……」


 内容が気になったので部屋を覗いてみると、休憩室ではミーナとメルが椅子に座り込んでお喋りをしていた。


「これは私の友達の友達の従妹の話なんですけどね?」


「……遠いわね」


 確かに。もはや都市伝説とか言われるようなレベルだ。嘘だと確かめようがないような遠さだ。


「その女性は伯爵のメイドとして、誰もが寝静まった夜に見回りをしていたそうです。そして夜がかなりふけた頃、メイドが廊下を歩いていると後ろから足音が聞こえてきたのだとか……」


「うちならエリノラ様が喉渇いて降りてきたり、アルフリート様がいつの間にか冷蔵庫でジュース飲んでいたりするわよね」


「そうそう! 他の皆は私達メイドに呼びかけて持ってくるように頼むんですけど、あの二人は自分で選びたいとか言って降りてくるんですよね! この間、夜の見回りの途中でアルフリート様に声をかけられた時は、心臓が飛び出るかと思いましたよ!」


 メルのぼやいた言葉に、ミーナが激しく同意するように声を上げる。


 いや、普段は空間魔法に冷やした飲み物を入れているんだけどね? バルトロが作ってくれたフルーツジュースとかをふと飲みたくなる時があるんだよ。


 バルトロ特性のフルーツジュースは大量に作ってるわけじゃないし、収納とかしたら全部飲んだって怒られるからね。


「エリノラ様はともかく、アルフリート様の気配を感じたことはないわね」


「もうどうせなら、声をかけないでいて欲しいです。心臓に悪いので……」


 それはそれで酷いと思う。


 二人はひとしきり俺の気配のなさを言い合いうと、怪談話へと話を戻した。


「話が逸れたので戻しますね。足音が聞こえたメイドは思わず後ろを振り返ると、そこには誰もいませんでした。ただ長い廊下と暗闇が広がっているだけです。しかし、闇の奥からは足音が依然として聞こえてきます。まるでメイドに近寄ってくるかのように……」


「……」


 声を低くしながら語りかけるミーナと、腕を組みながらそれに耳を傾けるメル。


 きちんと話を聞いてくれるメルに気を良くしたミーナは、さらにノリノリで語り出す。


「メイドは足音から離れるように歩きます。それでも足音はメイドから離れません。メイドはついに怖くなって振り切るように早歩きで廊下を進みます。すると、何故かメイドの背中がドンドンと重くなっていきました……!」


「……」


「……背中が重くなったせいか、ついに歩くことができなくなったメイドは恐る恐る振り返り……」


「……振り返ってどうなったの?」


「翌朝には綺麗な姿のまま死んでいたメイドが見つかったのだとか……」


 おいちょっと待て。大事なところが抜けてないか?


「ちょっと、肝心なところが抜けてない? 振り返ってどうなったのよ?」


 俺の気持ちを表すように、メルが机をバンと叩いて言う。


「そ、それはアレですよ! メイドは振り返ってしまったことにより幽霊のような存在に魂を抜かれてしまったんですよ!」


 メルの追及に慌てたように答えるミーナ。


 視線が上や斜めに動いたりと、必死に今考えているって感じだ。


「ふーん、でもこの話もただの作り話でしょ? どうせメイドに手を出して奥さんと揉めた伯爵が、メイドを処分するために作った都合のいい話でしょ?」


「ちょっ! 怖いこと言わないで下さいよメルさん! なんか妙に艶かしくて実際にありそうです!」


「あはっ、私の話の方が怖かったかしら?」


「もう! 今日の夜の見回りは私なんですからやめて下さいよ!」


 青ざめた表情をするミーナを見て、カラカラと笑うメル。


 俺はなんとも楽しげなメイドの休憩姿だろうか。邪魔をしては悪いので、見つかる前に自分の部屋に戻ることにしよう。


 俺は休憩室から離れて、二階へと至る階段を上がる。


 ふむ、誰もいない夜の廊下。聞こえてくる足音。背中が重くなる……か。


 前世の怪談話でもよくある類のものだったたし、ゲームでも夜中に人形が動きだすホラーゲームがあったな。


 真夜中に動き出す人形か……。


 サイキックで手足を動かせば人形を歩かせることができるかもな。ちょっと面白そうだし試してみよう。


 俺は沸々と湧き上がってくる好奇心を楽しみながら自分の部屋へと戻る。


 そして、部屋に騎士人形と少女人形を置く。


 まずは騎士人形から動かしてみよう。


 俺は無魔法のサイキックを騎士人形にかける。


 俺の魔力に支配された騎士人形は問題なく空中に浮かび、俺の意図する方向へ浮遊していく。


 おお、騎士の人形が浮いているだけでも可愛いし、見ていて面白いな。


 だが今回の目的は歩かせることにある。


 俺は空中に浮かせた騎士人形を下へとゆっくりと下ろす。


 それから浮遊させずに床に立たせようとすると、すってんころりんと騎士人形が転んだ。


 そんな動作も見ていて可愛いが、もう一度だ。


 しかし、三回、四回と試すも騎士人形は滑るように倒れてしまう。


 ほむ、次は西洋人形を試してみよう。こちらは騎士人形と違ってガチの人形素材なので立たせることはできるのではないだろうか?


 俺は西洋人形にサイキックを使わずに床に立たせる。すると、西洋人形は滑って倒れることもなく、見事な立ち姿を見せてくれた。


 それから次の段階へと向かうために、俺は西洋人形にサイキックをかける。


 魔力で全身を包ませ、その中でも特別に手足に意識を割きながら。


 すると、西洋人形の足がゆっくりと動き前に進み出す。


「おおっ! 人形が動いた!」


 俺が喜びながら次の一歩を進ませてみるが、手足を動かすタイミングが悪かったのか、重心が崩れてしまったのか、西洋人形は前のめりに倒れてしまった。


 可愛らしい西洋人形がお尻を突き出しながら、頭を床につけている姿は滑稽だな。


 可哀想なのできちんと立ち直させてあげよう。


 西洋人形を床に置きなおした俺は、再び騎士人形を床に立たせようとする。


 しかし、その度に騎士人形はつるりと滑るように倒れる。


「んー、やっぱり柔らかい足だと床を滑っちゃうなー」


 仰向けに無様に倒れる騎士人形を見て俺は唸る。


 ド〇えもんみたいに微妙に空中に浮かせて、歩いてるふりでもいいのだが、どうせなら地面を歩かせたいな。


 しかし、そうするためにはこの布と綿でできた騎士人形ではどうしても辛い。


 騎士人形の長所が思わぬところで仇になってしまったな。


 うーん、せめて立つことができれば魔法で何とかできそうなんだけどなー。


 考え込んだ末に、俺は単純な答えに至る。


「……ちょっと中身を解剖して、歩きやすいように足裏に鉄板でも仕込むか」


 本格的な服の裁縫などは意外にもエルナ母さんが上手いが、これくらいの手直しなら俺でもできる。ちょっと開いて縫い直すなんてスリッパを作るよりも簡単だ。


 俺は空間魔法の亜空間から裁縫道具一式を引き出す。


 それから騎士人形の足裏の改造手術へととりかかる。


 足裏に縫われている糸を裁縫道具で解いていく。中を開くとクッション代わりの布が二枚現れたので、それをさらに切り開く。


 すると中から真っ白な綿が出てきたので、俺はそれを手で弄ぶ。


「……柔らかい」


 ドール子爵の領地でとれる綿なのだろう。とても柔らかくて心地よい。それに真っ白で綺麗だ。


 綿の感触に癒された俺は、次に王都で買っておいた小さな鉄板を足裏に入れる。


 色々な用途に使うために、大きなものや屑板のようなものまで貰っておいて良かった。


 鉄板がブレないように設置して綿を敷き詰め直す。


 そして、再び足の裏を縫い直すと、そこには二本の足でしっかりと立ち上がるナイトの姿が。


「立った! 俺のナイトが立った!」


 喜びのあまり俺は興奮した声で叫ぶ。


 騎士だからナイト。安直だけどそれが一番カッコよくて呼びやすいと思うんだ。


 地面にしっかりと立っているナイトは、足裏に鉄板が仕込まれているせいか指で押したくらいでは倒れることはない。かなり重心が安定している。もう滑って転ぶようなナイトはいなくなったんだ。


 多少、角ばった鉄板が目立つところではあるが、これも安定して立ち、歩くことを考えれば目を瞑れる範囲内だな。気にしないでおこう。


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『異世界ではじめるキャンピングカー生活~固有スキル【車両召喚】は有用でした~』

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