カグラを出港
少し短いですが、区切りぎがよいので。
小次郎と楓さんが口喧嘩をするなどと色々とあったが、俺とルンバは春と修一達との別れを惜しむように会話をし続けた。
しかし、お別れの時間というものは早くきてしまうもので、太陽が中天に登った頃に船からトリーが声をかけてきた。
「アルフリート様! そろそろ船に乗るっすよー!」
「うん、わかった!」
俺はトリーに返事をすると、春と修一の方に向き直る。
長いようで短いカグラの生活も終わりだ。
「それじゃあ、俺とルンバはもう帰るね」
「そうか。もっと話したかったけど仕方がないな! でも絶対に次も来るんだぞ?」
最後にまたごねるかなと少し思ったが、春はもう心に区切りをつけていたらしく、実に晴れやかな笑顔だ。
「うん、次もまた来るよ」
「だな!」
「その時はまた声をかけてくれ。何なら城に直接来てくれても構わんぞ?」
俺とルンバが春に返事をすると、修一が少し意地悪な声音で言ってくる。
「城だってよアル。俺はちょっと中に入ってみたいぞ」
「嫌だよ。絶対に堅苦しいおもてなしとかされるって……」
俺も城の内部がどうなっているか興味はあるが、絶対に面倒なことになる。
「俺は女将のいる宿でゆっくり泊まって、春と修一と神社で遊ぶのが一番だよ」
「ガハハ! それもそうだな!」
「次に遊ぶ時も神社だな!」
ルンバの笑い声につられて春も笑い出す。
俺と修一もそんな二人を見て、小さく笑った。
「小次郎も元気でね? 美味しいうな丼を作ってよ?」
「そうだぜ? アルよりも美味いものを作ってくれよ?」
「ああ、任せろ! 俺はカグラで一番のうな丼屋になってみせる!」
俺とルンバが応援すると、小次郎が拳を握り締めて高らかに宣言する。
それを聞いていた楓さんは「フン」と鼻で笑うのみ。
小次郎が忌々しそうに楓さんを睨む。
見送りの時くらい穏やかにしてほしいな。でも、そうなった原因の一因は俺にもあるわけだけど。
「……えっと」
「バカな兄上にはいらない影響を与えましたが、アルフリート殿は春様や修一様の良き友になってくれました。そのことについては感謝します」
良かった。完全に怒っているわけでもないようだ。
「ああ、うん。小次郎については何かごめんね? でも、小次郎がうな丼を作りたいと思っているのは本当だから、いつかもう一度食べてあげてね」
「…………」
俺が最後にそう言うと、楓さんは少しバツが悪そうな表情をする。
今は感情的に無理でも、許せなくても、きっと許せる日がくる。
なんだかんだと仲がいいみたいだし、きっとそんな日が来ると思うんだ。
「スケさんとカクさんも元気でね。小次郎がいなくなったし、より一層精進して立派なお供になるんだよ」
「お前に言われんでもわかってるわ!」
「スケベ先輩は名前が懸かってますしね」
「助兵衛としっかり言え! それに笑うな!」
スケさんが返事をして、カクさんが楽しそうにからかうのを眺めて、俺とルンバは船の方へと歩き出す。
春と修一達も、船の進路にある防波堤に向かって歩き出す。
「ごめんね、待たせちゃって」
「いいっすよ。異国で友達なんて中々できるもんじゃないっすからね」
「友達は大事にしろよ?」
俺とルンバが戻ると、トリーとダグラスが優しく声をかけてくれる。
それから船員が移動して、港から船へとかけていた板を取り外し、碇を上げる。
上を見上げると、すでに船員がシュラウドを上っており準備は万端のようだ。
「よし、野郎共! 帆を張れ!」
「「へい!」」
ダグラスが野太い大きな声を上げると、船員達が返事をして一斉にロープが広がる。
すると、しぼんでいた帆が開放され、潮風を受けてゆっくりと膨らんでいく。
港町エスポートの時よりも風が強いせいか、帆が早く広がった。
「よし、出港だ!」
完全に帆を広げた船は、風の力を受けてゆっくりと港から離れていく。
そして操舵者であるダグラスさんが風と波の流れを捕まえたのか、船はグングンと進んでいく。
「じゃあなー! アルー! また来るんだぞ!」
「いつでも来い!」
防波堤の限界にまで移動した春や修一、小次郎、楓、スケさんカクさんが声を上げながら手を振ってくれる。
「うん、また来るよ!」
「おう! またな!」
俺とルンバはそう短く答えて、春達に手を振り続ける。
やがて船は進んでカグラの街が、港が、春達が遠くになっていく。
そしてついに港にいた春達も見えなくなってしまった。
でも俺とルンバは春達が見えなくなっても、しばらく手を振り続けた。
皆で来る機会はそうそうないけど、俺には空間魔法による転移でいつでも戻ってくることができる。
そうわかってはいたが、何故だが心は少し寂しかった。
そんな俺の様子を察したのか、ルンバが俺の肩をポンと叩いてくれる。
「またいつか行けるさ」
「そうだね。コリアット村に帰ろう」
次でコリアット村に到着します。




