カグラ服選び
すいません、段落落ちてません。後で修正します。
「それじゃあ、早速買いに行こうか」
「ちょっと待ってください」
女性という強力な助っ人を得たので、早速店に向かおうとしたのだがイリヤに止められた。
「どうしたの?」
「アルフリート様って、普段もトリエラ商会でお買い物をしますよね?」
「そうだよ?」
スロウレット家とトリーの家のお付き合いは何十年も続いている。
最近ではトリーの商会も大きくなったので、基本的に買い物といったらトリエラ商会だ。
「自分の屋敷に呼んで、衣服を買ったこともありますか?」
「うん、あるよ?」
「ああ、なるほど! これで正確なサイズのカグラ服が買えるってわけね?」
「そうです!」
感心した様子で言うアリューシャと満足そうに頷くイリヤ。
俺には二人の会話の意味がよくわからないのだが?
「一体どういう事なんだ?」
俺が首を傾げていると、ルンバも疑問に思っていたのか尋ねてくれる。
「トリエラ商会で衣服を買ったことがあるということは、商会の人に聞けばエルナ様やエリノラ様の体型の
数値がわかるってことですよ」
「いちいち客の体型の数値なんて覚えているのか?」
「トリエラ商会はスロウレット家と懇意にしていますからね。恐らく、家族全員の細かい情報は全部覚えているはずですよ」
なるほど、うちはトリーの商会で服をよく買うからな。
当然向こうはこちらのサイズなどを把握して持ってくるわけで、そのデータを教えてもらえばきちんとしたサイズのカグラ服を買えると言う訳か。
俺もエルナ母さんやエリノラ姉さん達の大体の身長や服のサイズはわかるけど、細かい体型の数値については全くわからないからな。
さすがは同じ貴族であるイリヤ。貴族と商会の事をわかっているなぁ。
「よし、じゃあ早速トリーにエルナ達の体型の数値を聞きにいくか!」
「「ダメです!」」
イリヤの説明によって納得したルンバが、早速とばかりに商会の人に聞きに行こうとしたが女性二人に止められた。
さすがに止められた理由くらい鈍い俺にでもわかるぞ。
「女性の体型の数値を聞くなんてデリカシーがないですよ!」
「こういうのは同じ女性である私達だけが知っていい情報なの!」
「お? おお、そうか! わかった!」
気迫の乗ったイリヤとアリューシャに詰められて、思わずルンバが後退しながら頷いた。
さすがのルンバも得体の知れない女性の気迫には、負けてしまうようだ。
「私達が聞いてくるから二人はここで待ってて!」
イリヤとアリューシャは俺達に向けてそう言い放つと、手の空いている商会の人を探しに歩いていった。
「……女って難しいな」
「彼女らは独特のルールと価値観を持っているからね」
◆
イリヤとアリューシャが女性従業員からエルナ母さん達の体型情報を聞き出すと、俺達は早速服屋さんへと
向かった。
「いらっしゃいませ。先日いらしゃってくださったお客様ですね」
「今日はお土産用にカグラ服を買いにきたわ!」
「ありがとうございます」
やってきたのは前回もカグラ服を買った『和服屋 ふじ』というお店である。
俺達全員がここで買ったカグラ服を着ているお陰か、店員さんもどこか嬉しそう。
「それじゃあ、最初は自分達のカグラ服を選びましょう! それが終わったらアルフリート様のご家族のカグラ服ね!」
「わかった」
アリューシャは早く自分達のお買い物をしたいのだろうな。それがわかっていた俺だが、それを突っ込むのも野暮だと思い素直に頷くことにした。
これにはイリヤも苦笑いをしている。
「それではご案内しますね」
俺達は男性チーム、女性チームと別れて店員さんに案内される。
前回と同じように奥へと案内されると、室内には落ち着いた色合いをした男性用カグラ服がたくさん飾られ
ていた。
「俺はもう一つ甚平を買おうかと思っているけど、ルンバはどうする?」
元々俺はお土産を買うついで、自分用の甚平をもう一つ買うつもりだった。だけど、ルンバはどうか知らな
い。
「この甚平ってやつは涼しく動きやすいしな! 俺ももう一つ買うぞ!」
「コリアット村に帰る頃には季節は夏だからねー。甚平があると過ごしやすそうだもんね」
今の季節は七月。海辺にかなり近いカグラであれば潮風もあってまだまだ涼しいものだ。
しかし、二週間かけて旅をしていると、コリアット村に戻った頃には立派な夏に突入しているだろうな。
カッチリとした男性用の着物は俺には似合わないからな。そういうのはノルド父さんやシルヴィオ兄さんが
着ればいい。
「アル、今度は何色の甚平にするんだ?」
「うーん、実はルンバみたいな灰色っぽいやつが欲しいと思っていたんだよねー。落ち着いている色合いだし」
「おー! 奇遇だな! 俺はアルみたいな紺色のやつが欲しいと思っていたところだ!」
俺の答えを聞くなり、ルンバがどこか嬉しそうに言う。
何だ、互いに甚平の色を羨んでいたのか。
俺とルンバはお互いの服と顔を見て笑い合う。
「それでは、それぞれのサイズに合った甚平をお持ちしますね」
俺達の会話を聞いていたのか、店員さんがにっこりと笑いながら準備する。
欲しい物さえ、決まれば俺達男性の買い物などは早いもの。
お互いの色をトレードした甚平の試着を素早く済ませると買い物は終了だ。
現在俺達は畳スペースに座り込みながらまったりとカグラ服を眺めている。
「ルンバはカッチリとした着物とかに興味はないの?」
「……着るのが面倒くさそうだ」
興味本位で尋ねてみると、ルンバが顔をしかめながら答えた。
そこら辺の思考は大分俺と似ているな。
そうやってしばらく雑談をしながら座ることしばらく。店員さんが俺達を気遣ってかお茶を持ってきてくれた。
「お茶です」
「あいつらの方はまだ終わらないのか?」
「どの色にするか迷っておられるようです」
ルンバの問いに、店員さんが苦笑しながら答える。
お茶を持ってきた事といい、アリューシャとイリヤの服選びにはまだまだ時間がかかりそうだ。
「イリヤ様が暇になったらノルド様やシルヴィオ様のカグラ服を選んでおいてくださいとおしゃっていましたが……どうされますか?」
俺達がお茶を飲みながら呆然としていると、店員さんがおずおずと尋ねてくる。
「じゃあ、俺達でノルド父さんやシルヴィオ兄さんのカグラ服を選んでおこうか」
「そうだな! 暇だし」
俺達が選んだカグラ服が、採用されるかは別だけど。暇だからな。
お茶を飲み終わった俺達は再び、カグラ服選びに戻る。
「ノルドやシルヴィオにも甚平でいいだろう」
「ノルド父さんに関しては甚平の方が喜ぶかもだけど、エルナ母さんが喜ばない気がする」
エルナ母さんは王都でもノルド父さんを連れ回して、カッコいい服を試着させていたからな。実用性だけどなく、格好がつく服装も欲しがると思う。
「男の服選びにも女が関わってくるんだな」
「それが家庭を持つってことなんじゃないかな?」
なんてぼやきながら俺達は陳列された甚平を眺める。
「やっぱり金髪のノルド父さんとシルヴィオ兄さんに似合う色は青系じゃないかな? 二人とも線が細いし、黒とか灰色とかは似合わなさそう」
「そうだな。マントとしての黒をあいつが着るならともかく、甚平で全身黒とかになると似合わなさそう
だ」
ファッションに詳しくないので、完璧にフィーリングによる判断だ。
そんな感じで俺とルンバは青系統の色の甚平を適当に選んでいく。
シルヴィオ兄さんとノルド父さんって髪色とか線の細さも似ているから、一緒くたに選べるので楽だな。
そんな感じで俺とルンバは甚平を選び、ノルド父さん用に着物も選ぶ。
俺達はこれと決めたらすぐに決める。だから、お土産の選定も早く終わってしまった。
サイズ調整などはイリヤとアリューシャから聞き出して、店員さんに任せればいいだけだしな。
「イリヤとアリューシャの方は?」
「……えっと、今試着しているところで……」
俺の問いにどこか言い難そうに答える店員さん。
まあ、女性は試着にも時間がかかるし、そうなるよねー。
俺とルンバはむっつりとした表情でそれを聞くと、畳に寝転んだ。
その時、暗めの灰色甚平がちょうど俺の視界に入る。
「なんかあの甚平、エリノラ姉さんが好きそうだな」
「甚平は動きやすいからな。エリノラだったら着物よりもこっちの方が喜びそうだな」
エリノラ姉さんは屋敷でも常に動きやすい服を着るからな。
俺の中の勘がエリノラ姉さんはこっちが喜ぶと囁いている。
「あのー、女性用の甚平とかありますか?」
「……えっ? 女性が甚平ですか? うちでは女性は甚平は着ないもので……」
俺が店員さんに尋ねると何を言ってるんだ? というような顔をされた。
どうやら前世のように女性が甚平を着る文化はないらしい。
「女性も甚平を着てもいいと思うのにな」
「だな! 着物とか重ね着するものばっかり着ていたら窮屈そうだ!」
俺の意見に同意するようにルンバが笑う。
「……考えたこともありませんでした」
店員さんが神妙な顔つきで呟いているが、女性用がないなら男性用でいいか。
エリノラ姉さんなら毎日嫌でも見ていたので大体の体型くらいわかる。胸なんてまったくないから男性用で
も同じだ。
一応、エリノラ姉さんのお土産として男性用の甚平を買っておこう。
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