第八話
「これだ。」
目の前には砕けた黒い石片が、突き刺さった矢を中心に散らばっている。
「これはいったい何でしょう?」
「オレは昨日こいつを狙って矢を放ったんだ。」
「つたの壁で見えなかったのにか?」
オレは石碑の破片を拾い上げた。
「テレパシーの応用でな、植物を操ってるなら力を送る何かがあると思ったんだ。これはすぐ見つかった。魔物特有のどす黒い邪気が流れてきてたからな。」
「なんでわかるのさ」
「魔物なんて気づかないだけでそばにいるもんさ。昔からそういうのに敏感だったせいで厄介事にもよくまきこまれて大変だった。病気の人によくついてたな、あいつら。あれがいわゆる病魔って奴かな。」
「ジーフィさんはみたことある?」
「ごくまれにですが。よっぽど鋭くないと見えないものだと思っていました。」
「でも、これの気配には気づいてたろ?」
「一応、程度ですかね…」
「じゃあ戻るか。」
「えっ?なんか分かったのか?」
「教えてください師匠!」
「まあまあ、戻ってから全員に話すって。」
「早かったな。」
「成果はあったか?」
「もちろん。まあそれは順を追って説明しよう。腹ごしらえでもしながら話そうぜ。」
時計(オレが持ってた)を見ると、もう昼十二時を過ぎたところだった。昨日からの疲れか慌ただしさからか、俺たちは朝飯も食べていなかったんだ。
「取りあえずわかったことが2つある。1つは植物でも魔物どもを魔物がどうやって操っていたかだ。オレが壊したあの石碑は魔物の力を送るための媒体だったんだ。」
パンをかじる片手間に説明。
「ん…。つまりどういうこと?」
「まあ、わかりやすくいうと、あやつり人形みたいなもんだ。操るのが魔物、糸があの石碑、人形が植物ってかんじだな。」
「なるほど~」
「ところでジーフィ、お前、超能力はどこまで扱える?」
「瞬間移動、テレパシー、念動力、あと身体能力を一時的に上げることも…」
「実践向きのものばかりだな。」
「だからお前はすぐに気づけなかったんだろ。オレは一応建物のまわりの様子は見てきたぜ。」
「千里眼ですか?」
「まあな。ただ遠くまではあまり見れないんだが。俺たちの入ってきたのは南側、西と東には同じものがあるのが確認できた。北にも同じものがあるだろう。敵はそれを使ってこの一帯を監視しているのだと思う。まずそれらをどうにか破壊しないと、こっちの行動が全部筒抜けだ。」
「つまり今ここにいることは知れているのか。」
「では何故なにもしてこない?」
「そこさ、相手はオレたちが何もできないだろうと高を括っている。その油断をつけばなんとか…」
「本当に?!」
「あとは相手の力量次第だな。まあ、石碑を破壊する過程で分かるだろうぜ。」