第六話 敵襲
今の状況は最悪。嵐は近いわ周りは敵に囲まれてるわ、つーか植物全部が敵っぽいな。
「これはどういうことでしょう?」
「目的地、つまりフィト・カストロには魔物が住み着いているという噂があってな…」
「絶対先に言うべきだったろ」
「戦うには不利だ、突っ切るよ!!」
長剣を扱うフォティアとアルマが先頭を切る。が、ケオの様子がおかしい。
酷くふらつき、みんなから遅れがちだ。と、……次の瞬間転んだ。
「ケオ!どうしたんだよ!?」
呼んでも返事がない。拾いに行こうとしたとき、
空を切る音と同時に、太い蔦がケオに襲いかかった。
バシィッ…!!
「痛ッ…!」
左腕に大きく裂傷が刻まれるが、気にせずそのまま脇にケオを抱き抱えた。
「ランダ…?何で…」
「気分が悪いなら黙ってろ。世話のやける奴だな。」
…何て言ってるが、失血でふらふらしてるんで、余裕はねえな。
本格的に敵が邪魔してくる。正面からの攻撃は二人で防ぐのが精一杯か。
「ジーフィ、ケオを頼む。」
弓矢をかばんから引っ張り出し構える。
「お前、その傷で何を」
「トルミロス邪魔だ。退け」
引き絞った弓が軋む。
力を込めると傷ついた腕から血が吹き出たが、気にしない振りを保つ。血で手が滑りそうになるのを押さえ狙いをつける。
力いっぱい引いた矢を、放った。
その道筋にあったもの全て貫いて、矢は的に達した。
同時に植物の動きが止まる。目の前が霞んでスローになった。
「おい、しっかりしろ!」
オレはその場に倒れた。
「師匠!?」
呼ぶ声が遠くなる…。
「早く傷の手当てを!」
「分かってる!どこか雨風をしのげるところに…」
目の前が真っ暗になった。
…………………………………………………………………
体が痺れて苦しくて、兄さんに負ぶさりながらぼんやりしていた。ランダが道を開いた後は何事もなく、オイラたちはフィト・カストロに辿り着いたみたいだ。
「今、奥には入れませんね。」
「だが嵐を避けられそうな所はあれしかない。あそこの壁に亀裂がある、入ってみよう。」
狭い穴をくぐるとこれまた狭い部屋に出た。床以外植物でできていて、とりあえず外より暖かかった。
「この植物は襲ってきたりしないのかな?」
ちょんっとつついてみる。動く気配はないけど…。
「今は敵意を感じません、大丈夫でしょう。」
「だな。ケオ、休む前にこれを飲め。解毒役だ。」
渡されたのは黄色い瓶。
「どんな毒かわかるの?」
「ああ、蛇毒の麻痺系に近いようだ。ランダも同じ種類に襲われたんだから同じだろう。」
ランダ…、そういえば大丈夫かな。そっと兄さんたちに囲まれたランダを見やった。
今は眠っているみたい。傷にはきつく包帯が巻かれているけどまだ血が止まっていないようで、包帯が赤く染まっていた。
「ランダの具合は?兄さん」
「心配ない、そのうち血も止まるよ」
「そっか」
兄さんのそばでうとうとしつつ、会話を聞く。
「さっきの植物は元々毒のある種類でした?」
「いや、見たことのない種類だった。」
「魔物の力で生態系まで変えられているのか!恐ろしいことだ。」
「この先はより慎重にいきましょうね…」
いつの間にかオイラは眠りについていた。