第四話 目的
何が師匠だ。くだらねえ。
「ピリピリしないでください、師匠。」
「お前のくだらない呼び方のせいだよ…」
ついため息を吐いてジーフィを睨む。だが相手はどこ吹く風で、ほんとに嫌になる。
「まず何を教わりたいんだよ?」
「念動力の出力調整と、念話での相手の指定が主です。」
「そこまで自己分析できてるんなら自分で直せるんじゃね。」
「出来ないから頼んでいます。ヒントだけでも!」
「ねえサイコなんとかやテレパシーって?聞いたことはあるけど。」
オレたちの会話を興味深そうにして話しに入ってくるケオ。
「手を触れずにものを動かす異能力の一種をサイコキネシスと言います。テレパシーは最初に会ったときに使った、思考を読み取るものです。応用できれば強力です、異能力は持っている人が少ないですから。」
「仕組みには興味あるな。でも解剖しても突き止められなかったって記録もある。たぶん力の扱いの差なんだろ、羨ましいなあ。」
「しれっと怖いこと言うねトルミロスくんは。」
「……」
「アルマも何か言えよ。」
――久しぶりにこんな気楽に雑談をした。こいつら、今までにないくらいフレンドリーだ。珍しいよ。でも…久々に、楽しいと思う。
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結構歩いて、周りの景色も家が並ぶ町の近郊から森の中へと変わっていった頃、一回話が止まった。
「―そういえば」
オイラはシンとした雰囲気が嫌いで、必死に話題を考えた。
「えっとみんな、どんな目的で旅してる?」
「ちなみに私たち兄弟は、住みやすい町を探しているんだ。ずっとね。」
兄さんが率先して話を合わせてくれる。
「よくあるタイプだな、事情があって転居するのは。いいところが見つかると良い。」
「ありがとう。そういうアルマくんは?」
「グリフォス。」
それを聞いた途端に兄さんたちが顔色を変え、何か気まずい空気になってしまった。でもランダはオイラと一緒に首を傾げてて、ふと目があうと。
(なんだっけ?)
(何だったか…)
テレパシーだったかどうか分かんないけど、同じことを考えたのは間違いないや。
「最近見つかった妙な遺跡だ。」
呆れた感じでトルミロスが説明してくれた。
「急に色んなとこから見つかるようになった“遺跡”の一つだが、グリフォスは神話の魔物が住み着いてる危険極まりない所の中でも一番ヤバイところ。」
「未知の鉱物があると言う噂だ。それで武器を作るのが、このオレの夢だ!」
突然目を輝かせ始めるアルマ。
「今までと比べ物にならないほどの硬度、美しさ…絶対に手にいれてみせる…!」
「落ち着けアルマ。あと、おれも遺跡の一つ、『フィト・カストロ』に用がある、薬を探しにな。親友が病を患っていて、それに効くものがあるらしい。植物で構築された建物の中には、新種の薬草が発生していたというからな。」
「フィト・カストロって直訳すると植物の城…だよな。誰が付けてんだ、そんな安直な名前。」
「さあ?」
順番に話していってジーフィさんに向いたら困ったように笑っていた。じっと見ていたら、ため息混じりに――
「皆さんちゃんと目的がおありなんですね。私ないんですよ。実は家出したので。」
「「はっ!?」」
家出!?ジーフィさんが!?
「家でのゴタゴタです。今は言えません。」
優雅に人差し指を唇に当て、無言の圧力をかけるから、それ以上聞けなかったよ。怖くて。