序幕 第一話 出会い
感想、評価あると嬉しいです。
「ここが集いの場か。」
賑やかな酒場を見渡し呟く。
この宿屋兼酒場は難民や開拓者を援助するうちに冒険者の拠点となった有名な店だ。
安直過ぎるネーミングだが、分かりやすいのは良いことだな。何より旅の代表的な出発点なだけある。オレの目的には都合のいい場所だ。
仲間募集の手続きをしてからしばらく、一人近寄ってきた。
「君が、募集主のランダ君かい?」
さっと観察。琥珀色の、耳たぶあたりまでの髪。穏やかな黒い瞳。特に問題無し、強いて言えば旅慣れているようで頼りになりそうな人物と判断。
「そうだけど。」
「私はフォティア、十九歳だ。弟と一緒に旅して来たんだ。え~と、いた。ケオ、こっちだよ。」
元気のいい赤毛の子どもがケオ。丸い茶色の目で真っ直ぐ見つめられ思わず目を逸らしたが、観察は怠らない。上着が一回り大きいから、多分兄フォティアのお下がりだろうな。
「オイラはケオ。十三歳。あんたは?」
「ランダ、十四歳。仲間を募集したのがオレだから、今のとこリーダーだぜ。」
ぺたっとした短めの髪が頭の動きに合わせて揺れた。頭一つ分小さいわりに賢そうでもある。無邪気そうで可愛い系の顔で、キョロキョロと見回す様は好奇心に満ちた子猫みたいだ。
「ランダ…ですか。なかなかお似合いの名前ですね。」
ケオの観察に夢中で気づかなかった気配、静かな声に振り向くと、長い灰色の髪を束ねた…女……?
「それで正解ですよ。やっぱり男物の服だと分かりにくかったですか?」
「テレパシー、超能力者か。珍しい。」
「自在に操れるわけでもありませんがね。私はジーフィといいます、十八歳です。よろしく。」
クールビューティーという言葉が似合うだろう。隠してあるがスタイルは良い、かなり。しかしそんな目で見ていたら睨まれた。おお怖え。
無言のやり取りをしていたらまた一人、藍色の目の男が。
「お、あんたも?」
「ああ入れてくれ。おれトルミロス、十六。それと、急で悪いが――」
オレの前に近付いて来て、そいつの後頭部に纏められた金髪のこぼれた数本が触れる距離になったと思ったら、
「お前、血の臭いがする。」
「なっ!?」
オレは抵抗する間もなく、宿の個室に引きずられていった。
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ランダという新しい仲間は、翡翠色の髪や瞳の凄い綺麗なヤツだった。
あっという間に引きずられていったのは驚いたけど。それはともかく……。
「ねえ兄さん!」
「どうした?」
「何となくだけど、ランダってちょっと不思議な感じがしたんだ。どう思う?」
「いつもの勘か。お前のは良く当たるからなあ。でも一緒に旅すればおのずと分かるだろうし、気にしなくても良いさ。」
「えぇ…?」
兄さんはオイラの頭をくしゃくしゃ撫でて他の人と話しに行っちゃった。
どうしよう。兄さんの邪魔はしたくないけど、することないし。お酒の臭い嫌いだし。
ふと受付を見たら同じくらいの年の少年がいた。きっとオイラたちみたいな冒険者だろうな。声かけてみよう。
「ねえねえ。」
「ん?なんだ。」
その人と目があった瞬間、鋭い剣の刃を連想した。切れ長の目のせいか、それともツンツン立った髪の毛のせいかな。鳥肌が立った。
「仲間に入れるとこ探してるの?」
「ああ。」
やっぱり。
「オイラたちのとこはまだ大丈夫だと思うよ。どう?」
「本当か…それなら入れてもらおう。」
そこに丁度ランダが戻ってきた。
「ほら、あの人が募集者だよ。早く。ところで名前は?」
「アルマ。年は十四だ。」
アルマはちょっとだけ目が細くなった。そんなに怖くなさそうで良かった。