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お母様の言葉

四月も下旬だが、今朝は少し肌寒い。

私がいなくとも、庭師のトマがパーフェクトに手入れしてくれるのはわかっているけど、急に離れるとなると中庭と温室を点検せずにはいられない。


ドリーが後ろにぴったりとついて離れない。


「ドリー、特に危険は無いと思うけど…」


全てがオープンになったとたんにドリーは護衛色を全面に出してきて

シー○レット○ービスさながらだ。


「お嬢様、お嬢様に全て知れるところとなり、隠す必要がなくなりましたので、屋敷には警護の者を増やしました。もちろん使用人で王子との事を存じているものは執事のエドウィンとメイド頭のマーサだけですから、お屋敷としては単純な増員ですけど」


「大袈裟じゃない?」


「いいえ、王室の方は国内外いつどこで危険にさらされるかわかりませんから」


「いや、そうなることがあるとしても、今の私はただの一人の女性だわ。」


ドリーから強く見つめられても、そこはツッコミ入れさせていただきます。


とりあえず、頭の中整理して、向かうと決めた心が早くも折れそうだ…


想像をはるかに越えて面倒じゃない??


私のひっそり計画は何度も邪魔されてきたけど、

今回はもしかして

こっぱみじんこぉっ!


それはとってもとっても嫌!頭を抱えかけたところに


「おはようリア、お父様とカイルが待っているわ」


「おはようございます。お母様すぐにまいりますわ」


「リア、これだけは言っておきたいの。私達は二年前に覚悟を決めたけど、あなたには突然すぎる出来事だと思うわ。カイルから聞いたと思うけど、私達はリアを理解しているし頼りにしてもいるわ、あなたが普通の結婚は嫌だろうから、臣籍降下してあなたの好きにさせてくれるような近隣の国の王子を真剣に探していたの。カイルがファビアン王子の学友であるうちに紹介を頼みたいと思って話をしてもらったら、ちょうどギーズ家に興味を持っていたファビアン王子はさらにリア、あなたに興味を持ってカイルの学友に紛れて家にいらしたのよ。」


休みの度にお兄様のお友達がときどき遊びにいらしていたのは記憶にあるけど、

あんな美形が紛れていたら絶対忘れないけどなぁ


「お母様、ファビアン王子がお兄様のお友達に紛れてたなんて全然覚えてないわ」


「そうね、ファビアン王子はとても用心深いお方、従者に変装されてたわ」


うぅーむ。


「それで、あなたがここで的確な指示をだして庭作りを進めたり、学友の誰かがあなたに贈り物をしたり、声をかけてもまったくなびかないのを感心して眺めてらしたのよ。それと別に私達はファビアン王子と直に接して、王子の人に先入観を持たず、一面だけで判断しない思慮深さ、身分に関係なく細かい気遣いをされるところなど、素晴らしい人柄にふれることができたわ。断れない圧力ではなくあなたを託せる人物だから、今回のお話しお受けしたのよ。それだけは覚えておいて。」


お母様、リア、ちょっと感激。


「お話しくださりありがとうございます。皆様から大事にされ、リアは幸せ者です。」


「それにね、王子はあなたと一緒で、ご自身の能力の高さも美しさも鼻にかけてらっしゃらないわ、むしろ王子に生まれてしまったから回りの為に役割を全うされてるだけで、本当は誰にも構われずに暮らしたいらしいわよ?」


なんと?もしやファビアン王子は同士?!


「だからきっと気が会うわ」


そう言いながらお母様私の髪についた葉をとってくれた。


朝食は数少ない家族の時間だというのに、従者の数が増えすぎてなんだかぎこちない。


「リア、くれぐれも身体に気をつけてな」


お父様が私をじっと見ながら言う。


「はい、お父様、せっかくですので色々と見聞を深めてまいりますわ」


「カイル、おまえも久々に勉学にいそしめるよい機会だ。国から派遣の形だから、わがキプロス王国の代表だということを忘れずにな。」


「はい、父上。」


無駄にキラースマイルを飛ばして、メイドの何人かが倒れる寸前だ、お気の毒様。


なるほど、表向きそうなんだぁと

へんな感心しつつお茶を飲む。


「リア、今日は無理だけど、明日はお友達を呼んで内輪のお茶会でも開くといいわ」


と、ありがたいお言葉、

お母様さすが、数少ない気の合う女友達の

ケアは大切だ。

さすがに突然いなくなるわけにはいかないものね。


「ありがとうございます、お母様、さっそく準備にとりかかりますわ」


「ドリー、手伝って」


「はい、お嬢様。」


手早く指示を出しながら、

大切な女友達へ心を込めた招待状を書く。


マルタン伯爵令嬢のヴァレリーとルテル侯爵令嬢のモニックだ。


「二人とも急だけど来てくれるかしら?」


「お嬢様が開かれるお茶会は珍しいですし、昨夜はどのご令嬢とのおしゃべりもかなわなかったのでしたら、お二方とも飛んでいらっしゃいますわ」


ドリーが請け合う。

どちらにしても明日しか日がないので、せっせと準備を進める。

もう少しで終わりの遅咲きの菫をテーブルコーディネートのテーマにすることにして、淡いパープルの布でおお急ぎでクロスとナプキンを作ってもらう。


菫の砂糖漬けを飾ったケーキにクッキーはシェフのジルベールがどう仕上げてくるか私も楽しみだ。


使用人の皆様には急に色々ふりまわされて申し訳無いが、凝り性なので、あきらめてもらおう。


その夜、遅くまで、ナプキンに菫とそれぞれのイニシャルを刺繍してから眠りについた。













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