容赦なく敵地に向かってます
オディール様にアレグラ様、麗しい……
オディール様の豊かな栗色に近い金髪を控えめに結い上げ質素なドレスを纏い伏し目がちに馬車の外を眺めるお姿は憂いある若妻って風情でなんだかそこはかとなく庇護欲をそそる感じ。
「ドリー、このドレス胸と腕がキツいぞ」
残念、何か色々と残念。
アレグラ様は黒髪を半分おろして普段より幼い印象の中、首もとまで詰まったドレスがグラマラスなお身体を包んでなんとも禁欲的で可憐な小悪魔といった感じ。
「ごめんなさいねドリー私も胸だけキツいわぁ。
普段こんな安い生地って着ないからなれないわね」
可憐じゃない……
とにかく美しすぎてどう考えても悪目立ちしそうなんで
「あの、オディール様もアレグラ様も美しすぎてかえって目立ちませんか?」
だってこれじゃお外にでたとたんに注目されまくりだよ。
「何言ってるんだリア、君が一番目立つだろ。
まるで妖精だ。
私は美しいものが好きだからね、美しい者かかなりの技量がなければワルローの私の部隊には入れないんだ。
このチームは美しさと技量を兼ね備えていてかつてない最強のチームで私は大満足だよ。
それにこれから装備を身につけるから顔も少しは隠れるぞ」
えーと……
「これからどんな作戦を?
隠密に動くならあまり目立たないほうがよくないでしょうか?」
「隠密行動っていうのはね、事を未然に防げるレベルで有効なんだよ。
もうすでにシドは公に攻め混んできてるんだ、こちらも遠慮することはない派手にいくに決まってるじゃないか」
オディール様何言っちゃってるんでしょうか?
「普通に容赦なく攻撃致しますけど、まさかドレスを着た女性がいきなり攻撃してくるとはあちらも想定外でしょうから十分な奇襲になると思われます。もちろん私達の素性はあかさないまま、おそらく必死に追いかけてくる正式なキプロス軍に引き継ぎますのである意味隠密でしょう」
ドリーが私の髪を編み込みながらしれっと補足する。
なにそれ、なにそれぇぇっ
聞いてない聞いてないっ
狼狽える私にオディール様が何か色々渡してくる。
「皆お揃いのチョーカーだ。今回は急ごしらえだから石は全てトルマリンで統一してる、色だけはそれぞれの瞳の色に合わせてある。
かなりの首の防御力を期待してくれ、接近戦になったら後ろの突起をおすんだなそれぞれの宝石の後ろから毒針が飛びだす仕組みだ。
こっちが対になる指輪だ、同じく毒針が飛びだすんだ。これは覆面までいかないがマスクのようなものだな皆の口許が隠れるのは残念だがあいつらは最新の毒ガス使うらしいじゃないか、あいつらの着けていたマスクを参考に作ったのをさらに改良させてるから。
ガーターベルトにナイフは各自できるだけ挟み込んでおいてほしい、武器が足りなくなったら分けあおう」
う、毒針毒針ってそこまで接近戦になるなんて絶対嫌ですぅ。
思わずじっとオディール様を見てしまう。
「なんだ?リア、トルマリンが嫌なのか?
これが終わったらもっといい石を使うから今回はこれで許してくれないか」
いい笑顔って時には張り飛ばしたくなるんですね。
石なんてどうだっていいんですよオディール様。
これが終わったらって次なんて無いですお断りに決まってますから。
「やだ、リアったらもっと武器が欲しいの?私のこの花のブローチもあげるわよ。
花びら一つ一つがつまんでとれるんだけど先端に毒針がついてるの」
アレグラ様、嬉しそうにくださらないでくださいませ毒針はもうお腹いっぱいです。
「あの、今どこに向かっているんですか?
その、攻撃はいつ?」
このヒトいきなり戦いのまっただ中に突き進んでいきそうでコワイ。
「うむ、伝令によればシドはかなりの規模の戦艦でマシリトをでたそうだ。
ユレヒト港から上陸しエバイラに向かってくるつもりらしい。
私達はアレグラ嬢の顔を使ってエバイラを最短で突っ切ってユレヒト港に向かっているところだ。
エバイラの途中でぶつかるかユレヒト港で交えるかはわからん」
ざっくりしすぎじゃないでしょうか?
「実際はどんな風に戦うんでしょう?」
「とりあえずリアとドリー、アレグラ嬢と私がバディを組んで左右から敵を攻撃するのが基本パターンだな。
ドリーと私が君たちのサポートもするから心配無用だ自由に動いてくれてかまわない」
バディって……
「あの、でしたらオディール様とドリーで戦ったほうが楽なのでは?
多分私が一番お荷物ではないでしょうか?」
オディール様が目を見開いて私を見つめる
イヤ、いまのところこのヒトに睨まれるほうが実戦に放り込まれるよりコワイかも……
「私の訓練もリアの能力もこれほど間違いないものはないっ!
不安なら一つ知らせておこう、私はリアの訓練の前にキプロス軍の朝の訓練を任されていたがな、
私の訓練についてこられた騎士はほんのわずかだ」
ちょっと!そのまま黙って瞑想タイムに入らないでくださいませオディール様!
その訓練、夜明けからはじまる物凄い体力トレーニングに続く訓練のことですよね。
体力トレーニングですでに皆さん使い物にならなくなるレベルと風の噂に聞いてます。
「あ、アレグラ様は戦ったご経験は?」
「ふふ心配よねぇ。
私はいつも超接近戦なの。
ギリギリまで近づいて見つめあう間に私のコレクションでもある美しい暗器でサクッとね」
アレグラ様、とーってもコワイ。
そして何気に実戦経験ありなんですね。
しかもこの余裕、これって前から計画されてて私以外は知ってたのよねきっと。
「事前にご準備されないと作れないものばかりですがどれくらい前からこの計画はあったんでしょうか?」
「リアがナイフを投げて素晴らしい実力を披露してくれた瞬間に私の中に閃いたな。
この数年は近隣の諸問題は愚弟の働きで未然に防げたからよかったんだが。
今回はそうはいかないようだ。今までの働きに免じて先に地ならしでもして協力してやろうと思ってな。
ワルローの事でも世話になっているし、何よりも祖国の一大事だ」
半分ホントで半分はご自身の趣味みたいなものですよね?
オディール様ご自身が戦いたいだけですよね?
「そんなことよりリアお嬢様お支度が終わったら少しお休みくださいませ。
馬車は馬をかえて夜通し走らせますから」
いやーこんな状況で眠れないってばドリー!




