戦闘要員決定です
オディール様が一つ咳払いをしてからおっしゃる。
「リア、悪いがもう一度投げてみてくれないか?」
あら?オディール様もドリーも目が真剣モードのような気がするけど。
何故かしらん。
ダーツとほぼ同じ感覚だとわかって、
先ほどよりは緊張せずに的をしっかり意識して投げることができた、ら……
サクッと真ん中に命中!!
ダーツよりこの短剣のほうが大きいからかな?
ダーツより簡単だわ。
なんだかちょっと静かすぎるなーと思いながらゆっくり振り向けば、再度固まったオディール様とドリー。
今度は完全に固まっちゃってるんですけど大丈夫ですか?
先に我にかえったオディール様が瞳を煌めかせながら私の肩に手を置いてまくし立てるように言う。
「リア、我が愚弟の先見の明をこれほど強く感じたことは無いよ。君が奴の姫じゃなけりゃ即、国の要職に引き入れているところだね。
初めて同志に巡り会えて私は感動している!
見目麗しく、頭脳明晰で戦闘能力もある姫とは!
ドリーこれなら私達で隊を組めるぞ。
私はワルロー国に女性だけの隊を作ったばかりだ。もちろん皆美しい。
こちらでも頭の硬いことを言わずに女性の騎士団も作ればよいのだ。
リア、君が先頭に立ちキプロス国の新たな伝統を築いたらどうだろう?
私は女装が似合わないから男性に劣らぬ能力のある女性だと認められるには説得力にかけてしまってね。ただのじゃじゃ馬扱いで嫁に出されてしまったが……リア、君なら」
オディール様の握力かなりつ、強いよ!
まだまだ熱く語りそうなオディール様の手に手を重ね上目遣いで言ってみる。
「あ、あのオディール様お話がよくわからないのですが……私何かしてしまったのでしょうか?」
「あぁっすまないねリア。
私としたことが先走ってしまったね。
君の短剣投げの技術は私やドリーに劣らない。
とてつもなく素晴らしいよ!それどころか多分少し訓練したなら的への的中率は私達より上をいくだろうね。
私達が勝るとすればもっと力があるくらいだ。
だからね、カリキュラムは大幅に変更だ。
万が一の為の護身術じゃなく、いざというときの隠し玉教育にね。
もちろん隠したままで終わるのが望ましいが、リアの実力なら城で私達と離れて待つより共に行って愚弟とドリーが守るほうがリスクが少ないな。
もしかしたらリアに助けられる場面もあるかもしれないくらいだ。どうかなドリー?」
あら、ドリーが両手を組んで私を見つめてるわ。
なぜそんなにうるうるしてるのドリー?
「リアお嬢様、これほどの使い手は恐れながらオディール様ファビアン様そして不肖私をおいて今まで見たことがございません。
お嬢様は身のこなしも軽くていらっしゃいますから恐れながら守るつもりが守られてしまうやもしれません。
もちろん、もちろんお嬢様のことはこのドリーが命に代えてもお守りいたしますが。
お嬢様ほどの腕がおありなら開戦となりましたらご一緒していただくほうがより安全だと思われます」
「よし、決まった。敵の狙いは第一にリア、その後にキプロス国をはじめとした周辺諸国の制圧だろう。主戦力がいない城でいくら兵を増やしたどころで守りの甘さは否めない。
リアを連れて行ければ心おきなく戦いに臨めるというものだ」
なんですってぇぇっ!
私、もちろん役立ちたいって思ってますよ。
ええ心からっ!
で、でも急に連れて行かれるとかさらっと決められても!
慌てる私にかまわずオディール様とドリーは嬉々として訓練の相談をはじめてしまった。
そして一時間後、私はオディール様のちょっと色々大きい騎士服(胸まわりとかパンツの長さとかね)に
着替えさせられて、優美な庭を何周も走る羽目におちいった。




