つかの間の晩餐
コノヒトは女の人なんだよね……何度目かの自問自答を繰り返しながらオディール様の後についてお城の中を進んだ。
お顔はとにかく整っていて
ドレスをお召しになればそれはそれで綺麗だろう、遠目ではあったが姫としての姿を国王陛下主宰の夜会でも見たことがある、ただこの凛々しい姿を目の前にすると男性だと言われるほうがしっくりくる。
それほど彼女の男装姿は全く違和感がない。
長いストライドで颯爽と歩くオディール様は時折こちらを気遣うように振り返り甘く微笑む。
「私はね姫らしい振る舞いは全て苦手でね。馬に乗って剣を振り回しているほうがずっと楽なんだ。嫁ぎ先のワルロー国では軍を管理してる。理解ある相手に巡り会えて幸せだよ。ファビアンもややこしい子だが生涯の伴侶に出逢えたようで安心したな」
オディール様の言葉の後半部分に若干の引っかかりはあるもののリアルオ○カルにひきつけられたままであっという間にお昼と同じ部屋に着いていた。
カイルお兄様にリュカそしてアレグラはもう部屋にいた。
突然現れた麗人にリュカもアレグラも驚いたみたいだけどさすがに露骨に態度に出す訳じゃなかった。
カイルお兄様だけが嘆息して諦めたように笑っている。
「お久しぶりでございますオディール殿下。そのお姿でお出ましとは我らの指揮をとってくださるおつもりでしょうか?」
「カイル、今更私の指揮など必要ないだろうが我が愚弟が今回も裏で事を済ませるつもりで私を隠れ蓑にしたいのなら協力しないこともない。ワルローでもマシリトの手の者が少々暴れたのでな。里帰りがてら報告に来てみればファビアンがマシリトをけしかけて開戦させるというから帰るのを延期したんだ」
「姉上!俺からマシリトにけしかけてなんていない。奴らの狙いがリアじゃなければもっと静かにしてました。それからリアをエスコートするのは俺の役目です」
音も無くいつのまにか入ってきていて叫んだのはファビアン王子。
あら、深いネイビーの夜会服が惚れ惚れするほどお似合いって、それ私のドレスとお揃いじゃないぃー!
ファビアン王子はオディール様と私の間につかつかと割って入ると
「リア!部屋に迎えに行ったらいないから驚いたよ。このヒトはね何人もの令嬢を袖にしたあげく最後には若くして即位したワルローの陛下を惑わせて嫁いだんだ。男性としても女性としても油断ならないから近づいちゃ駄目だよ」
眉根を寄せて心配そうにこちらを見られてもなぁ
えーと……どこからツッコんでよいのかわかんないなぁと目を泳がせていたら
アレグラが吹き出した。
「ファビアン様そんなことおっしゃったらファビアン様も屈強な敵をその美貌で何人もたぶらかしたあげくに突如男性に戻って蹴散らしたと言われますわよ」
ナイスツッコみアレグラ姉さん!心の中で拍手しちゃった。
「アレグラ嬢にリュカ様、この度はわが愚弟ファビアンへの強力に姉として感謝する。」
オディール様が洗練された所作で一礼する。
「オディール殿下お目にかかれて光栄です。ファビアン様には我が姉を無傷で救出していただきました。この恩は一生忘れません」
リュカも綺麗な一礼を返す。
「オディール殿下、私共は今後ファビアン様ひいてはキプロス王国への協力を惜しむことはございません」
アレグラも艶然と微笑みながら礼をとる。
うーん皆様美しいわ。
オディール様が加わってさらに絵面が豪華だわ。
「ちょっとリア、リアはこっちだよ。姉上はどうぞあちらへ。さあ皆今夜は思う存分食べて飲もう」
ファビアン王子が慌てて私の手をとり引き寄せ、皆を席へと促し和やかに晩餐が始まった。




