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土壇場の力技でオッケーしました

「おはようございます。少し早いですが朝のお茶をお持ちいたしました」


ドリー早っ!

昨日は私が顔を上気させたまま茫然としてたからファビアン王子が部屋に来たのがしっかりばれちゃった。

ものの数分の隙間にファビアン王子に入り込まれたといたくお怒りだったドリーさん、今朝はかなり早めに来ましたね。

私の心臓と頭の中が色々と落ち着かなくて、あんまり眠れなかったからもう少し微睡ませて欲しいところなんですけどね。


ドリーがお茶を淹れてくれてる間に枕に乗せた左手の煌めきを眺める。

ファビアン王子が昨日はめてくれたまま輝いているそれは大粒のダイヤのサイドにサファイアがあしらわれている。


何度となく好意は示されたものの、あんまりにもファビアン王子に非の打ち所がなさすぎて本当とは思えなかった。

なんとなく話半分に聞き流して自分の気持ちにも蓋をしてたんだと思う。

昨日はついにそれを自覚してしまった。

私、いつの間にか、そしてこんなに短い間にファビアン王子を好きになってた……。


「リアお嬢様?お顔が赤いようですがお具合でも悪いですか?それとも違うお熱でしょうか? 」


ドリー、淡々とつっこまないでくれるかしら。


「だ、大丈夫よ。ちょっと暑いなって思っただけ」


「左様でございますか。窓を開けてまいりますね」


お茶をいただいてる間にドリーが執事よろしく今日の予定を事細かに説明してくれる。


「本日ギーズ公爵ご夫妻がいらっしゃるので昼食はカイル様とご家族で、お茶の時間に陛下と妃殿下に公爵家皆様でお目通りとなります。

夜は今回ご活躍の皆様で晩餐となります。

お召し替えだけでも三度になります。

ドレスはお屋敷から運ばせることもできますが、今回の留学用の物がまだまだございますのでその中からお選びいただくことでよろしいでしょうか?」


「もちろんよ。お母様達はお昼の後そのままお茶に向かわれるでしょうから私もお昼の支度のままでいいんじゃないかしら?

合わせるジュエリーは全てパールで通すわ。

髪はなるべく楽に結ってほしいんだけどいい?

国王陛下と妃殿下に正式にお目通りなんて緊張で頭痛がしそうだもの」


「リアお嬢様っ!!事実上はお嬢様の御披露目ですしお嬢様が主役ですのでそれはなりません。

お嬢様を最大限美しく見せる装いをせねばなりません。さ、ドレスを選びましょう」


やっぱりダメかぁ

ドリーなんでそんなに嬉しそうかな。

いきなりの社交過密スケジュールでこれなら馬車に揺られてる方がましだと思うんですけど。


しぶしぶ隣のクローゼットと呼ぶには広すぎる部屋に入ればずらりと豪奢なドレスが並べられていてびっくりだわ。

いったいこれだけの数のドレスどうやってトランクに詰めたのかしらん。


疑問を察してくれたのか

ドリーがすかさず


「ファビアン様がはりきって沢山作らせたのでございます。

とても旅先に持っていける数ではございませんでしたのでこうしてリアお嬢様がいらっしゃるのを待っていたドレス達でございます」


う、うん、まさにドレス達だわ。

選ぶの大変っ。

大変だけどオフィシャルな会ばかり、仕事と頭を切り替えれば私の選択も早くなる。


昼食には淡い黄色の地に大きな花柄のドレス、見た目は華やかだけシフォンの柔らかな生地で比較的ゆったりと作られてて着てて楽そう。


陛下のお目通りには水色のシルクタフタで何段にもフリルとレースを重ねたとっても手の込んだドレス。

そして夜にはネイビーのドレスで胸元と袖口、スカートの裾に近い部分にこれでもかとリボンのお飾りがついてる。

色が地味だからエレガントな仕上がりだけどこんなにリボンのくっついたドレス自分じゃ絶対にオーダーしないわ。

その後嬉々としたドリーの指揮のもと二人のメイドも加わって私は頭から爪の先まで磨きあげられた。






私がいる部屋は王宮の中でもかなり奥まったところらしくお昼の会食の部屋まではまた長々と廊下や階段を曲がったり登ったり下りたりした。全然覚えられないけど大丈夫かしらね。


ドリーと騎士二人に囲まれながらの移動はなんだか落ち着かない。

やっと少し広めのホワイエで立ち止まり、同じような騎士が守る重厚な扉の前で止まり、警護してくれていた騎士がうやうやしく扉を開けてくれる。


中には二十人ほどの会食ができそうな長いテーブルに微笑むお父様と相変わらず華やかオーラ全開のお母様、ちょっと疲れ気味のカイルお兄様がいた。

私が椅子にかけるとすぐにお母様が


「リア、大変だったわね。

怪我がなくてなによりよ。

それから正式に婚約おめでとう。

あなたのことだからいかにあのファビアン王子といえどもしばらくはごねるかと思ったけど。

あんなに色々あったらどんな乙女でも陥落するわよね? 」


へ?表向きに正式な婚約ですってばお母様、ややこしいですけど。

あんなに色々って何を誰からどこまでどんな風に聞いてらっしゃるのですかっ?


あたふたしながら口を開こうとすればお父様が重々しく言葉を発する。


「私はこれで二年前に一度退いた宰相に返り咲きだ。ま、全て表向きだけどな。

これからはもっとカイルに押し付けて行こうとは考えているがな」


私の婚約の為に表向き宰相退いてたのが真相とは!?

急に宰相を退くって驚いたけど、あの時は早めに引退してお母様と旅行とか楽しみたいからって、

領地の経営は私が見てくれるし王政にはカイルお兄様が取り立てられて自分以上に力を発揮するだろうから少しのんびりするよなんて言っちゃってましたよね!

お父様そんな重大なこと今さらっと発表されてもぉっ!

一番の被害者はお父様!っていうかギーズ公爵家巻き込まれすぎですからぁぁ


ちょっと何も言えなくなってる私にカイルお兄様が優しく声をかけてくれる。


「ファビアン様とリアの婚約が発端ではあるけど、元々お父様が宰相に登りつめたのと、僕がファビアン様に将来の右腕にと望まれたのと、リアをファビアン様が見初めてしまったのは全部別々のことだった。

計らずもギーズ公爵家に権力や財力が集中してしまうことになったんでリアとの婚約が固まるまではギーズ公爵家へ注目が集まって政治的な危険が高まるのを避けようととられた措置だよ。

それにお父様は実際は宰相職を続けられてたからね。僕はまるでお父様と陛下の伝書鳩のようだったよ」


カイルお兄様、私のお目付け役といい重要な伝書鳩のお役目といい本当にお疲れ様でございます。


「な、なんだか一人知らずに申し訳ない限りですわ」


私が絞り出すように言えば


「いいのよ、政治で成功したってそこまでお金にならないもの。

我が家の財力をさらに築いてくれたのはリアですもの。

公爵家としての対面を保つためには必要経費がしっかりかかりますからね」


お母様そこまでおっしゃっていいのでしょうか…… 一応領地収入もそこそこ、宰相職のお給料はまぁまぁの高額ではありますよ。


そんな家族の会話を少ししたところで


「私も家族になるということで参加させていただいてもよろしいでしょうか? 」


黒の短髪に隙のない正装で現れたのはファビアン王子!髪の毛また切ってる!


お父様がすかさず立ち上がり臣下の礼をとり言う


「ファビアン様この度は正式に婚約していただくとのこと誠にありがとうございます」


私達も続いて立ち上がる。


「何をなさいますか未来のお義父上、私が皆様にお邪魔させていただくのですから。皆様も座ってください」


「まぁ殿下が私の息子……」


お母様お顔が緩んでますわよ。


「ファビアン、髪切った」


カイルお兄様がまた頭抱えてる。驚きのあまりお父様とお母様の前で王子を名前呼びのまんまだ。


「義兄上、男は髪型ではございませんよ。付け毛を取りましたらこのようになりました。髪はいずれ伸びますゆえ」


短髪のファビアン王子は甘さより精悍さが際立ってまた違った魅力に溢れてる。

ま、こちらの貴族の価値観からいけば短髪NGなんだろうけど。


「あ、義兄上……同い年で学友で……」


あらカイルお兄様「お義兄上」って言葉に異常反応だわ。


「では私はリア嬢の隣に座らせてもらいます。リア、指輪を見せて?サイズは大丈夫みたいだね」


ファビアン王子が隣に座ったかと思うと私の左手をとったのでとたんに私の心臓がうるさくなり顔が赤くなる。


「リア、もう指輪をいただいたの?」


お母様が興味津々だ。

しかたなく婚約会見よろしく左手を皆に見せる。


「義母上、これは私からリア嬢へ個人的に贈りました婚約指輪です。

公の場ではもちろん王家に伝わる指輪を使うのですが。私は自分の気持ちも形にしたかったものですから。同じように私から皆様へ婚約の許しを直接願いたく参りました」


ファビアン王子は立ち上がり一度礼をすると、もう一度私の手をとり跪くとものすごい目力で私を見つめて


「リア嬢、この私と結婚してください」


いきなり王子様然として言われて思わず


「は、はい……」


と答えていた……。


ファビアン王子はありがとうと良い笑顔をつくるとお父様へ向かって



「ギーズ公爵、私がリア嬢を見初めて以来多大なご協力に感謝します。

留学によりリア嬢と近づき、まずはリア嬢からの許しを得て皆様に改めてお許しいただく予定が不測の事態が起こり猶予がない状況となってしまいました。ただ今回のことで二人協力しあい長く時をかけるよりも深い絆を得られたと私は感じているのです。たった今リア嬢から嬉しい返事を聞くことができました。リア嬢との婚姻をお許しいただけますでしょうか?」


「はい、殿下どうぞ娘をよろしくお願い申し上げます」


お父様の答えと共に昼餐がスタートしたのだけどせっかくの贅を尽くした料理の味がよくわからないまま終わってしまった。























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