告白
朝ごはんの後すぐにキプロス王国に向けて出発する。
途中私達の為に向かっていたお忍びの援軍と合流するらしい。
そういえば早馬出してたよね。
アレグラももちろん一緒に行くことになった。
本人は大丈夫だと言い張ってたけど。
アレグラと私にドリー、ファビアン王子にカイルお兄様とリュカの振り分けで馬車に乗り込んだ。
いばら姫館から夕方まで馬車を進めた小さな集落でキプロス王国からの援軍と合流できた。
ここで用意されていた馬に乗り換え前後を援軍の騎士に守られながら夜通し馬車を走らせ、朝方キプロス王国のラグラに入った。
行きに泊まったサイグラよりは王都に近く夕方よりは前に城に着くとのこと。
ここでもほんの少し休憩をとっただけで馬を替えて、さらに急ぎ走らせ暗くなる前に城に着いた。
お城に来るのは初めてじゃない、どうしても出席しなくちゃいけない夜会や式典があるから。
ただ今回はまったく意味合いの違う登城。
改めて眺めると白亜の優美で大きな城だ。
天井の高い長い廊下を奥へ奥へと進み中庭に面した落ち着いた部屋へと案内された。
アレグラも多分そう遠くない部屋だ。
ドリーは勝手知ったる城の中なのか、こちらへ付けてくれたメイド二人にてきぱきと指示を出し気がついたら私はドリーにコルセットを緩めてもらっていた。
「リアお嬢様かなりお疲れでしょう。
陛下へのお目通りも何もかも明日でございます。
本日はお食事もこちらへ運ばせますので先ずはお湯をお使いくださいませ。
もちろんお手伝いは無用だと他の者はさがらせてございます」
「ありがとドリー助かるわ。
ドリーも疲れてるでしょうに先に失礼するわ」
お風呂だけは貴族らしくなくいつも一人で入ることにしてる。
前世日本人の私には一人が快適。
大きなバスタブにかぐわしい花の香りがするお湯が張られていて嬉しくなる。
安全な場所でたっぷりのお湯を使えるのがこんなに贅沢だとは今までなら気がつきもしなかった。
バスタブに深々と身を沈め明日のことに思いをめぐらせる。
陛下にお目通りって今更だけどどおしよう。
ファビアンは王子様だものね。
当然お父様は国王なわけで……わかってるけどなんかあんまりにも近くで色々やってもらっちゃってたから一瞬忘れてたわ。
夜会のようにちょっと挨拶して終わりてはいかないわよね。
お父様にお母様はお城にいらっしゃるかしら?
私が他国の船に人質として乗り込んだなんて知ったらどうされるかしらね。
身体が温まるにつれ心もほぐれてきたのか考えるのが馬鹿馬鹿しくなってきた。
なるようになるよね。
先ずはしっかり食べてゆっくり休もう。
心が落ち着いて初めて部屋のしつらいを見てみればロマンチックなお部屋だわ。
家具は白塗りで壁紙は薄いピンク。ファブリックは白をベースに薄いピンクとエレガントな花柄の生地が使われ、すごく上質なレースがふんだんにあしらわれてる。
大きな天蓋付きのベッドはとっても寝心地が良さそう。
たっぷりひだをとったカーテンがかけられた大きな窓の先には素晴らしい中庭を眺められるバルコニーがついてる。
朝このバルコニーでお茶でもしたいわね。
夜着の上にガウンを羽織りソファーにかけたところでノックと共に圧し殺した声で呼び掛けられる。
「俺だけど。ちょっといいかな? 」
このヒト結構めげないよね。
私の部屋に突撃しちゃドリーを怒らせますよファビアン王子。
「俺だけどではわかりませんわ。
私、殿方の前に出られるような状態ではございませんが」
「わかってるよリア。意地悪しないでよ。
俺どんな状況でも理性保ってきたよね?
ドリーが来ちゃうからちょっとだけ顔見せてよ」
押し問答しててドリーと鉢合わせしても面倒だもんね。
わざわざ無理に来るぐらいだから何かあるのかもしれないしね。
ドアをそっと開けるとファビアン王子がするっと部屋に入ってきて早口で囁く
「リア、リアの気持ちが完全に固まらない内に明日から忙しくなるし色々はじまっちゃうから先に伝えとこうと思って。
俺、そのままのリアが本当に好きだ。
お互いに勝手に注目されてしまう立場だけど、できるだけ早くおかしな干渉されずに暮らせるように俺、努力するから。
国と国の争いにまで巻き込んで本当に申し訳ない。表向きの婚約発表には王家の指輪が使われるけど。こっちは俺がリアの為だけに用意したものだからいつも身につけていて 欲しい。大好きだよリア」
びっくりしている間に左手がとられ薬指にそれがはめられ頬に柔らかい何かが押し付けられたかと思うとぎゅっと抱きしめられた。
「急かしちゃいけないんだろうけど早く返事がもらえないと正直俺、色々限界かも」
ファビアン王子はまたもや早口で囁いて何も言えないでいる私を置いてあっという間に部屋をでていってしまった。
えぇっーと、今、私かなり決定的に告白されましたよね?
真っ赤になって立ち尽くす私。
そのほんの少し後ドリーがワゴンを押して入ってきて不信感いっぱいの声で言った。
「お嬢様、お顔が真っ赤でございます。」




