表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/48

お願いファビアン


ドリーがたっぷり一拍おいてから


「リアお嬢様、昨日は聞き流しましたが本気だったんでございますね。

何度も申し上げますがお嬢様のことはもちろん私がきちんとお守り致します。

もしも私に何かございましても、ファビアン様が必ずリアお嬢様をお守りされます。

ファビアン様は騎士として密偵としてかなうものがいないほどの腕をお持ちです。

本当のところファビアン様お一人であの船を沈めるのも簡単なくらいです。

今回の相手が一国の王でなければファビアン様が握り潰して終わりにしたものを……」


「ファビアンが密偵?」


「はい、海外留学といいながらキプロス王国にせまる脅威を小さな火種の内にご自身で調べ消しているのが実情でございます。

それによってこの数年は小さな戦争もないのです」


えええっ!

王子自らそんな働きを!?

あの人本当にどれだけハイスペックなのぉっ!

出来ないことないの??


「ですから、リアお嬢様は攻撃術など学ぶ必要ございませんです」


話は終わったとばかりにドリーが着替えを促してくる。


「ドリー、私、もう絶対に足手まといになりたくないのよ。お願いっ教えて」


胸の前で両手を組んでドリーを見つめる。


「お嬢様、私ごときが判断できることではございません。

たしかに姫様などは心得はございます。

いずれリアお嬢様も学ばれることもあろうかとは存じますが……そこまでおっしゃるならファビアン様にご相談なさってくださいませ」


わかったわ、ファビアン王子をうんと言わせたらいいのよね。

さっさと着替えて階下に向かえばタイミングよくファビアン王子とカイルお兄様の声が聞こえる。


「この際婚約発表と留学から帰国した知らせを一緒にしてリアを城で守ったほうがいいと思うんだ。

カイルももう城に来ちゃったほうがすぐに会議ができていいな。うん、決まりだねぇ未来の宰相殿?」


「僕が城に詰めるのはかまわないが……リアは……確かに城でかくまってもらえるならその方が安心は安心だが。

リアが何て言うか……」


え?婚約発表ですってぇぇっ!

何言ってるの?

いやいやいきなりでしょ。

王城で暮らすぅ!

むりむりっ。


思わずぴたっと足を止めた私はファビアン王子に見つかった。


「リア、おはよう。降りといでよ」


「お、おはようございます、ファビアン様」


「やだな。様なんてさ。リアちょっと話があるんだ朝ごはん二人で食べよう」


とってもいい笑顔のファビアン王子に手をとられ奥の部屋へとつれて行かれる。

グレイッシュな水色のファブリックと淡いグレーの家具でコーディネートされた品の良い部屋だ。



クロスのかかった丸テーブルにはお茶の用意がされている。


「朝ごはん運んでもらうからちょっと待ってね」


いいながら慣れた手つきで香りのよいお茶を淹れてくれる。


「もう聞こえちゃったと思うんだけどさ。俺はリアの安全を確保したい。

だからしっかりした警備体制をとれる城で守らせて? その為の婚約発表だから許してくれないかな。

リアが俺を気に入らなかったら上手く婚約破棄するから」


婚約破棄と口にする時だけちょっと顔を歪めて悲しげに目を伏せる。

そんな顔されたらなんだか悪いみたいじゃない。

それに私が狙われてるのがくっきりはっきりわかっちゃった今となってはしかたないよね。

家にいてうっかり捕まったりしたらかえって迷惑かけちゃうでしょうし。

ファビアン王子なら私じゃなくても仲間が捕まったら一も二もなく助けにきてくれちゃう人柄だってことはこの短い間でもわかったものね。


「承知しました。国の有事に私ごときの為にお手を煩わせてしまい申し訳ないかぎりですがよろしくお願い申し上げますわ」


言いながら淑女の礼をとる。


「ありがとう、リア」


「一つお願いがございます。私に護身術の一つとしてナイフ投げをご教授くださいませ」


「いや、それはリアできないよ。俺が信用できないの? 」


「ファビアン様といれば千人力なのは今回のことで目の当たりにしました。

ただそれと同時に私はファビアン様と私の命がそして関わる皆様の命がかかっている時に足手まといにだけはなりたくないと痛感いたしましたのです」


ファビアン王子の目を精一杯見つめればファビアン王子も真剣な面持ちで見つめ返してくる。


ふっと笑顔をにじませてファビアン王子が両手をあげた。


「リア、降参、そんなにかしこまらないでよ。

色々言わなくても物凄く深く考えてくれてありがとうね。

王族ともなれば姫と言えども武術のたしなみはあるからね。

そう思えば武術を学んでもおかしくはないんだけど。覚悟を強いる部分もあるし、何より俺が守りきれるって思いこんでるのは奢りだよね。

わかったドリーに講師を頼んどく」


その後運ばれてきたボリュームたっぷりの朝ごはんを食べながらファビアン王子に確認されちゃった。


「ねぇとりあえず婚約発表されても嫌じゃないくらいには、自分から武術を学ぼうと思うくらいには、俺のこと前向きに考えてくれてるんだよね??」














評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ