いばら姫館再び
短めですm(__)m
カイル達の先導でまたいばら館を目指す。追ってもいなければ隠れながら行く必要もなくなったのでできるだけ近いルートをかなりのスピードで馬車を走らせ夜遅くいばら館についた。
馬車の一団が着くなり館の主人が転がるようにしてでてきた。
「アレグラ様っ!カイル様ぁ!皆様もご無事でなによりです。いやぁ今回ばかりは気を揉みました。さぁ皆様お部屋へどうぞ」
アレグラがすっと私のそばに来て
「リアは私の部屋に来てちょうだいな」
軽くウインクしながら言うと腕を組んで連れて行かれる。
アレグラについて螺旋階段を登って行く、ドリーの後ろには当たり前のようにファビエンヌがついて来る。
気がついたドリーが冷たい声音で
「ファビアン様!しばらくリアお嬢様には近づけないと申し上げたはずですが?」
と告げれば
「悪いファビアン、我々と階下で作戦会議をしてくれないか」
困り顔のカイルお兄様が下から声をかける。
「先にリアの寝る支度を手伝ってからと思ったけど。ごめんね」
美少女ファビエンヌはとっても残念そうだけど私王子様のお手伝いは基本いらないですわ。
「リアお嬢様のお世話は私一人で十分でございます。ご自身のお召し替えをなさったほうがよろしゅうございますよ」
ドリーさんますます強いよ。
ファビアン王子がいやいや降りて行き、私達はアレグラの例の部屋へと招き入れられた。
テーブルにはお茶の用意が整えられている。
「さ、お座りなさいなやっと安心して休めるわね。疲れてるでしょうから何か食べやすいものを用意させるけどお好みは?」
さっさとソファーにその身を沈め私達にも座るよう促す。
「はい、簡単に温かいスープとパンがいただけたらもうそれだけで十分です。ドリーも座ってよ」
「いえ、私は」
案の定ドリーは仕える者としての姿勢を崩さない。
「他に誰もいないわ。今くらいいじゃない?リアってそういうことこだわらない人でしょ?私達今回の事件を共に戦う同志だわよ」
艶っぽく微笑みながらアレグラはティーカップ三つに薔薇のジャムをたっぷりいれ、香り高いお茶を注いでくれる。
それを見てドリーもそっと座った。
その後上品な味わいのマッシュルームのクリームスープにとっても柔らかい牛テールの煮込みデザートにはアイスクリームが出された。
アイスクリームなんてすごい贅沢だ。
本当にここは高級娼館と見せかけた超高級紳士クラブなのね。
出てくるお料理お味が絶品!
「よかったらアイスクリームにも薔薇ジャムをどう?一応特別なお客様しかすすめないのよ」
アレグラが惜しげなくすすめてくれるから喜んでいただく。
「薔薇ジャムの話をしたらファビアン王子に羨ましがられましたわ」
「ふふ、本当はね私自身はお客様のお相手じゃなくてクラブの運営をしてるの。だからいばら姫館でいくらお金を積んでも私には会えない。重要な情報を聞くときだけ私がこの部屋でお茶を出すのよ。その時に薔薇ジャムを振る舞うからいつのまにか噂が一人歩きしちゃったのね。
そもそも私の父はこのへん一体を治める長だった。エバイラ当時からは大小の部族が点在する小競り合いの絶えない荒れた土地だったわ。父が中心となってもう少しでこのエバイラが統一されるって時に、父が目指していた平和な統一をよく思わない勢力に両親と側近が殺されたのよ。生き延びた側近の一人がこのいばら姫館に別の場所にいた私とリュカを連れて逃げこんだのね。」
アレグラはいったん言葉を切り、優雅な手つきでお茶のおかわりをいれてくれる。
「この娼館には他の部族から逃げてきた女性が多かったわ。頼る身寄りも無い女性も沢山いた。父の統治の下他の国や集落のように不当に搾取されたり虐げられたりすることがなかったからその恩返しとばかりにいばら姫館は私達を大切に匿ってくれた。様々な女性の駆け込み寺になってたことが価値ある情報が集まることにもつながっていったの。それと同時に父の意志をついでもらいたいとリュカを次の長にと望む人達が水面下でこのいばら姫館に出入りするようになってだんだんと政治的なサロンの役目を担うようになっていったわ。そんなことが相まって今のいばら姫館があるのよ。」
うーん驚いた。
アレグラさんはただ者ではないとは思ったけど……
私がいくら領地の経営に関わってきたといえども暮らし自体は箱入り貴族令嬢&前世平和ボケ日本人の私からは想像もつかない世界だ。
「話してくださって光栄です。アレグラさんは本当はお姫様なのですね」
「ふふふ 姫なんて柄じゃないわ。薔薇ジャムの説明のつもりが思い切りひろがっちゃったわよ。リアには不思議と話たくなっちゃうのよねぇ。無駄話で遅くなったけどゆっくり休んでちょうだいな」
ドリーに寝支度を整えてもらい豪華なベッドに滑り込む、娼館を隠れ蓑にした紳士クラブだ政治的サロンだといってもやっぱり娼館は娼館そんなところに泊まるなんてドキドキするわ~と思ったのもつかの間あっという間に眠ってしまった。
「リアお嬢様、朝ですがお目覚めになれますか?」
もう朝!正直眠い。
でもみんなのほうが疲れてると思うと寝てられないよね。
「おはようドリー。」
起き上がるとさっそく熱いお茶をいれてくれるのをありがたく飲む。
「ドリーお願いがあるの」
「何なりとお嬢様」
ドリーはドレスの準備をしながらこちらを振り返る。
「今日からナイフ投げを教えてちょうだい」




