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美しすぎる侍女

「それから、その侍女はすぐに船からおろせ。

リアを手に入れる為にとりあえず黙って乗せたが、報告書と容姿が違いすぎる。

専属の侍女は武芸ができすぎて厄介だが、これは別の厄介事を持ち込みそうだ。

そんな人形のような顔で歩きまわられちゃ船の秩序が保たれん。

どこぞの姫か商売女ならそれぞれに身のふりようがあるが侍女じゃ無駄にニンジンになるだけだ。

もう骨抜きになっている奴らがいる。」


「困ります!私の大切な侍女です。私一人ではとても毎日を過ごせません!」


「侍女なら国に着いたらいくらでも付けてやる。キプロス王国に攻めこんだついでに適当なのを連れてきてやってもいい。だがその者は駄目だ。さあ連れて行け」


従者の一人が申し訳なさそうに近づいてくる。

ファビエンヌが私の後ろから耳許でささやく


「リア、走るよ」


ファビエンヌがお仕着せのスカートをめくりあげ従者が怯んだ隙に短剣を投げる。

一本、二本、一本目はシドに向けて二本目は近づいてきた従者に向かって。

低い呻き声が聞こえる。

ファビエンヌはもう一人の従者のみぞおちに拳を叩き込み、私の手をつかみ外にでて、室内に何かを投げ込んで後ろ手に扉を閉め一気に階段をかけ上る。 船尾ギリギリまで行き移動すると


「リア、リュカからもらった笛吹いてみて」


私は無我夢中で笛を吹く。


「間に合わなかったら飛び込むからね」


海面を睨みながらファビアン王子が呟く。

間に合わない?なんのこと?

甲板はまだ静かで騒ぎに気がついた者はいないようだ。

突然ファビアン王子に


「来た。リア、飛ぶよ」


と言われたとたん驚く間もなく横抱きにされて海面に向かって飛び込む。

あまりのことに目をぎゅっとつぶった。

何かに着地したような衝撃で目を開けると激しく揺れるボートに乗ったディミトリとマシューが見えた。

続いてファビアン王子が顔を覗きこんできた。


「リア、ごめん、大丈夫?」


わ、近い近い!うわぁお姫様抱っこ!


「逃げるぞ!こっちだ!」


「騒がずに静かにやれよ!」


「シド様が刺された!」


「ボートだ!」


船の上から複数の声が聞こえる。

船を見れば屈強な男達が次々と集まっている。

銃をかまえた男にディミトリが短剣を投げ、マシューが必死にボートを漕ぐ。

今度は五人が一気に銃をかまえてきた。

ディミトリが次々と短剣を素早く投げる中、ファビアン王子がスルッと私のスカートに手を入れ短剣を抜き取り一番遠いところでかまえる男に投げた。

ナイフは手元に命中し銃が海に落ちてゆく。


「ありがとうございます。私では間に合わなかったかもしれません」


ディミトリが息をつきながら言う。


「ディミトリなら間に合ったと思うけどどうしても銃を打たせたくなかったから。

ごめんねリア絶対見てないから」


う、うんいいよ、命に関わることでしたから……手際が良すぎると思っただけだよ、うん。

私が固まっている間にボートはすぐに着き、気がつくとドリーに抱きしめられていた。

カイルお兄様にリュカもいる。

皆シドの船をじっと見ている。


「攻撃してくると思うか?」


誰ともなしにカイルお兄様が問う。


「さすがに今突然に開戦とはいかないだろう?」


リュカの声


「ええもちろん、表向きはただの食料と燃料補給の停泊だったんだから」


リュカの後ろから物憂げにアレグラさんが答える。


「アレグラさん!!なんで!どうして?よかったぁ」


「昨日の夜の内にファビアン様に出してもらったのよ。

朝おこさないでって見張りのお兄様に言っておいたけどまだ気がついてないんでしょうね。

あの船のお兄様達って女に甘いわよねぇ」


はぁ、ファビアン王子の出来すぎには驚くばかりです。


「シドはかなりの深手を負った。

このまま一旦引くだろうが次はまともに戦争に突入してしまうな」


「先にしかけてきたのはマシリト国側だ。

それもかなり卑劣な方法で。開戦はいたしかたないかと……」


カイルお兄様が答えている間にシドの船の帆が次々と張られて出航準備をはじめたようだ。

ユレヒト港を歩いているひと達はあの大きな船の海に向かった船尾で起きた騒動には気がついてるとは思えない。


「俺達も帰っていつでも迎え撃てるよう準備するしかないな。リュカ、共に来てくれるか?」


「もちろんでございます。ファビアン王子」


私達は一路キプロス王国へ帰ることになった。









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