静かな出迎え
書状には3日以内とあるだけで特に時間も細かい場所指定もないのでとりあえずわかりやすく広場を超絶美少女のファビエンヌと歩きだした。
夕暮れのユレヒト港の広場の先は船着き場で大小様々な船が停泊している。わりと人通りも多くもっと小さな港を想像してた私は内心驚く。
こんなんで私達敵様に見つけてもらえるのかしらん?
そんな私の心配をよそにファビアン王子の口許がなんとなく緩んでいるように見えるのは気のせいだろうか?
「リア、初めて二人で出かけるね。楽しい小旅行にしようね」
いい笑顔でにっこりするファビアン王子は美少女が可憐に笑っているようにしか見えなくてなんだか疲れる。
「これをお出かけと言うの……?」
「ほんとはブルーテ王国で気兼ねなく色々お出かけして俺のこと知ってもらおうと思ってたんだけどね。ちょっと趣向がかわっちゃったけど二人だけで出かけるのはこれが初めてだからね」
「ええ……っとファビアン?とてもお出かけなどと言ってられるような状況ではないように思うんだけど……?!」
「リア、どんな奴等が待ち構えているかわからないから少しは不安に思ってるだろうけど、俺のこと信じてくれてるからこの作戦を提案してくれたんじゃないの?俺リアに信頼されてると思ったらめちゃくちゃ嬉しかったんだけど。リアのことはかすり傷一つつけずに守ってみせるよ」
もう一度きれいに笑顔を作るファビアン王子を見てなんだか遠くを見つめたくなる。
このヒトかなりの天然だったのかしらん。
今、私たちはまさに敵陣に乗り込もうとしてるよね?!
「ほんと、絶対守るから楽しもう?俺、おやつも持ってきたし」
そこ?!
なんだか脱力しつつ広場の中央にさしかかると後ろから声をかけられた。
「失礼いたします。ギーズ公爵令嬢とお見受けいたします。わが主のもとへお連れいたしましょう」
振り返ると13、4歳くらいに見える身綺麗な男の子が立っていた。
赤茶の髪に緑色の瞳のその子は続けて言う
「わが主は知性に溢れるお方、直接危害がおよぶことはございません。アレグラ様もお待ちかねです。さあ、あちらでございます。」
男の子は港の中で一番大きな船へと向かって歩きだす。
ファビエンヌをちらりと見れば小さく頷くのでそのまま後をついて行く。
船の前にはさらに二人の従者が立っている。
二人とも身長が高く日に焼けた肌に赤茶の髪色で同じく緑色の瞳だ。
シャツの胸元や折り返した袖からでている腕から相当鍛え上げているのがわかる。
さっそく恐いわね…と思う間もなくファビエンヌが私の腕にすがりながら
「お嬢様、やはりこんなこといけませんわ。お嬢様にお辛い思いをさせるわけにはまいりません。もどりましょう」
ファビエンヌを見てぎょっとした。
眉を寄せいまにも涙をこぼしそうに盛り上がらせながら震える手で私を引き止めるこの可憐な美少女は誰?!っていうかあなたがお嬢だわっ!そんな潤んだ瞳で見つめないでぇぇ
「侍女殿が心配するのも無理はないでしょうが、一国の王女様をももてなせるほどの万全の体制でお迎えいたしますのでご安心くださいませ。」
男の子が落ち着いた口調で、有無を言わせない雰囲気で言いきる。
従者の二人はファビエンヌの可憐さにあてられたようで日焼けした顔が真っ赤になって赤黒く見える。
なるほど、あんまりにも淡々としすぎもおかしいわよね。
私も後れ馳せながら、ファビエンヌの腕にすがりつき返しふるふると頭をふってみる。
ついでに小首をかしげながら男の子を見てみる。
とたんに男の子は顔を赤らめながら
「ほ、本当に快適にお過ごしいただけますので…」
あら、さっきはずいぶんしっかりして見えたけどやっぱり年下ね、可愛いわ。
思わず微笑みそうになるとファビエンヌが私をぐいっと引っ張って進みだした。




