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リアの目覚め

ファビアン王子は低く深みのある声でさらに言葉を続ける


「敵は我々の想像を越える新たな手法を使ってくることも考えられる。十分気をつけ無理はしないこと。またできるだけ表沙汰にしないよう動きすみやかに解決させたい。よろしく頼む」


ちょっと派手なお仕着せを着てとんでもない緑色のマッシュルームヘアでも、ファビアン王子は気品があり自然と人を従わせる存在感を放っている。注意を引くでも特別に大きな声をだすわけでもないのにここにいる全員が彼の声に耳を傾け頭を垂れている。




私も圧倒された。彼は紛れもなくこの先一国の王となる器だ。他国の精鋭を目の前にいきなり指揮を迫られてもなんなく自分が長であると自分の放つオーラだけで回りを納得させられるのだから…私は彼のことほんのさわりしか知らないんだな。…そして事態はかなり緊迫していることを急に実感する…この問題が解決しないと…のんきにこの世界を眺めて楽しむことなんかできないんだ…。前世の記憶が文明が発達してる上に平和だったことと、公爵家に生まれて結局は箱入りだったのが都合よくブレンドされた上に令嬢のすることならなんでもこなせてしまった私ってこの世界できちんと生きたことないのかもしれない…もう、もう傍観者じゃいられない…。きちんと自分の足で立たないと、意思を持って生きないと、死んだら何もできない!今この世界だって紛れもない現実なんだ…。みんなに命をかけて守ってもらってるのに私の認識の甘さといったら…!


「リア様?…リアお嬢様、顔色が悪いですよ?お部屋で休みましょうか?」


まざまざと色々が見に迫り顔面が蒼白になった私をドリーがいち早く気付き気遣ってくれる。


「大丈夫よドリー、改めて色々と実感しただけよ」


「リアお嬢様、ご令嬢としての生活にはない事態に驚きと不安があられるとは存じますが、私がお守りいたしますのでご安心くださいませ」


ドリーが相変わらずの言葉をかけてくれる。


「ドリー、私のセリフを奪わないでおくれ。リア、必ず守ってみせるから心配しないで。私達はこれからお互いの情報のすり合わせと作戦を練るよ。リアは部屋で休んで」


いつのまにかファビアン王子が横にきて私の顔を覗きこむ。


「ファビアン、私今まで甘かったわ。私の願望を叶える為にはまず目の前のこの問題をクリアしなくちゃいけないわ。人の生死がかかっているんですもの。命をかけて守ってもらうばかりでいるわけにはいかないわ。私も会議に同席させて!私にもできることがあるはずです」


ファビアン王子、カイルお兄様、ドリーが一斉に瞠目し私を見つめ言葉を失う。


そうよ自分の人生だもの、管理を人任せにしてられない!いきなり戦闘スキルは身に付かないにしても情報は押さえておかなくちゃ。前世の知識が役に立つことだってあるかもしれないよね。一方的にありがたく守られるだけなんて!!


ファビアン王子が慌てて強い口調でゆっくり言い聞かせるように言う


「リア、あぶないことをさせるつもりはまったくない」


「わかっているわ、私も自分を守ることさえできないのはよくわかってます。でもだからこそ現状を知って万が一に備えたいのです。事情を知らずにただお荷物になりたくありません」


眉間にシワを寄せ長い指でこめかみを押さえながらしぶしぶ頷くファビアン王子にリュカが野性的な黒い瞳をきらめかせながら


「さすが王子が見初めた方だ。我が姉と気が合うのがよくわかる。会議だけなら歓迎では?ご令嬢を戦場に送り込むわけではないのですから。もしかすると私達の盲点をついた作戦などご提案いただけるかもしれない」


と言う。


「もちろん私共もリア様をお守りいたしますよ。さあ会議をはじめましょう。こちらへ」


付け加えて私を見つめた。

なんとなく視線を外すことができずそのままリュカにエスコートされる形で先ほど食事をとった部屋に戻る。


ファビアン王子にカイルお兄様、ドリーにテオ、ディミトリ、マシューそして私。リュカ側はリュカとリュカの側近が五名で会議ははじまった。


テーブルの中央には周辺各国が記された地図が広げられている。なんとなく空気を読んだカイルお兄様が進行役を買ってでる。お互いの情報をすり合わせた結果わかってきたのはキプロス王国側はファビアン王子に対して、リュカのデザルク軍はリュカに対してそれぞれ同時期から襲撃がはじまっていたこと。当時は暗殺を疑っていたが今回の襲撃でいずれも真の目的は誘拐だと思われること。至近距離から吹き付けて眠らせる特殊な煙幕のようなものや即死に至る毒などこちらの近隣諸国にはない発達した技術を持っていること。襲撃した者達が誘拐に失敗したとたんにためらいなく服毒自殺したところをみると首謀者はかなりのカリスマ性か恐怖政治を行っているものと思われることなどだった。


その他リュカ側からは先ほど告げたようにブルーテ王国がその首謀者に援助をしているらしいとの情報が、ファビアン王子はリュカのデザルク軍の早馬にマスクをよく調べることと貿易船と見せかけた船での援軍と陸路での小隊の援軍を要請していることが上がった。


「さて、では本題ですが結局人質引き渡しの細かい場所も時間も指定されてないがどうしたものか…皆様何か案がございますでしょうか?」


「無知で申し訳ないのですが、ユレヒト港は大きな港でしょうか?」


私は令嬢が発言したことに回りがぎょっとするのもかまわず質問する。


「ある程度の大きな船もつけられるが、そこまで大きな港ではないですよ」


リュカがすぐに答えてくれる。


「でしたら私が囮になって港を歩きまわりますわ。派手に着飾っていればあちらで見つけてくださいますわ」


「ぜ、絶対駄目だっ!!」


ファビアン王子が叫べば


「囮なら私がっ!」


とドリーも叫ぶ。


「なんの手掛かりもないんですもの、これしか方法が思い浮かびませんわ。私も一人でとは申しません。」


「リアお嬢様、私がっ」


「いいえ、ドリー、あの馬車での襲撃であちらはあなたのかなり正確な情報を持っていることがわかったわ。私が何もできない令嬢だと認識していることもね。そして突然登場したファブについてもまだ知られていないと思うの。あの襲撃で彼らはカイルお兄様と私を狙ってきたから。ファブがファビエンヌになればもっとわからないわ」


いち早く理解したリュカが肩をふるわせて笑いだした。私は真剣だ。固まっているファビアン王子に訴える。


「ファビアン様、敵を完璧に欺く為にどうかメイドとなって私と敵地へ乗り込んでくださいませ」


















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