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黒髪の誓い

館の主人がカイルお兄様に向かって


「皆様がご出発されてから覆面の男がまいりまして、戻られたらこの書状をお渡しするようにと申しつかりました。そして私共は何かを吹き付けられ眠ってしまいまして…気がつきましたらアレグラがっアレグラがさらわれておりましたっ!!」


「先ずは書状を見せてくれ」


カイルお兄様が書状を開く


「『リア・アルベルティーヌ・ギーズの代わりもしくは話し相手としてアレグラ嬢を連れて行く。ファビアン王子は三日以内に到着のこと。物理的な距離により難しい場合はつなぎとしてカイル・セレスタン・ギーズもしくは連れていけなかったリア・アルベルティーヌ・ギーズを三日以内に差し出すように。ファビアン王子は遅くとも六日以内に必着。三日以内に先ほどのいずれかの人物の

引き渡しが無い場合、アレグラ嬢の命とキプロス王国の孤児院を三つ焼き払う。


場所 ダルマリンド国のユレヒト港 本日より三日以内』…これだけしか書かれていない。

ダルマリンド国のユレヒト港はここから丸二日はかかる。しかも今日を入れて三日だ。すぐに出発するべきだな」


館の奥から数人の従者を従えた見たところ若い男が歩みよってきた。


「私も連れて行ってくれ!ギーズ公爵家のカイル・セレスタン・ギーズ様、私はアレグラの弟リュカ・ヴァンソン・デザルグと申します。私の亡き父を継ぎこの館周辺と近接しております三つの村を統べております。この度のことは私の落ち度でもございます。またアレグラは我が姉です。さらに姉が持つ情報が知れましたらどのような混乱が起こるか計りしれません。ファビアン王子には水面下で助けていただいた恩もございます。王子が姿を隠されたことでこの館でも不穏な密会が増えつつございます。私は今この周辺の国々の均衡が崩れることが最も心配です。微力ではございますがお力になれればと存じます。」


リュカと名乗るその男はアレグラと同じ見事な黒髪をひとつにまとめ長めの前髪がいく筋か額に流れ、彫りが深めの顔立ちに黒い瞳が野性的に輝いている。

身長は高くゆったりした白いシャツの胸元から程よく筋肉のついた胸板が覗き、

手の込んだ刺繍が施されたサッシュベルトを締めている。なんとも言えない色気の漂う立ち姿は優雅な黒豹を思わせる。


「正直ありがたい。だが疑いたくはないが、共に戦うとなると互いに命を預けるようなものだ。信用に足る証明をしてもらえるだろうか」


カイルお兄様が射るような眼差しでリュカを見る。


「御意。剣を…」


リュカは従者から剣を受けとると方膝をつきその場にいる一同を見渡し


「お隠れになっているファビアン王子への忠誠を誓い、我が姉アレグラの無事を祈ってこれを捧げる…」


そう言って頭を垂れると剣を一ふりし見事な黒髪の束を根元から切り取ってしまった。


「…うぅ長の証が…」


リュカの側近らしき茶髪の男が思わず声を漏らした。


皆息を飲んだ…。


髪の毛を長く伸ばすのは貴族やその国の高位についているものにしか許されない。

統治が上手く進んでいない国や集落になるほどその集団のリーダーは髪を長くすることに拘るのが常だ。

それ故ファビアン王子が美しいプラチナブロンドをおかしな緑色に染めカットしてしまい披露した際にはカイルお兄様はかなりの衝撃を受けていた。

ちなみに極限まで短いと奴隷の印となる。


「一兵卒となりこの戦いに力を尽くす所存だ」


すっと立ち上がり鮮やかに微笑むリュカ。


カイルお兄様がファビアン王子をちらりと見ればファビアン王子がわずかに頷く


「その誓いと祈り確かに見届けた。共に戦おうリュカ・ヴァンソン・デザルグ」


二人は固く握手を交わす。


「二十人ほどの小隊だが出発できるよう準備できている。道案内は我々のほうが明るいと思う。指示をくれるか?」


「さっそく出発したい。もちろん案内もよろしくお願いしたい。それからキプロス王国に使者をやり届けたいものがある。そちらより使者をだしてもらうことは可能だろうか?」


「一番の早馬をだそう。」


「感謝する。では出発しよう」

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