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いざ出発

「お嬢様、おはようございます。申し訳ないですが、お目覚めの時間でございます。」


う、まだ、暗い。

ベッドが居心地よすぎて、

起きるのがつらいわ。


「今日の目的地のサイグラまでは急いでも夜までに着くのが難しい距離です。

さ、お茶を飲めば起きられますよ」


ありがと、ドリー 。

起きますよ、起きますとも。

急いで着替えて階下へ降りれば、

お父様とお母様も見送りの為に起きてきてくださる。朝ごはんだとジルベールが、バスケットを渡してくれた。

屋敷の前には三台の黒い馬車が止まっていた。

三台目の馬車はかなり大きい。

一台は私とドリー。

もう一台はお兄様とお兄様の従者のテオ。

もう一台は荷物、確かに大きい馬車だけど、

あの数のトランクほんとに入ったのかな?

まいっか。


お父様、お母様と

使用人の皆様に見送っていただき、

暗いうちに出発した。


外側はあんなに地味なのに馬車の中はとっても豪華。

めちゃくちゃ座り心地いいんですけど。

やっと落ち着いてきたので、

ドリーに疑問をぶつける。


「ドリー、教えてくれない?

私はあちらで何を学ぶの?

お兄様とファビアン様が一緒にいても不思議はないけど、いくら、異国で知っている人が少なくても、私ってどういう存在で行くの??」


つぎつぎとサプライズに襲われて聞く間もなかったけど、私何するの?どうするの?


「リアお嬢様は何も心配することはございませんよ。ブルーテ王国は様々な産業が盛んですが、

昨日のお下着のみごとなレース、

あれもブルーテ王国の代表的な産業の一つでございます。それから宝石のとれる鉱山が多数あります。因みに昨日の宝石もブルーテ産とお見受けいたしました。それらの見学等々、カイル様と一緒にしていただくのでございます。」


「…ファビアン様は?」


「常にご一緒かと」


「だからぁ、ファビアン様がいらっしゃると

国賓対応とかになっちゃって、

私がそばにさりげなくいるのは難しくない?」


「ご心配いりません」


しれっと言われても腑に落ちないがこの調子では同じやりとりのループにはまりそうだから、

黙ってサンドイッチを頬張ることにした。


「サイグラの宿ではファビアン様と合流することになっております。畏れながら今回の留学中はファビアン様のお世話をテオと共に私もさせていただくことになっております。いかにファビアン様と言えども、私はリアお嬢様最優先で動きますのでご心配なく。」


いや、そこはファビアン様優先じゃね?

ツッコミたいけどまた不毛な会話になりそうだから、いい香りのアップルパイにも手をのばす。


てっきりブルーテ王国で会うことになるんだと思ってたから、心の準備ができてないな、

あのプラチナブロンドをかきあげながら微笑むと

破壊力抜群だからな。


いまから心のセキュリティを強化しとこう。


気がつくとすっかり日が高くなって道の両側に広がる草原の草花に朝露が光っている。


「こんなに遠くに行くのははじめてよ」


「私はオディール様にお仕えしておりました際に何度か…ですが、このように王妃となられる方をお守りする重要な任務を帯びたお供は、はじめてでございます。」


「それはまだワカリマセン…っ!」


「いかなるご決断をくだされましても、私はリアお嬢様について行きます。」


いや、本当の雇い主、ファビアン様ですからっ!


「気持ちは嬉しいわ、ドリーありがと」


早起きと軽い疲れからか、馬車に揺られ睡魔に勝てず、すっかり眠ってしまった。


「お嬢様、そろそろお目覚めくださいませ…リアお嬢様」


あれ?朝?って夜ぅーっ!

馬車の中でプチパニックな私。

お昼にも起きないでずっと眠りっぱなしで、

サイグラの街に入ってしまった。


あわてて馬車の窓から外を見るけど前後の馬車のランタンの灯りが目に入るだけだ。


「もう間もなく、今夜の宿に着きます。ファビアン様もお待ちです。」


「あら、ドリー、私ずっと寝ちゃって、色々おかしくない?」


「お髪のカールもまだとれてませんし、よくお休みになられた後で、お肌は艶やかでございます。」


私が眠ってしまうのお見通しだったのか、今日は毛先をゆるく巻いただけで、

そのまま降ろしている。

ドリーは、

少しお直ししましょうと言ってカチューシャをさしてくれた。


馬車が静かに止まった。

宿屋ではなく、誰かのお屋敷みたいだ。

暗い中で目を凝らすと、

なかなか大きい屋敷だ。


「お昼に起きてこなかったね、秘密にしておいてやるよ」


カイルお兄様が笑っている。


「お好きにどうぞ、お兄様。」


そんな事ばらされても痛くも痒くもないし。


屋敷の扉が開き、

この屋敷の執事らしい初老の男性がにこやかに声をかけてくる。


「皆様、ようこそおいでくださいました。どうぞお進みくださいませ。」


貴族は、その土地によっぽど設備の整ったホテルでもない限り、小さな街ではその土地の貴族や名士の屋敷に泊まることもよくあるが、ここはファビアン様とつながりがあるお家なのかしら?


「ファビアン様のお屋敷の一つでございます。お楽になさってかまいません。」


ドリーが後ろからささやく。

そうですか思えばここって国の端だもんね。

そんなに大きくない客間に通され、お茶がでてくる。


先ほどの執事が入ってきて

なんとも言えない表情で


「お二方へご紹介させていただく従者がおります。」


ぬっと背の高い男がうつむきながら入ってくる、


その姿に私は慌てて口を押さえる。

濁った沼のような緑色の髪、しかもマッシュルームカットのような感じで前髪が顔の半分を隠さんばかり、なんとも異様だ。


もうちょっと短く刈るかどうかしたらいいのにと

思いつつ、私は不気味なマッシュルームを見て笑いをこらえるのに必死だ。


「そんなに面白い?リア?口が笑っちゃってるよ?」


自身もくすくす笑い、

肩を揺らしながら、

前髪を長い指でかきあげ、

あのブルーアイでこちらを見つめてくるのは、

ファビアン王子その人であった。









































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