恐怖と異変
、、、おかしい。確かに私は森を出た、でも今、私は森の中にいる。それにさっきより深いところ。あたりを確認しようと木に登ろうとするけど、木が高すぎて登れない。魔法科学も封じられているようで使えない。
体力回復のために小一時間ぐらい背中を木に預けもたれる。喉が渇いていたが、水の音が一切ないので諦めた。
休憩を取ったところで私は気付いた。1時間前と空の様子が全く変わってないことに。いくらまだ半袖でも過ごせるからといってもそろそろ11月に入る。鬼遊戯が16時に開始されてから時間がわからないけど休憩で1時間取ったはずだから暗くなってなきゃおかしい。けれど、まだほんのり明るいし、2時間程で終わるはずの鬼遊戯が終わらないのもおかしい。
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「ねえ、死んでよ」
刃物を持っている夏希の手が震えているのがわかる。
「ヒトリハ、サビシイノ」
夏希の顔がわからないことに気づかない僕がいた。
夏希はガタガタ震える手を無理やりおさえて歪んだ笑みを浮かべて一歩一歩ゆっくり大股で近付いてくる。僕は強い恐怖を覚えて一目散に逃げ出した。しかし、夏希はやっぱり僕の前に現れて逃げ場をなくした。
「アンタを殺したら次はあの女」
夏希が指差す先にはチハが頭を抱えて唸っていた。
「チハッ!」
ハッと伊藤が頭を上げ僕を見る。その目には涙が溜まって今にも流れそうだ。
「周りを巻き込むな!」僕は叫ぶ。
夏希はにたぁと笑って刃物を振りかざす。その手はごく僅かな時間だが停止(一時停止)した。そのスキをつきタックルして夏希の手から離れた刃物を自分が持つ。夏希は少し転んでから手に持っていた刃物の有無を確認すると同時に僕の足を掴む。
僕は思わず、持った刃物で夏希の手を軽く切る。手の力が緩んだ瞬間に伊藤の所に駆け寄る。
「何もされてない?」
伊藤は静かにうなづく。
「よかった。逃げるよ、立てる?」
手を差し伸べて言うと返事の代わりに手を置いたから立てるみたいだ。
ゆっくりだけど伊藤が立つのを確認して僕らは夏希から逃げようと森の中を走る。
でも、夏希は必ず僕らの前に現れる。その度に伊藤はヒッと小さく悲鳴を上げる。
「チハ、大丈夫。僕が守ってあげる、から」
途中で気づいた事だけど僕が伊藤のことを昔のようにチハと呼ぶと安心した顔を見せてくる。
幾度となく繰り返される夏希との追いかけっこ、これは本当に鬼遊戯だと感じていた。チハから御子柴さんに連絡を取ったと言われたけど一向に助けが来ないこの状況では夏希と御子柴さんが手を組んだという仮説が生まれるけど御子柴さんは夏希に怯えていたことを考えると無しになる。
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俺は連絡のあった森にいる。俺の他に柚原先生や他十名の先生方が二人組を作り深山と伊藤さんを捜している。
現在時刻は21時。鬼遊戯が開始されてから5時間が経過していた。連絡があったのは20時、それから先生方に連絡してパーティーをお開きにして生徒たちを送り届ける先生と二人を探す先生に別れた。
三戸学園の教員は特殊なのだ。なにせ先生10人で生徒300人を10分で捕まえるのだから---。
そんな特殊な先生方の中からより優れている先生を選び二人を探すのを手伝ってもらう。無論、ほかの生徒を送り届ける役目を担っている先生方にも役目が終わり次第手伝ってもらう。
「御子柴さん、本当にこの森なんですか?」
先程から同じ質問しか来ない。
「本館が見える森はここしかないだろ」
学園にある森にも区画があり、本館が見える森は一つしかない。本館はほかの建物より少し高めに設計されているため寮や初等部にある森からも見えるが本館廊下が見えるのはここしかない。にも関わらず二人は見付からない。俺は見落としてる部分がないか目を凝らしながら探すと同時に伊藤とのやりとりを頭の中で繰り返す。 と、一つの疑問が生まれた。




