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オンライン2.5  作者: 玄浪
学園生活
7/26

合流

やっとのことであの混乱から抜け出した。捕まった生徒はB棟(中等部がある棟)を挟んだ向こう側、中庭に集められている。今いる場所からグラウンドが見える。少し移動すれば中庭がある。グラウンドにはもう誰もいなくて混乱によってばらまかれた支給品が何十と転がっている。

僕はこの時ばかり自分が小柄なことを自慢に思った。

時計を見ると始まって30分が経っていた。


『おやぁ?開始30分にも関わらず多くの生徒が捕まっていますね。300人ですか、残りは1700人ですか、、、』


先生10人で300人も捕まえるって、、、

僕は静かに素早くグラウンドに散らばっている支給品を2つ手に取り寮に走る。


寮へ向かって走っていると支給品に連絡が入る。


「、、、はい」


恐る恐る、出る。


『その声は深山!?』


「春木さん!」


『一人か?』


「はい。寮で待ち合わせしてる、です」


『伊藤とか』


「え、はい。春木さんも一人です、か」


『ああ、さっき先生と鉢合わせしてな。賢木とはぐれた。あいつも支給品を持っているから連絡取れるかと思ったが、、、まさかお前だったとはな』


「僕はさっき支給品を持った、です」


『さっき?』


「はい。誰も居なくなったので、その隙に二人分、、、すいません。一旦、切ります」


断りを入れ、支給品の通話を切ると同時に右に避ける。


「鬼です、ね」


捕まるといけないので避けた瞬間に草むらに入る。

草むらの何処かにいるのか分からないように音を立てないように移動してさっきいた場所を見る。


「素早いね、君」


鬼の声は後ろから、、、振り向く前に逃げ出す。危ない!


横から誰かが飛び出し、僕を突き飛ばす。


「!?」


鬼も僕もびっくりして一瞬、、、数秒だったかもしれない。けど、確かに止まったんだ。


僕を突き飛ばした人を見ようと立ち上がり振り返る。


「松風、、、」


「ごめん。でも、深山が助かってよかった」


「まつ、、、かぜ、、、」


「ほら、急ぎなよ。伊藤さんが待ってるんだろ?」


「松風ッ、、、ありがとう!」


僕は松風に助けられたんだ。伊藤がいる方向へ走り出す。全力であの鬼に捕まらないように、、、

走り出したとき涙が出たのが分かった。

クラスに馴染めなかった松風。僕はそれを見て話しかけた。僕もそこまでクラスに馴染んでなかったから。同情してないって言えば嘘になる。だって初めは同情して声かけたんだから。

でも半年間クラスで仲良く過ごしてた松風は単なるクラスメイトではなくなっていたらしい。クラスメイトでなく友だちに、、、

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


寮が見えるところまでやってきた。鬼は一人も見えない。後ろを見ても追ってきてるという雰囲気はない。

見つからないように伊藤を捜す。

寮周辺は森になっていて寮自体を隠すように木々がある。


ガサッ、音がした。

近い。耳を澄ませる。


「伊藤?」


小さな声で聞く。


「翼くん?」


小さな声で返ってくる。

僕は音がした方へ進む。そこに伊藤はいた。小さな身体を丸めより小さくして辺りを見ていた。

僕はクスッと笑ってしまった。

それを笑うなと怒られる。


「でも、ここまで無事に来れてよかった」


伊藤がホッと胸を撫で下ろす。


「伊藤も捕まらなくてよかったよ。謎解きに時間がよりかかったろうからね」


「---」


「何?」


伊藤がなんか呟いた気がする。


「--何でもない!行くよ」


「なんで怒ってんの?」


「怒ってない!」


何か悪いことしたかな。


寮近くの森を使って本館が見える所まで移動した。

やけに静かだった。


「様子見てくる」


「あ、うん。気を付けて」


音もなく静かに伊藤は森を出た。

僕はその様子を息を殺して見守っている。小柄な体型を活かして警護課に居るのだろうけど傍からみたら只のか弱い女の子だ。昔、僕は小さくて可愛い伊藤をチハと呼んでいた。千春のチハ、可愛いチハにはぴったりのあだ名だ。でも離れている間に彼女は成長していて(当たり前だけど)チハと軽々しく呼べなくなっていた-―。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


翼くんは未だに乙女心を理解してない!私は昔から彼のことが好きなのだ。鬼遊戯(おにごっこ)のおかげで久しぶりに二人きりになれて嬉しかったのは私だけだった。彼はなんともない顔をして私の手を取った。インドア派のくせに行動力があって頼りになる。その気になれば周りのみんなに恰好いいって思わせることもできそうなのにそれをしないのは私のためって思った時期すら私にはあった。


「翼くん、、、---」


“好きです”その言葉すら私は伝えられない。昔は“大好き”って簡単に言えたのにな。


おっと、今の私にはやるべき事があるんだからしっかりしないと。

魔法科学は理論上ではなく実際に使える。相当量の練習が必要になるため現状使うことのできる人間は少ない。私はその魔法科学を使うことのできる人間なのだ。将来、魔法科学を発動させられる過程と時間をとばす機器が開発されたら使える人間は多くなるだろう。


靴にトリガーをかけ私がそれを外す言葉を口に出せば脚力がアップする。それが今の私に使える魔法科学だ。


もう一つ、懐から遮光率が低いサングラスを出してかける。サングラスにはあらかじめ魔法科学がかけられている。これは遠くのものを見ることができる。そうして見ると本館廊下に5人の鬼がいる。鬼はこちらに気付いていない。私は先程翼くんから渡された支給品を使って連絡を取る。


「翼くん」


『なんかあった?』


「本館廊下に鬼が5人」


『他には?』


「他にはこれと言ってないよ」


『少ないな。ありがとう、一旦戻っておいで』


通信を終了した。


私は翼くんの言う通り一旦戻ることにした。



戻るために入った森で違和感を感じた。誰かに視られているという違和感を。


木を伝って翼くんの上まで行く。周りに鬼の気配がないことを確認するために目をつむる。


「ミヤマツバサ」


「その声は、、、夏希」


夏希、初めて聞く名前に衝撃を受けた。私は翼くんと他の人より多くの時間を共にしてきた。翼くん一家が事故に遭い、学園で再開するまでのおよそ5年間の彼を知らないけども御子柴さんを通して私は彼を知っている。事故に遭ってからの彼は御子柴さんと共に暮らしたと中等部に入ってからは寮暮らしになったことを私は知っている。

涙が頬を伝っていた。一言で言い表せられない感情が涙となって出てきた。

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