テスト
御子柴さんからゲーム化の話(論文を現実の世界に、、、)を受けた僕は開発を進めた。
平日は学校で授業を受け放課後は大等部の研究室へ行き先輩方の力を借りながらナーヴギアVRの開発。休日はゲームシナリオ、設定の作成を繰り返した。
ゲームの世界設定は元々僕が考えていたものがあったからそれに手を加えた。
シナリオはその世界設定に付け加えるような感じでストーリーを考えた。幸いにも学園の生徒の中に有名なライトノベルの小説家がいたから手伝ってもらったりもした。
御子柴さんの仲介で大手のゲーム会社も紹介してもらい準備は整った。
「深山、来週からテストだろう。勉強はしてるのか?」
「え?」
カレンダーを見ると10月の半ばだった。1ヶ月近く僕はPCに向き合っていたことになる。
「学校で授業を受けてるから大丈夫だと思うです、、、よ」
目が少し泳いだのが分かった。
御子柴さんはため息をついた。そしておもむろに携帯を取り出すと電話をかけ始めた。
「もしもし。はい、御子柴です。お世話になっております。実はですね、、、はい。申しわけないと思っております。はい。いえ!そんなわけには、、、そうですね、終わるのが2週間後ですね。、、、はい。失礼します」
電話を切ると僕の手を取り別の部屋に移動した。
「どうしたんです、か」
「テストが終わるまでお前はパソコンに触るな。大等部にも行くな。分かったな」
僕はショックを受けた。テストが終わるまでPCに触れないということは作成期間が長引くということ。
「なんで、、、!」
「お前の成績を見た」
僕は思わず息を呑んだ。御子柴さんに呆れられたのかと思った。僕の成績は中の下。論文が上手く出来たからって成績がいいってわけじゃない。ただ、国語が得意科目でPCとゲーム制作に同世代より詳しいだけ。
「時任さんと話した結果、今度のテストで平均点以上取れなきゃゲーム制作をしばらく休んで学業に専念すること。いくら学園がエスカレーター式だからといって国語以外がCランクなんて有り得ない。社会なんてDランクじゃないか」
僕は思わず目を逸らした。
学園では独自の成績表示をする。
Sランクは素晴らしい、Aランクは良くできました、Bランクは平凡、Cランクは頑張りましょう、Dランクは問題外。
エスカレーター式の三戸学園では上の学年に上がるための成績が段々と難しくなる。大等部に行けるのはSランクが英数国理社の5教科で3つ以上残りがAランク以上。だから大等部に行けるのは一部の成績優秀者だ。高等部は、、、
「高等部に行けるのはBランク以上、Aランクが3つ以上だ。深山は国語以外頑張らないと駄目だ。特に社会!それと忘れてないだろうな」
「何をです、か」
「重要5教科以外にも保健、家庭科、情報の3つがあることを、だ。情報は大丈夫そうだが保健・体育、家庭科も問題だな」
「うっ、、、」
「、、、今日はもう遅い。明日から勉強会を開く。俺が特別に教えるから食堂来いよ。それと、テスト終わるまでお前は自分の部屋に帰れないから」
言うだけ言うと、御子柴さんは帰っていった。
「自分の部屋に帰れない」僕はその言葉を疑ったがそれが現実と思い知らされた。
僕の部屋には特別な南京錠が掛けられていてどうやっても部屋に帰れそうになかった。
「深山くん」
突然後ろから声をかけられた。振り向くと柚原先生だということがわかった。
「先生、、、」
「ごめんなさいね。やりすぎだって言ったんだけど、、、」
「いえ、、、」
「ちょっとついてきてもらってもいいかしら」
「はい」
このままここにいても部屋に入れないから先生について行くことにした。
「この部屋使ってね。御子柴さんが用意してたのよ」
そう言って渡してきた鍵を使って部屋に入ると緑や青で統一された室内があった。集中力を持続させ、気持ちを落ち着かせてくれる色を使っているのは僕にでもわかる。
御子柴さんのやり方はやりすぎのような気がするけど、心配されていることが良く分かる。
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つぎの日、HRの時間に配られた紙を見た。珍しく朝に配られたプリントには『来週から始まるテストのための勉強会』と書かれていた。そこにはテストのスケジュールも書かれていた。
『10月27日~30日
27日:1時間目英語、2時間目社会
28日:1時間目算数(数学)、2時間目保健・体育
29日:1時間目理科、2時間目家庭科
30日:1時間目国語、2時間目情報
今回、いつもより範囲が広いので皆さん頑張ってください。
放課後の時間を使い勉強会を開催します。
場所は食堂です。
テストまでの僅かな間ですがBランク以下の生徒達は是非参加してください。
学園長 御子柴直保』
「このクラスの半分がCランクを一つでも取っている。この機会に勉強会で成績を上げてこい!担任の俺が保証する。お前らは努力すれば成績が上がる。教えるのが上手い先生なら尚更だ。頑張れよ!」
担任がクラス全体の士気を上げる。
教室のあちこちから「おっしゃー、頑張るぞぉー!」「やるべさ!」「御子柴さんが教えてくれるのかな??」と盛り上がる声が聞こえる。
「おーい、落ち着け。HRまだおわってないぞー」
担任がみんなを落ち着かせてからHRを終える。
1時間目の準備をしていると連絡が入った。携帯を見ると『お前は昼休みも勉強会だ。学園長室に来い』と表示されていた。
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ノックをしてから学園長室に入る。
「お、ちゃんと来たな」
僕は筆箱と弁当を持ってきた。
「来いと書いてあったです、からね」
僕らは弁当を食べてから勉強を始めた。御子柴さんが取り出したのは全教科の復習プリントでまず僕がどれだけわかっているかを知るためのものだった。
復習は一教科に付きB5サイズが3枚の比較的まとまっていた。がそれでも25枚まとめて渡されるとやる気をなくす。
「そのプリント、明日までにやってこい」
明日までならなんとかなりそうだと思っていたけど。
放課後、寮に戻って取り組んだ復習プリントは予想以上に難しく、あまり解けなかった。それでも社会と数学を除く他の教科はほぼ埋まった。社会は経済問題はほぼ埋められたが歴史問題が全く埋まらなかった。
理科も同様に化学系、地理系の問題は埋まったが生物系、電子系が埋まらなかった。国語に至っては全て埋めることができた。ただ、漢字の読み書きが数個空欄だ。
次の日の昼休みまでに解くことが出来たから持っていくと御子柴さんは仕事で居なかった。
放課後、食堂に行くと席が全て埋まっていて皆、成績を上げようと頑張っていた。周りを見ると高等部、中等部、初等部の最高学年が必死にプリントを解いている。
人をよけながら御子柴さんの所に着く。
「できたか?」
持ってきたプリントを渡した瞬間、僕は人に押されて転ける。と同時に誰かが支えてくれた。
「あ、すいません、、、って伊藤」
「何?こけないように気をつけなよってもう遅いか。またコケないでよ」
「わかった」
伊藤は人混みに消えていった。ぶっきらぼうに言ってるけど、その中に優しさがあるのを僕は知ってる。
「大丈夫か?深山」
「ああ、はい」
「人混み苦手だろ?離れた場所で待ってな」
僕はうなづいてその場を離れた。
「勉強する気が無いやつは帰れ。邪魔だ!勉強する気があるんだったら静かにしろ」
御子柴さんはカッコイイから女子に人気だ。
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勉強会は連日大盛況だった。勉強会はお知らせの紙が配られてからテストが始まる前日まで行われて、二日目以降は手の空いた他の先生達も手伝って賑やかになっていた。御子柴さんは勉強会に来た生徒たちを一人5分程度の時間で教えたりアドバイスをしたりしてから僕のところに来て教えてくれた。
最初「コツを掴めば簡単」と言っていたけど、僕はそのコツを掴むことができなかった。しかし、今はそのコツを僅かだが掴むことが出来るようになったと思う。
そのおかげでテスト用紙の空欄は全くと言っていいほど無くなった。1教科にひとつぐらい空欄はあるけど、、、
「ーー終わったぁ〜」
テスト最終日の今日、最後の情報のテストが終わって皆が安心していた。
帰りのHRでは先生がほかのクラスには内緒でお菓子をくれた。皆が頑張ったご褒美だと仰った。
HRが終わりそうな時、校内放送が流れた。




