強くなりたい
(これ、かなり危ないやつ、です)
ナショナルハウンドは突然動き出し、ツバサや穴を掘っていたバウンティハウンドに攻撃をしてきた。攻撃といってもまだ暴れる(殴る)だけだが、魔法を使って攻撃してきたら危ない。だが、暴れるにしてもこの洞窟で理性をなくした大型モンスターが暴れることにより下手したら崩れる危険性がある。
ツバサは末っ子の力を借りて崩れそうな箇所をいくつか固定した。ただ、溶接をイメージしたために鉄よりも脆い岩肌は火力で逆に崩れる心配があった。
ドゴッ、バコッ、ベキッ。
「クッ…………」
暴れているナショナルハウンドの身体がツバサに当たってしまった。ツバサの身体から嫌な音がして体力ケージが三分の一減った。動こうとしても動けない。ツバサは前に感じた違和感を思い出した。
「アブナイ!」
ドゴッと先程までツバサがいた場所に凹みができた。それはナショナルハウンドの拳が当たったことによる凹みだった。ツバサが避けることができたのは末っ子のおかげだ。
「あ、ありがとう……」
「ドウシタノ?」
自力で起き上がろうと力を入れるが入らない。それにより…………。
「動けない、です」
プログラム上、大技を出した時の反動でしばらく動けなくなることがあるが今回は大技をだしていない。
(こないだのは勘違いじゃない。やっぱりどこか違う、です……)
「……ツカマッテ」
末っ子にしがみつく形で掴まったが力が弱くすぐにでも落ちそうだ。だが、末っ子の腕が体を支えてきたために落ちずに済んだ。
末っ子はツバサが背中に居ることを確認すると静止も聞かずにその場から逃げた。
「待て! 止まれって! ハウンド助けなきゃ!」
唯一動く口で末っ子を止めようと頑張ったツバサはやがて遠ざかるハウンドたちを見て申し訳ない気持ちと自分の弱さにいらだちを感じた。
----もっと、強くなりたい。
◆◇◆
末っ子は洞窟を出口に向かって走った。ゲーム上のモンスターとしてこのセカイに造り出されたシステムでもこの状況がおかしな事だということは理解していた。何も言わないけれど、ツバサがこのセカイを創ったということも知っている。母親が教えてくれたのと、住処である古の島を修理してくれた。ただのプレイヤーはゲーム開始時点で古の島に来ることができないから。母親を虐めていた『タケ』と『健ちゃん』はシステムの不具合で入ってしまったらしい。
(なんかイマ、イラッとした)
洞窟内に外からの光が届きはじめた。
「わっ!」
外から入ってきた団体と衝突しそうになった。
「あれ? 末っ子くん」
団体のなかから出てきたのはシムだった。武装をしている。
「ツバサをタスケテ!」
シムと末っ子たちは広いところに行こうと洞窟を出た。
「100m先に広いところがある」
広いところを探していたらしいイチがシムの隣に現れた。
「イチちゃん。びっくりしたよ」
「ツバサくん…………」
イチはツバサの手を握った。そしてその手を額に当てから離しその場を去った。
「顔合わせづらいんだね」
「気にしなくていいのになあ」
「あんたみたいに単純にできてないのよ」




