洞窟へ
ツバサに言われて用意されたというこの荷物やメンバーたちには共通点がなさそうに見えた。
「イチちゃん、だったかしら?」
「はい。えーと……二一さん」
「『にー』、じゃなくて『にいち』って読むの。片仮名表記にしようと思ったら間違えて漢字表記になったのよ」
「にいち、漢字表記も片仮名表記もそこまで変わんねえよ」
「イチちゃんは真面目なのよ、馬鹿なぐらと違ってね」
「にいちも変わんねえだろ! そして略すな! ぐらまんだ!」
にいちとぐらまんのやりとりを見ていたイチは思わず笑ってしまった。
「仲がいいんですね。羨ましいです」
----まあ、幼馴染みだしね。そう言ったにいちは嬉しそうに笑っていた。
◆◇◆
ベッドの上ではボコボコに殴られた【奪う者】が転がっていた。
「酷いよ、みんな逃げるなんて……」
「いやぁ、トバチリ受けたくなかったし」
「な。……それにしてもブルーマウンテン零されたぐらい……で……」
後ろに気配を感じまたボコ殴りにされることを警戒した。
「安心しろ、俺だ」
「なんだ……【視る者】か」
「びっくりした……。あいつだったらまたボコ殴りの刑だからな」
「そういえば、あの人の二つ名知らないや」
「俺もだよ」
ブルーマウンテンがお気に入りなあいつの二つ名を誰も知らなかった。
少しの沈黙が部屋を包んだ後、【壊す者】がわざと明るい声で話題を変えた。
「そう言えば今は猫の姿じゃないんだね」
「んー。驚いたからな」
「毛が逆立つとかそんなノリか?」
「んー、似たような感じだね」
「なに、猫の方がいいの?」
「そうだね、可愛げあるし、男臭いから癒しがないんだよ、癒しが」
「……冷静に考えてみろよ。猫になれる男が男に愛でられる行為を」
「キモっ」
いつにも無く落ち着いた声で【奪う者】が言った。
「キモいとか言うなよ、傷付くだろ!」
「おまけにいつもと違う声で言うから傷が深くなるよ」
「つかお前、泉岳寺? の所に行かなくていいのか? 遊びに行くとか言ってたろ」
「あー! そうだった! 行ってくるよ!」
スキップしながら出ていく【奪う者】を見てよほど泉岳寺という刑事が好きなんだと思った。
◆◇◆
シムは指定された場所に着いた。ここまで来るのに何回荷車が落ちかけたことか、と思うと疲労感が増した。
「大丈夫ですか?」
隣にいた巫女の春雨が全員の回復をしてくれてる。回復術を使えるのは春雨以外にいるが、精神的疲労に対する回復は巫女の役目だ。しかし、実際には精神的疲労に対する回復術を使うことはないとされているために習得者は少ない。
「ありがとう」
五分ほど休憩してから洞窟内にいるであろうツバサのところへ行こうと考えた。が、ドゴンだかドカンだかとにかく大きな音が洞窟の奥の方から聞こえたので、シムたちは休憩を取らずに洞窟に入ることにした。
先頭は魔導士の召喚術で出した提灯マンボウや光る金魚たち、そのすぐ後ろに近接戦や不意打ちに強いプレイヤー、最後尾にも不意打ちに強いプレイヤーを配置した。回復系やノンプレイヤーのシムや荷物は真ん中という良く使われる配置だ。
「さあ行こう」




