徐々に
人目を避けるように建てられた廃ビルの一室に人が5人いる。
1人はソファに座り、1人は壁に寄りかかり、1人は台所に立ち、1人はベットで転がって、1人は…………。
「ん? なんだ。 随分機嫌がいいな」
「そう?」
「お気に入りの刑事が帰国したんだとさ」
台所にいた1人がソファに座りブルーマウンテンを飲む。
「さっすが! よく分かってるぅ♪」
「珈琲を零すだろ」
「仕事はどうした」
「あー。 あれね。 今回のは簡単そうだよ?」
飴玉を袋から取り出し鼻歌を歌いながらそれを口に入れ喋る。
「ってかさ、あのゲーム奪うなら【奪う者】がアカウント作る意味なくない?」
「バッカだなぁ。 僕は内側から奪っていくんだ。 だからアカウントを作る」
「お前は【壊す者】だからな。 どうせウイルスでも作っているんだろう?」
「うん♪ ところで依頼者は何者なの? 僕らに二つ名? を与えて」
「知らねぇ。でも依頼者はこのゲーム作った深山翼よりこいつが通ってる? 三戸学園自体に怨みを持ってるっぽいな」
「それは違う。依頼者は学園長に怨みを持っていると考えた方がいい」
「【視る者】がそういうなら……」
「ってか、なんで猫の姿してんの」
「……クセだ」
「【奪う者】、お気に入りの刑事と遊んできな」
「マジで? いいの? やったァ!」
【奪う者】は嬉しくてベットの上で飛び跳ねてついお代わりされたばかりのブルーマウンテンを零した。
「ゴメン……」
「私の……ブルーマウンテンが…………」
このあと1分もしないうちに【奪う者】が説教をくらうことをその場にいた全員が理解してこのままいるとトバチリを受けることも知っていたので静かに退散した。
◆◇◆
「マスター、正体不明のアカウントがあります」
自室に戻った瞬間、AIのツバキから報告を受けた。 翼はすぐにそのアカウントを確認した。
「これは……」
正体不明のアカウントとツバキが言ったのはプログラムのひとつだ。 しかし、このプログラムは翼の知らないものだった。 すぐに直保と時任に連絡しこのプログラムの解析を始めた。
このプログラムはうちのプロジェクトチームで解析します。と時任はプログラムを相手に気付かれないようにUSBに移動させ会社に戻っていった。
「マスター、あのプログラム複雑です」
ツバキは悔しそうな感じで翼に言った。ツバキは段々人間により近いAIになっている。そう思い翼は嬉しくなった。死んだ妹の身代わりなのだから……。
「そっか、引き続き頼むよ」
翼はイスに座りVRを起動させた。
「行ってくる。……Link START」
ベータ版という文字が抜けた『welcome』の文字が当たり前になったのはいつからだろう、そんなことを思いながら翼は迷いなく自分のキャラをタッチした。




