キャラバン
ツバサはE.Eの地に降り立った。サラマンダーは上空を飛んでいる。ここ、East End(E.E)は上級モンスターが多く、プレイヤーを即座死亡できる程の力を持っているモンスターもいる。そんなE.Eだからこそレアアイテムが販売されている。
「モンスターいる?」
「大丈夫、です」
降り立った時からツバサは《探求》て周囲の人影やモンスターの影残らず拾っている。漁船についているレーダーの役割を魚相手ではなくプレイヤー、モンスターを見つける。
「さて何処、です」
ツバサは地図を取り出し『knot』を目指した。『knot』はE.Eを移動するキャラバンだ。主にオアシスで物販販売する。だから地図でオアシスの場所を探し、そこを目指す。
「オアシスみつけた!」
末っ子が元気にポケットの中から叫ぶ。この時点でモンスターが出てもおかしくないが、モンスター達にもルールがあり、オアシス周辺には近寄らない。特に『knot』が来てるときは。
ツバサはそのオアシスに『knot』の影を確認すると駆け出した。
オアシスはほんのり青い。木々も緑ではなく青緑といった感じだ。
『knot』はオアシスの中心に店をだしていた。その『knot』を囲むように鎧を着たプレイヤーが5人(消費者だろう)、警護に当たっている。消費者はベータ版になるとNPCからの警護依頼も受ける。
「いらっしゃい!」
いかにも元気なお兄さんNPCがツバサに声をかける。頭にタオルを巻いて白いTシャツで紺色のエプロンをしているお兄さんはシムと書いてあるネームプレートを胸元に付けている。
「配線テープない、です?」
「あー……配線テープは今材料がなくてさ。すまないが」
「何が足りない、です?」
「いにしえの龍の尾、魔法びん、芯」
かなっ、とシムが言う。
いにしえの龍の尾はベータ版ではまだ手に入れることができない。それはシステム上のバクがよく起こるWest End(W.E)にいるこのゲーム上最強のモンスター、バウンティングハウンドの巣がある山脈最下層にいるナショナルハウンドの尾だからだ。ナショナルハウンドは超大型モンスターだが大型モンスターのバウンティングハウンドより弱い。しかし、2体とも上級モンスターの区分なので余裕など持てない。
「ここに来る前にね、配線テープが必要になるって話してたから『Indra』なら売ってるんじゃないかな」
『Indra』、『knot』と同じキャラバンなんだが、比較的安価に売ってくれる『knot』とは違い、『Indra』は値段が高い。交渉できるか否かにかかっている。
「『Indra』はどこらへんにいる、です?」
「分からないな……ごめんな」
シムは顔の前で手を合わせ謝った。
お詫びにシムからシフォンケーキと傷薬を貰った。両方とも回復薬だ。シフォンケーキは体力回復の効果もある。
シムと別れた後、上空を飛んでいるサラマンダーを呼びキャラバン『Indra』探しを始める。S.Eの上空を飛んでいるとイチを見つけ、サラマンダーから降りてイチに声をかけようとしたが、怒らせていることを思い出した。
(結果、喫茶店行けなかったな……どうやって声かけよう……)
「あ、ツバサくん!ホントありがとう、ごめんね」
「え……何を?」
「やだな、キャラメルラテ結果20杯奢ってもらっちゃったじゃない。お金とかほんとに大丈夫?」
ツバサは困惑した。今までずっと古の島の修理の関係でイチとの待ち合わせ場所に行けなかった。それなのに…………。
「え、ああ、うん。大丈夫、です」
「どうしたの?今日、やっぱりおかしいよ。ログアウトして寝たら?」
「大丈夫だから。それで、『Indra』見なかった? キャラバンなんだけど」
「見てないかな」
「そっか、ありがとう。……今日はごめん」
イチと別れた後サラマンダーのところに戻りまた上空からキャラバン『Indra』を探し始めた。
----僕の偽者がいるってこと、かな。
イチが他の人をツバサだと思うわけがない。そしたら必然的にツバサが2人いることになるわけだが……。
「わからないなぁ…… 問題が新しく出てきたらベータ版が終わらない気がするよ……」
ベータ版といってもW.Eのバク問題を解決すれば発売されるところまできているのだ。それなのに同じプレイヤーが2人表れる問題まで発生してしまえばどうしようもない。




