サラマンダー
イチはもう5杯もキャラメルラテを飲んでいる。
----遅い。いつになったら来るんだろう。
Phoneを使ってツバサに連絡を試みるが繋がらない。 なにか事件に巻き込まれているのかと思ってしまう。もう一度連絡してみた。
----なるほど、ね。
ツバサは5階へと上がる階段前に幼いサラマンダーが傷だらけで横たわっていた。そして、その5階からはこの子の親と思われるサラマンダーの叫び声が聞こえる。人外の声を聞く《聴》と人外語を話す《話》を使い、幼いサラマンダーとのコンタクトを試みた。
「そんな傷だらけでどうした、です?」
「……ウエのカイでオソワレテ、ママがニガシテクレタ。そのとき、カイダンからオッコチタ……ママ!」
「ママを助けたいです、か」
「ウン」
「じゃあ、まずは怪我の治療、です」
ツバサは《治》と《道具》を使ってサラマンダーの治療をしていく。
「……イタイ」
「我慢しろ、です」
「……終わった、です」
「アリガトウ! ママをタスケにイク」
「心配だからついて行く、です」
サラマンダーは喜んだ。
ツバサはサラマンダーを服のポケットに入れた。まだ襲った奴がいるかもしれないからだ。
「頭だけなら出していい、です」
サラマンダーは頭を出して周りを見る。
階段を上ると、奥の方でギャァッという悲鳴のようなものが聞こえた。
「ママ!」
「お母さんの声、です?」
「ウン、ママのコエ」
サラマンダーは母親の苦しそうな悲鳴を聞くのが嫌でポケットの中に頭を引っ込めた。ポケットがわずかに震える。
----中で震えてるんだ……。
左手を剣の鞘にあて、いつでも戦闘できるようにする。
「ケギャキャギャ!弱ぇなこのサラマンダー!」
「……健ちゃん、もういいでしょ……」
「あ゛?」
「ヒッ…… なんでも、ない……」
「それよりタケ、お前もやれよ」
「え…… やだよ」
「あ゛?んだって!?」
----ここで、勇気出すんだ!
「やだって言ったんだよ! ……もうやめようよ!」
「ハア? 何行ってんだよ。ここまできてやめるとか無いだろ!」
ツバサはサラマンダーの母親を痛め付ける輩が2人と分かると『足早』を使いサラマンダーの目の前に出る。
「んあ゛? 誰だてめぇ」
「お母さんを助けてって頼まれたです、からね。助けます、よ」
ツバサの目が細く光る。 剣をいつでも抜ける体勢にして相手の出方をみる。
健太は剣を抜くと同時におおきく振りかぶった。 ツバサは振り下ろされる剣を自分の剣を使い、流してみぞおちに柄の部分をいれる。 健太はその場に倒れた。
「すごい……」
ツバサはコタケを一瞬見てから、サラマンダーの介抱を始める。
「サワルナ ニンゲン」
かなり警戒している。警戒心を解くためポケットにいる子どもに出てきてもらい、子どもと同じように治療をしていく。
「コドモをタスケテくれてレイをイウ」
「大したことじゃない、です。それより、10階にいるはずの貴方がなぜここに?」
「β版だからだ。5階にいてチカラもハンブンでだ」
「そうです、ね。……終わりました」
「ナンダ、もうオワリか。ハヤイな、オマエ」
「ツバサ、です。頭悪そうなフリやめた方がいいです、よ」
「フッ、ばれていたか」
「……設定したの僕です、から」
「…………それなら、電波塔が壊れたんだ。直してけ」
「電波塔は15階です、か」
「うちの子を貸す。早いぞ」
「はあ……」
サラマンダーの言った「うちの子」は6階か7階の階段付近で寝ているらしい。末っ子に協力をあおぎ兄さん探しをする。
末っ子はポケットが気に入ったのかそこでヌクヌクしていた。
ツバサは7階上り階段を封鎖しているモンスターを見て呆気にとられる。
「……あの寝てるのそう?」
「ウン!」
魔法欄を見ても寝ているサラマンダーを起こすような魔法はない。副作用で大きな音が出るものならあるが、修復作業中の古の島で使いたくない。 どうしようか迷っているとPhoneが鳴った。




