千春ーイチ
ベットに横たわってからVRを装着し静かに目を閉じる。それからプレイヤーの合図を筆頭にしてあの場所へ意識が飛ぶ。蒼い空、風に揺れる草木、そしてその空や地面を自由に行き交うプレイヤーとモンスター達。それらを思い出し千春の鼓動は高まっていた。
落ち着くように深呼吸を数回行い、合図を出す。「Link START」と。
画面に『welcome(ベータ版)』と表示される。翼に教わった通り、キャラ名イチを読み込む。イチの身長は実際より10センチほど高い。
待ち合わせ場所にツバサは居なかった。第2ルームにあるカフェ『harmony』。現実でもカフェになっている場所だ。イチはテーブル席に座り、キャラメルラテを注文した。
ツバサは古の島と名付けられた塔の2階にいた。1階は何もなく、ただ迷路になっている。2階から戦闘が始まるのだが……ゴブリン達が騒がしい。
「どうした、です?」
(つい、話しかけてしまった)
しかし、ゴブリンの中心にいたとんがり帽子を被ったゴブリンが答えた。
「ココ、コワレタ。シュウリ、シテル」
(とんがり帽子を被ったゴブリン集団をいくつか作って建物修理に回したんだった)
「そっか、頑張るです、よ」
「ウン。ガンバル。ナマエ、ナニ?」
「ツバサ、です」
「ツバサ。マタ、アオウ」
ゴブリン達に手を振り、ツバサは上の階を目指した。
「マッテ、ツバサ」
階段に足をかけた瞬間にさっきのゴブリンが呼び止める。
「5カイ、サワガシイ。キヲツケテ。コレ、チュウコク」
「分かった。ありがとう、です」
ゴブリンが見守る中、ツバサは階段を上った。




