★友達思いの親友
次の日の朝。
鏡の前に立っているのは、
いつもと何も変わっていない自分の姿だった。
メガネをかけて、おさげ髪にして、
スカートの丈も膝くらい。
指定のカバンを持ち、私は鏡に向かって、
ニコッと、笑顔を作った。
・・・キモい。
自分でやったくせに、
思わずそう思ってしまった。
・・・あ。
気を取り直して、学校に向かおうとした私の目に、
昨日買ってもらったコンタクトが飛び込んできた。
凄く迷ったが、
やっぱり、コンタクトをつけて、
学校に行く勇気はない。
メガネは、私にとって必須アイテムのような物。
自分に仮面をつけてる、そんな感じ。
うん、私はやっぱりメガネがいい。
そう思いながら、私は学校に向かった。
…学校に着くなり、
あかりが私の所に、もう突進してきて、
私は思わず後ずさり。
「お、おはよう、どうしたの?」
「どうしたの?・・・じゃない!
何で昨日、私の事ほったらかしで帰っちゃうの?」
凄いけんまくで言われ、謝る事しかできなかった。
「ゴメン、あかり、あのね?」
「…で?なんで玲が、
詩織の事連れて帰ったの?
私より、玲の方がよかったんだね?」
「いや、それは違うって・・・
あれは無理やり・・・」
アタフタしながら、昨日の出来事を、
あかりに説明する。
最初は黙って聞いていたあかりだったけど、
なんだか、顔がどんどん怒り始め、
話しが終わるころには、
私の手を引き、玲の目の前に・・・
「・・・どうした、あかり?」
不思議そうな顔であかりを見上げる玲。
「どうしたじゃないわよ?!
今度私に無断で詩織の事連れて帰ったら、
承知しないからね?
それから、詩織を泣かせるような事したら、
アンタを屋上から突き落としてやる!」
…コワッ。
あかりの言葉を聞いていた周りの生徒たちは、
驚いた眼差しをあかりに向けていた。
実際にはそんなことできないとわかっていても、
聞いた人は驚くよね、普通・・・
ちょっと引いたけど、
私の事を心配してくれてるんだと思う。
接点がなかった相手だけに、
イケメンのモテ男の玲だから、
私が傷つかないように、
言ってくれたんだよね。
「…あかり、心配してくれて、ありがとう」
そう言ってニコッと笑うと、
心なしかあかりの頬は、赤く染まっていた。
「…友達じゃない。
あんな男に、詩織を傷つけてほしくないし」
そう言ったあかりは、
私に目線を合わすことなく、
携帯をいじり始めた。
・・・そんなあかりが、なんだかすごく、
可愛く見えた。
あかりが友達で良かった。
心からそう思えた。