★玲のレッスンその一
連れてこられたのは、一軒の服屋さん。
しかも女の子向けのお店で、
何でこんなところに連れてこられたのか、
正直分からなかった。
「こんなところに何の用?」
私の質問に、玲はニヤッと笑った。
…イケメンのニヤリ顔って不気味。
そう思った私は、つられて笑った顔は引きつっていた。
「まずはその容姿を何とかしろ」
「・・・はい?」
容姿はどうにもなりませんが?
そう突っ込みたい衝動を何とか抑え、
玲を見つめる。
私の手を掴んだまま、店の中へと入っていく。
呆然とする私をよそに、
玲は何着かの服を選ぶと、
私に押し付けてきた。
「何?」
「さっさと着替えてこい」
「何で私が?」
「四の五の言うな!」
「・・・」
玲の剣幕に根負けした私は、渋々、試着室の中へ。
…着替えを済ませた私は、
恐る恐る試着室のカーテンを開けた。
「…75点」
「・・・はい?」
私を見て勝手に点数をつけた玲は突然、
私の目の前にやってきた。
「…なんなのよ?」
「うっせえ、黙ってろ」
「・・・」
やっぱり呆然とする私。
それがとんでもない悲鳴を上げた。
「ギャッ!何するの?なんも見えないじゃん」
「…よし、98点。ま、こんなもんか」
勝手におさげは取るし、
メガネまで外されて、私は大慌てをした。
メガネをかけていないと、
10センチ離れただけで、何も見えなくなるほどの
近眼なのだ。
おかげで・・
「ワッ!!」
…こけそうになり、
でも玲がそれをしっかり助けてくれた。
「明日からコンタクトで来い」
「持ってないよ、そんなモノ」
「…今から買いに行くんだよ」
「え、え~?!」
そう言った玲は、私の手を引いて歩き出した。
「ちょ、ちょっと、会計してない」
「・・・あ?済ませてある」
「・・・」
何時の間に・・・
「買ってもらう義務はない」
「いちいちうるせえ奴だな」
「だって」
「オレが勝手にやってんだから、
お前は何も気にすんな」
…無理言うなっての!
…とは言ったものの、
コンタクト代まで払ってもらい、
買い物は終了した。
「アンタは私をどうしたいの?」
「・・・あ?」
「聞いてんだから、応えなさいよ」
「…オレ好みの女」
・・・聞いた私がバカでした。
「お、玲じゃん・・・そのかわいい子、誰?」
そんな私たちに声をかけてきたのは、
玲の…友達。
「ん?・・・ああ、オレの彼女」
抜け抜けとぬかしやがったよ、コイツ。
「誰がいつ?!」
反論しようとしたら、口に手を当てられた。
「コイツ見てどう思う?」
玲が突然、友達に質問した。
「エ?こんな子うちの学校いた?
どう見ても100点つけれるくらい可愛いじゃん。
…で、誰?」
友達はキラキラした眼差しを、玲に向けた。
「…同じクラスの詩織」
玲の言葉に、友達は固まった。
「・・・じ、地味子ちゃん?」
その言葉に笑った玲は、
友達をほったらかし、その場を後にした。
「走り出しは上出来」
そう呟いた玲の言葉に、私は顔をしかめるしかなかった。