プロローグ2(視点:七海)
佐藤七海は都内の学校に通う女子高生だ。特に目立つ生徒でもなく、トラブルの少ない普通の学生だと周囲から思われている。
気の知れた友人達からは、”無鉄砲”とか”単細胞”とか言われていたけれど。
”家庭の色が濃くて色気がないから――”
何時間か遡るが、中学の頃から付き合っていた彼から別れを告げられた。七海の家は母が早くに他界し、父は仕事をしてるので、必然的に家の用事は七海の担当になった。そのせいで、家事は得意と言うより板に付いていた。部活動も家庭科部で、流行りものにも疎いしあまり興味がない。「家庭的だが、色気はない」と言う表現は遠からず当たってるのかもしれない。
だが可愛い物には弱いし、美味しいものを食べるのは大好きだ。流行に捕らわれないカジュアルな服をウィンドウショッピングするのも好きだしそれほど女子高生として終わってるとは七海は思わない。
(家の用事は各家の事情でしょ。私しかする奴いないし、しょうがないじゃないっ。大体、色気って何それっ!)
最っ低……!思い出してると、一度は鎮めたはずのムカムカがこみ上げてきた。そんな相手にすでに愛情はなく、悔しさを胸に詰まらせる。
(バカヤロー!)
別れたばかりのそいつを、心の中で罵った。夕闇の空、仄暗い小道を心なし足早に歩く。夕飯の材料を特売スーパーで購入した帰り道。夕食は七海の好きなメニューでやけ食いするつもりだった―――
・・・
随分深く眠っていたのだろう。頭が重くまだ霧がかかっている。ぼんやりと意識が戻って来ると……私は薄暗闇の部屋の中、寝台に横たわっていた。