プロローグ1(視点:七海)
整備されてるとは言えない街道を行く相乗り馬車。途中石が当たったのか、ガタッと体を揺らした。
出入り口から外を覗くと、日が高く昇り遠くの景色まで見渡せた。地平線まで真っ直ぐに伸びていて、街道を挟む様に緑が広がっている。肌に当たる風は暖かい。生地の薄いワンピースを来ているが、丁度良い気候だった。どこかで鳥が鳴く声が聞こえ、空は澄み渡っていた。だが、これからこの世界で暮らしていくのに、完全には整理の着かない頭に”雲”があった。
ここまでかなりの距離があったが、それという障害もなく来れた。長い馬車での生活だったが、明日には目的地に着くだろう。走る馬車は王都へ向かっていた。
・・・
この世界に来たのは幾日か前。
気づいた時には、私はこの世界の少女になっていた。
異世界。
いくら聞いても、どこだか分からない場所。
(私が成績悪いからって、地球上に無いのは分かる。)
今居るのは、ヴァルリア国。
魔術もあれば、モンスターも出没する。
服装から見て、中世ヨーロッパに近いように思えた。
(城もあるし。海外には行ったことないけど。)
ふと私の頭に、少女の声が響いた。
『外へ出るのは久しぶりですが、今は緑が綺麗ですね。』
そうだね、と相槌を打つ。
若干天然ノリな彼女とは、こちらに来てからの付き合いだ。
なにせ今の自分の体、本来の所有者なのだから――