新しい夢へ
それからの日々、幸子の生活は少しずつ変わっていった。
仕事から帰ると、夕食を済ませて部屋にこもる。
パソコンを開いて、リュカの物語の続きを書く。
それが、いつしか日課になっていた。
文章はまだ拙い。
構成も、表現も、完璧とは言えない。
でも、書くことが楽しかった。
リュカが動いてくれる。
話してくれる。
彼女の世界が、少しずつ広がっていくのがわかる。
読者からのコメントも、少しずつ増えてきた。
「リュカの成長が楽しみです」
「この世界観、もっと知りたい」
そんな言葉が、幸子の背中を押してくれる。
ある日、ふと気づいた。
「最近、絵を描いてないな……」
そう思って、久しぶりにスケッチブックを開いた。
ペンを持つ手は、少しだけ震えたけれど、怖くはなかった。
リュカの顔を描いてみる。
前よりも、少しだけ自然に描けた気がした。
「言葉で描いたから、絵でも描けるようになったのかな」
そんなことを思いながら、微笑んだ。
創作は、もう「夢」じゃなかった。
誰かに認められるためでも、プロになるためでもない。
ただ、自分の中にある世界を、外に出すための手段。
それが、幸子にとっての「新しい夢」だった。
リュカの物語は、まだ終わっていない。
彼女の旅は続いている。
そして、幸子自身の旅もまた、始まったばかりだった。
最後まで読んでくださって、ありがとうございました。
この物語は、私自身が創作に向き合う中で感じたこと、悩んだこと、そして救われた瞬間を重ねながら書いたものです。
「描けない」「書けない」「伝えられない」――そんな気持ちは、創作をする人なら誰もが一度は抱えるものだと思います。
でも、ほんの少しの勇気と、誰かの言葉があれば、また一歩踏み出せる。
幸子の物語が、そんな小さな一歩のきっかけになれたなら、これ以上の喜びはありません。
そして、あなたの中にも、まだ生きているキャラクターや物語があるのなら――どうか、いつかその子たちを外の世界に出してあげてください。
彼らは、きっと待っています。