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体が初めての試練を受ける

私は今、人生で初めての試練に立たされている。


これまで空手の練習で打たれたことは何度もあった。

打たれ強くなるための軽打、当てるだけの訓練。


でも今、私が受けているのは――違う。


腹を傷つけることを目的に、

本気で叩き潰すための打撃。


私の腹が、破壊されるための拳。


**


「っ――!」


二発目の拳が私の腹に叩き込まれた。


「がっ……あ……あぁっ……!」


口から息が漏れるというより、肺が押し潰されて吐き出された。


苦しい。

痛い。


「は……あ……う……!」


息ができない。

視界が揺れる。


「いっ……いたい、いた……ッ!」


声に出してしまった。

痛い、痛い、痛い。


蒼真くんの拳が怖い。


だけど逃げられない。

逃げないって決めたから。


**


「まだだ」


蒼真くんが低く言う。


私の腹に刻まれる痛みは、

報復が進むにつれて、加速度的に増大していく。


最初の一発目とは比べ物にならない。

同じ場所を狙われて、痛みが蓄積していく。


「は、あ……っ、やだ……!」


泣きそうになる。

泣きたくなる。


でも泣いたら終わりだから。


**


三発目が来る。


「ぐっ……! あっ……! あああっ……!」


床に膝をつきかける。


お腹が、焼けるように痛い。

壊れる。

絶対に壊れる。


「や……やだ……いたい……やだ……」


口が勝手に漏らす。

嫌だ、嫌だ、嫌だ。


でも。


**


「もう、一本、入れるぞ」


蒼真くんの声が遠くで聞こえる。


怖い。


「……っ、いや……いやだ……」


泣きそうになる。


だけど――


「……き、て……いい……」


私はそう言った。


**


蒼真くんの拳が振り下ろされる。


「ッ――!」


「がぁっ……あ、ああっ……!!」


体が跳ねる。


もう息ができない。

痛い、痛い、痛い、痛い――


「いや、いやだ……いたい……やだ……」


泣き声が漏れる。


それでも。


「っ、は……くるし……い……」


肺が潰れそう。

胃がねじ切れそう。

全部壊れそう。


**


でも私は。


「や、……まだ……こないで……」


「……来るぞ」


「……き、て……」


**


痛いのに。


怖いのに。


「……いい、よ……蒼真くん……」


声が震える。


私が奪った痛みを返すためだから。

蒼真くんが怒りから解放されるなら、痛くていい。


**


「ぐ、あっ……あ、あ、あぁ……ッ!」


四発目が入った瞬間、視界が白く弾けた。


吐き気が込み上げる。


「やだ、やだ、やだ……いたい……いたい……いたい……!!」


涙が出る。

止められない。


**


でも――


私は逃げない。


**


「お前、まだ立てるな」


蒼真くんの声が聞こえた。


「う……あ……た……立つ……」


足が震えて、膝が笑っているのに、

私は床を押して立ち上がった。


「……来い……まだ……受ける……」


涙でぐしゃぐしゃの顔で、

それでも笑った。


痛くて、苦しくて、怖くて、泣きたくて。


でも、これが私の罰だから。


どれだけ痛くても――

私は逃げない。


**



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