たまに会う彼との会話が、私にとって唯一の心やりだった。
たまに会う彼との会話が私にとって心やりだった。
“彼氏でもない友達でもない彼との会話。”
私がたまに行く公園で、彼と初めて出会う。
彼は同じベンチでいつも難しそうな本を1人読んでいた。
私はたまたま、何がキッカケで話をしたのかもう忘れてしまったのだけど?
彼の隣に座り、彼と会話をした。
それがなんだか物凄く楽しくて、私は彼に会いにその公園に行っても
いつも居る訳ではなかった。
3回に一回、会えるかどうか?
それでも私は彼に会いたくて、その公園に行く事をやめなかった。
たまに会えると? 彼も物凄く私と会えた事に喜んでくれた!
『久しぶりだね!』
『うん!』
『元気にしてた?』
『私は元気だけど、キミは元気だった?』
『・・・僕は、まあ、元気かな!』
『今日、また会えて良かった!』
『僕もキミに会いたかったよ!』
『本当?』
『うん、キミと話をしていると時だけは時間を忘れてた!』
『私も、君と話をしている時が一番楽しい!』
『そう言ってもらえると僕も嬉しいよ。』
『何回かここに来たんだけど? 君が居なかったから直ぐに家に
帰った事もあったな。』
『えぇ!? 僕に会いにここまで来てくれたの?』
『・・・ううん、迷惑だったかな?』
『そんな事ないよ、凄く嬉しい!』
『良かった、そう思ってくれてたなら私も良かった!』
『“今日は僕に会いに来てくれたの?』
『・・・まあ、そうかな。』
『ありがとう!』
『うん。』
彼と会うといつも他愛もない会話で盛り上がる!
どうでもいい会話だから、彼と一緒に居て楽しいのかもしれない!
でも? 彼ともっと会えたらいいなとか? 好きな人や彼女が居るのだとか?
なかなか彼に聞けない。
もっと彼の事を知りたいのに、何一つ私は彼に聞けなかった。
きっと彼も同じ気持ちだったんじゃないかと思う。
当たり障りない会話だからこそ! 私は彼と一緒に居れるのかなと、、、。
彼も私に聞かれたら困る話もあるはずだし!
私も彼の嫌がる事は聞きたくなかった。
・・・“でも? 何故、彼とはたまにしかこの公園で会えないのか?”
*
・・・数ヶ月後。
何度、あの公園に行っても彼ともう会えなくなった。
私は彼に会いたくて仕方なかったが、彼に彼女でもデキたのだと
諦めるしかなかった。
“私なんかじゃダメなんだ! 彼には相応しくない!”
でも? それから数日後。
若い女性が、あの公園で私に話しかけてきた!
『・・・あの、ここで誰か待ってますか?』
『えぇ!?』
『“例えば? 若い男性とか?”』
『あぁ、はい!』
『やっぱり、お兄ちゃんが貴女の事を話してくれていたので一度!
わたしも貴女に会ってみたくてここに来ました。』
『・・・彼の妹さん?』
『はい。』
『彼は今、元気なんですか?』
『“貴女がよければ、今からお兄ちゃんに会いに行きますか?』
『えぇ!? いいんですか?』
『勿論、わたしに着いてきてください。』
『はい。』
私は彼の妹さんと言う彼女に着いて行った。
久しぶりに私は、彼に会いたい為だけに私は彼女に着いていく。
でも? 彼女が私を連れてきた場所は、、、?
【病院】だった。
なんとなく私は分かっていたのだけど、、、?
彼が生きている事だけで嬉しかった。
彼の妹さんが連れて来た部屋の前で彼の名前を初めて知る。
『坂上 優太、』
『お兄ちゃんの名前、知らなかったんですか?』
『・・・あぁ、はい、お互い名前で呼び合った事はないので。』
『お兄ちゃんらしいな、お兄ちゃんから貴女のあだ名聞いてたんですよ。』
『えぇ!? 私のあだ名? お兄さんは私をなんて呼んでたんですか?』
『ヒカリ、ヒカリさんです。』
『・・・ヒカリ? 何故、ヒカリだったのかな?』
『お兄ちゃんから見た貴女は? ヒカリのように眩しい人だったらしい
んですよ、だからヒカリさんって貴女の事をお兄ちゃん呼んでたんだと
思います。』
『私なんかそんな風に呼んでもらえる人間じゃないですよ。』
『貴女で良かった! さあ、お兄ちゃんに会ってあげてください!』
『はい。』
彼の居る部屋に入ると、、、?
彼はいろんな管を体中に取り付けられてベットの上で寝ていた。
妹さんから話を聞けば? もうほとんど意識がないらしい。
誰からの声も彼には届いていないらしく、殆ど彼に話しかけても
受け答えする事がないと言う。
『お願い! お兄ちゃんに貴女が話しかけてみて?』
『そうね、分かった! 君はここで何をしてるの、、、?
またあの公園で話がしたいな?』
・・・私がそういうと彼は微かに目が開く。
そして、擦れた小さな声で私に彼がこう言った!
『・・・ひ、久しぶり、』
『うん!』
『げ、元気だった?』
『うん!』
『僕に会いに来てくれたんだ?』
『そうだよ、君に私は会いに来たの! だから元気になってまたあの公園で
話をもっとしたいな!』
『・・・うん。』
『君に会えて良かったよ。』
『僕もだよ。』
彼はそういうと? また目を瞑り眠ってしまった。
私はまた彼に会えるモノだと思い、この日は家に帰る。
*
・・・次の日。
彼の妹さんから私に連絡が入る。
彼はあの後、、、静かに息を引き取ったという話だった。
“昨日、彼と最後に会う事ができた日だったとこの時知る。”
私は、もう彼とは会えないと思うと、、、?
自然に涙が出てきた。
彼は私の彼氏でも友達でもないのだけど、、、?
“私にとって特別だった男性だった事は間違いない!”
また彼に会えるんじゃないかと? 私はたまにあの公園のベンチに座る。
彼の笑う顔が私は好きだった。
他愛ない会話を彼としながら笑い合う事が懐かしいと想える日は来る
のだろうか。
最後まで読んでいただいてありがとうございます。